2050年医療の未来予測「病気で簡単に死ぬことはなくなる」と専門家が語る驚きの理由
5/11(土) 7:10配信
介護ポストセブン
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2050年、医療の世界も大きく変わると予測されている
「安楽死」が世界中で話題になったのが2002年、それからおよそ四半世紀。私たちが生きる社会は大きく変化し、女性をとりまく環境にもうねりがあった。では、次の節目である2050年の頃、次世代を生きる子供や孫たちは何を考え、どんなふうに生きているのか。医療や寿命はどんな変化遂げているのだろうか――専門家に意見を聞いた。
【画像】2050年の未来予想図「予防医療が進み、寿命が見える化」未来の医療の進化のイメージ写真
教えてくれた人
奥真也さん/医師。『未来の医療年表』の著者、早野元詞さん/慶応義塾大学医学部特任講師であり、老化研究の第一人者
2050年、医療の世界は大きく変わる
「2050年には、医療は“完成期”に入ります。人間が病気で簡単に死ぬことはなくなるでしょう」
驚くべき未来を語るのは、『未来の医療年表』の著者で、医師の奥真也さん。日進月歩の医療の力によって近い将来、現在の日本において2人に1人が罹患し、死因のトップであるがんの撲滅が期待できると話す。
「この四半世紀で遺伝子の解析技術が飛躍的に進化し、がんを引き起こす特定の遺伝子を攻撃する画期的な薬である『分子標的薬』が登場しました。
さらにがん細胞による免疫機能の弱体化を防ぐ『免疫チェックポイント阻害剤』も発展を続けています。これら2つの薬によって2035年にはほとんどのがんが治癒可能になり、がんは“死なない病気”になると考えられます」(奥さん)
四半世紀後を待たずして克服が可能になる病気はがんだけに留まらない。2018年時点の国民健康・栄養調査で、予備群を含めると約2000万人の患者がいた糖尿病も解決が可能になると奥さんは続ける。
「現在の医療では糖尿病の治療は対症療法に留まり、一度罹患すると一生つきあう必要がある。しかし糖尿病もがんと同じく、特定の遺伝子が発病に関与することが解明されつつあり、遺伝子解析の進行とともに特効薬の開発が進んでいます。2040年頃には糖尿病を根本的に解決できる可能性があります」
予防医療が普及していく
あらゆる病気の治療法が確立され診療現場へのAI導入も予測されているが、そののちに到来する2050年には、病気そのものをブロックする「予防医療」が普及していくことが予測される。
「治療法の開発と同時に、『どんな条件下で病気を発症するか』を明確に見通すための研究も急ピッチで進んでいます。その結果次第で人々の行動は大きく変わることが予測されます。
例えばたばこがあらゆる病気のリスクファクターだとわかってから喫煙者があっという間に減少したように、近い将来、アルコールや砂糖などの嗜好品の弊害が明らかになり、消費する人が激減する可能性は大いにあります。
高級ホテルのバーで提供されるカクテルや、ラウンジでコーヒーと一緒に提供されるクッキーも『一流ホテルが体に毒になるものを出すなんてけしからん』と批判される時代が来るかもしれません」
指輪型端末「スマートリング」の進化
未来に思いをはせ、熱く語る奥さんの指にきらめく「スマートリング」と呼ばれる指輪型の端末も、大きな進化とともに医療へのコミットが予測される。
「現状では静脈や手の動きなどを計測して心身の疲労度や睡眠、運動量と休息のバランスなど自分の健康状態を知るために使用されていますが、予防医学が発展し、特定の病気に罹患しやすい人の傾向などビッグデータが集まれば、スマートリングで得られる個人の生体データとビッグデータを組み合わせ、オーダーメード式の予防医療が可能になります。
例えば“20代で体重がこれだけ増えたら40代で高血圧になる”などと具体的にわかるようになるのです。現状はビッグデータの収集段階ですが、あと10年もすれば個別化された予防医療が浸透し、ますます人間は病気から遠ざかっていくでしょう」(奥さん)
