日本株買い、再開うかがう海外勢 急落の金と対照的
豊島逸夫の金のつぶやき
2024年4月23日 11:39
一般論として中東地政学リスクは、市場を動かす材料として、陳腐化が早い。中東混迷の状況は長く続きがちなので、いつまでも、そこにこだわっていては、何もポジションをとれないからだ。既に、リスク回避マネーが集中していた金市場では、ニューヨーク金が中東有事発生時から1トロイオンス100ドル近く急落中だ。潮目の変化を想起させる事例である。
米株式市場に関しては、既に、中東リスク解明の動きが暫時棚上げされ、市場の関心は今週相次いで発表される「決算」に移っている。
同時に、国際分散運用の動きも再び顕在化して、日本株買いが粛々と再開される流れになっている。日銀金融政策決定会合への関心度も強く、「ニューヨークの深夜でも構わないから、なにかあったら電話でたたき起こしてくれ」など、仲間ゆえのぶしつけなリクエストが舞い込む。日本株は今や数少ない明るい材料だ。「bright spot(明るい点)」とまで言われると、やや持ち上げ過ぎの感さえ漂う。期待先行も目立つが、中東有事でも、日本株人気は変わらなかった。「日本人が日本株に最も悲観的」と言われると、肯定せざるを得ないが、新NISA(少額投資非課税制度)を通じた新たな日本人マネーの株式市場流入は強調した。「日本人投資家との共闘なら勇気づけられる展開になる」との期待感が伝わってくる。
一方、外為市場では、「利上げの可能性が非常に高い」とのワシントンでの日銀の植田和男総裁発言について様々な議論があったが、結局、米連邦準備理事会(FRB)に比し、利上げ規模は極めて限定的と解釈されている。投機筋のドル買越残高が4年10カ月ぶりの高水準との状況についても、「円安では随分もうけさせてもらった。いったん、今のドル買いを巻き戻しても、しかるべき水準から、新たなドル買いポジションを建てるだけのこと」と平然としている。米ドル高の金利水準を高く長くとのFRBの錦の御旗がお墨付き同然になっているわけだ。好調な米経済指標や、安全資産としての米国債が売られる可能性を考慮して、ドル長期金利5%説が台頭しているのだ。
日経平均は4~6月期に4万円回復、円相場は155円突破を視野にニューヨーク市場は動いている。
【関連記事】
- ・有事の金、投機筋の「噂で買ってニュースで売る」に注意
- ・「日経平均3万8000円割れはバーゲン」NY市場の視点
豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・X(旧ツイッター)@jefftoshima
・YouTube豊島逸夫チャンネル
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com