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参参参(十六)いかなる自足か

2023年04月14日 | 読書
 「花よりも読む本ありて来い図書館」(字あまり、しかもパクリ)とFBに書き込んで、品のなさに呆れつつ、最近の読了本アップ。


『運転者』(喜多川泰 ディスカバー)

 著者の本を一度は読んだことがあるはずと検索したら、案の定軽かった(笑)。この著は自己啓発的なドラマのようなイメージだった。後半がくどく感じたのは、言いたいことが見えているので、念押しされている印象を持ったからか。「運転」という語を乗り物や機械の操作ではなく、字の構成から「運を転じる」と解釈させたのは、なかなかの知恵者だ(笑)。「運は、いいか悪いかで表現するものじゃないんですよ。<使う><貯める>で表現するものなんです」を処世訓として捉えたとき、自らの生活をどう切り替えていけるか。結局は方向が利己であるか、利他であるか…に収斂され、行動を規定する。





『もたない、すてない、ためこまない。身の丈生活』
(アズマカナコ  主婦の友インフォス情報社)


 著者の家には通常の家にある道具、機器などが極端に少ない。例えばエアコン、掃除機、電子レンジさらに冷蔵庫、洗濯機…専用の洗剤もない、つまり固形石鹸ひとつで汚れを落とすという。夫と二人の子がいる、ごく普通の家庭なのだがやはりそれは「普通」とは違う。東京の市街地に生まれ育った40代女性は、何か特殊な環境に育ったわけではなく、周りの生活をよく見て自然保護や環境問題について関心を高めていきながら、今の暮らしにたどり着いた。第一章「背のびしない身の丈生活」を信条とする。身の丈を知るという比喩は、多くの場合、お金の使い方と同義になるが、そこにばかり目がいき、自分の好きなことや特性を生かし切れていない現代人の病状の深刻さを想う。



『漫画 方丈記』(鴨長明 ・漫画 信吉 文響社)

 いかに古典オンチでも馴染んでいる一節が多い文章だ。改めて漫画で表現されても、あまり迫ってはこないなあと前半は感じた。ということは「日本最古の災害文学」と謳っている災害部分の描写が少し陳腐に思えたからだ。しかし後半部、長明の執筆時点での心境を描く段になると、それなりの味はあった。庵の暮らしを語る場面は分かりやすい。「夫、三界は只心一つなり。」…心の持ちように尽きるということを、解説の養老孟司はこう書く。「ものを持たないからいいのではない。ものがなくとも、本人が自足しているからいいのである」曰く「自足の思想」。これは上掲書とかなり通じていて、重ねあわせれば「いかなる自足を善しとして生きるか」と問われている。


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