日銀が24年度物価見通しの上方修正を議論へ、好調な賃上げで-関係者
伊藤純夫、藤岡徹2024年4月9日 18:27 JST
- 1月時点のコアCPI予想は2.4%上昇、26年度見通しは2%程度に
- 今年の賃上げは当初想定上回る、円安や原油高もコアCPI押し上げ
日本銀行が25、26日に開く金融政策決定会合では、好調な今年の賃上げなどを受け、2024年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しの上方修正を議論する公算が大きい。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、今年の春闘をはじめとした賃上げの動向について、日銀は当初の想定を上回る好調な内容とみている。企業が人件費の一定程度を販売価格に転嫁する動きも強まると見込んでおり、24年度のコアCPI見通しを従来の前年比2.4%上昇から引き上げることを検討する可能性が高い。26年度は2%程度が見込まれるという。
会合では、四半期ごとに公表している経済・物価情勢の展望(展望リポート)を議論し、26年度を加えた最新の見通しを示す。前回1月の同リポート公表時と比べて円安や原油高が進んでいることもコアCPIの押し上げ要因になり得る。関係者によると、こうした市場動向や経済・物価情勢を直前まで見極めた上で、各政策委員が見通しを最終的に決めるという。
日銀は3月会合で「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至った」として17年ぶりの利上げを決めた。市場の関心は今後の追加利上げの時期とペースに移っており、新たな展望リポートはそれを占う手掛かり材料の一つとなる。
関係者によれば、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは24年度が従来の1.9%上昇から2%以上に引き上げとなる公算が大きい。見通しを引き上げる一方で、先行き不確実性が大きい状況の中、26年度にかけて物価2%程度が持続するシナリオには下振れリスクを意識する必要があるという。
ブルームバーグが3月会合直後に実施した調査では、エコノミストの約6割が10月までに次回の利上げが行われると予想。タイミングは最多の10月が26%で、次いで7月が23%だった。
連合が4日発表した今春闘の第3回回答集計結果の平均賃上げ率は5.24%と33年ぶりの高水準を維持している。今後の焦点となる中小企業については、日銀が4日に開いた支店長会議において、人手不足感が強い中で労働力確保のために賃上げを計画しているとの声が幅広い先から聞かれた。
一方で、日銀は物価目標を達成したとの判断には至っていない。利上げを決めた3月会合では、現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」と明記した。
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