「寿命」の見える化が進む
スマートリングのような端末やセンサーが普及すると、寿命の“見える化”が進み、健康長寿のために今日やるべきことをAIが教えてくれる──。
そんな未来予想図を語るのは、慶応義塾大学医学部特任講師であり、老化研究の第一人者である早野元詞さん。
「将来的には家の中のあらゆる場所にセンサーが設置され、起床時の動作や眼球の動き、唾液の量などから日常的にさまざまなデータが収集できるようになるはずです。集まったデータにスマートリングで得た生体データやビッグデータなどを加えると、老化の進行状態が可視化される。
その結果、AIが『あなたの寿命はあと20年4か月です。今日10km走ると寿命が20年6か月まで延びます』などと教えてくれるようになるでしょう」
テクノロジーの恩恵を受けながら、老化予防や治療に力を注ぐことが予見され、健康寿命や最大寿命の「延び」は維持されるだろうと早野さんは続ける。
「明治期に40代だった日本人の平均寿命は120年後の現在、ほぼ2倍である80代に達しています。残念ながら2050年の段階ではまだ人口全体での平均寿命はいまとほとんど変わらないと思います。
しかし、若い世代を含め最先端技術と組み合わせて老化を予防、治療していく一定の層から健康寿命が延びていくことは推測できます。最先端の医療や技術にアンテナを張って正しく使用していくことで、元気な100才は珍しくなくなり、現状における史上最高齢である122才を突破する人が出てくるかもしれません」
文/池田道大 取材/小山内麗香、戸田梨恵、平田淳、伏見友里、三好洋輝
※女性セブン2024年5月9・16日号
未来に思いをはせ、熱く語る奥さんの指にきらめく「スマートリング」と呼ばれる指輪型の端末も、大きな進化とともに医療へのコミットが予測される。
「現状では静脈や手の動きなどを計測して心身の疲労度や睡眠、運動量と休息のバランスなど自分の健康状態を知るために使用されていますが、予防医学が発展し、特定の病気に罹患しやすい人の傾向などビッグデータが集まれば、スマートリングで得られる個人の生体データとビッグデータを組み合わせ、オーダーメード式の予防医療が可能になります。
例えば“20代で体重がこれだけ増えたら40代で高血圧になる”などと具体的にわかるようになるのです。現状はビッグデータの収集段階ですが、あと10年もすれば個別化された予防医療が浸透し、ますます人間は病気から遠ざかっていくでしょう」(奥さん)
「寿命」の見える化が進む
スマートリングのような端末やセンサーが普及すると、寿命の“見える化”が進み、健康長寿のために今日やるべきことをAIが教えてくれる──。
そんな未来予想図を語るのは、慶応義塾大学医学部特任講師であり、老化研究の第一人者である早野元詞さん。
「将来的には家の中のあらゆる場所にセンサーが設置され、起床時の動作や眼球の動き、唾液の量などから日常的にさまざまなデータが収集できるようになるはずです。集まったデータにスマートリングで得た生体データやビッグデータなどを加えると、老化の進行状態が可視化される。
その結果、AIが『あなたの寿命はあと20年4か月です。今日10km走ると寿命が20年6か月まで延びます』などと教えてくれるようになるでしょう」
テクノロジーの恩恵を受けながら、老化予防や治療に力を注ぐことが予見され、健康寿命や最大寿命の「延び」は維持されるだろうと早野さんは続ける。
「明治期に40代だった日本人の平均寿命は120年後の現在、ほぼ2倍である80代に達しています。残念ながら2050年の段階ではまだ人口全体での平均寿命はいまとほとんど変わらないと思います。
しかし、若い世代を含め最先端技術と組み合わせて老化を予防、治療していく一定の層から健康寿命が延びていくことは推測できます。最先端の医療や技術にアンテナを張って正しく使用していくことで、元気な100才は珍しくなくなり、現状における史上最高齢である122才を突破する人が出てくるかもしれません」
文/池田道大 取材/小山内麗香、戸田梨恵、平田淳、伏見友里、三好洋輝
※女性セブン2024年5月9・16日号