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「ブラックスワン指数」という不安

2019-12-18 01:54:44 | 日記
「黒い白鳥」に警戒感、トランプ砲に身構える市場
証券部 大西康平
2019/12/17 16:03日本経済新聞 電子版

米中部分合意に市場で安堵が広がるなか、高値警戒感もにわかに強まってきた。めったに起こらないが起きると大変な事態の予兆を示す「ブラックスワン指数」が1年3カ月ぶりの高水準にあり、相場下落に備えたデリバティブ(金融派生商品)取引も活発化。2020年の米大統領選をにらみ、トランプ政権が再び強硬姿勢に転じるリスクを投資家は意識している。



年初来高値を更新した17日の日経平均株価。だが、ある外資系証券のトレーダーは「中長期視点の海外投資家は、利益確定の売り越しに転じつつある」と浮かない表情だ。「先行きへの強い確信を持った買いは入っていない」という。

下落懸念が拭えない投資家は、保険をかけながら株高に半身の姿勢で対応していることがわかる。コール(買う権利)に対するプット(売る権利)の需要の強さから算出する米スキュー指数は、16日には143.85と18年9月以来の水準に高まっている。

スキュー指数は、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)が米S&P500指数のオプションについて算出。100が平常、100を超えれば徐々に投資家が急落への備えを固めているのを意味し、ブラックスワン(黒い白鳥)指数とも呼ばれる。確率は低いが起きると相場に甚大な影響を及ぼす「テールリスク」への警戒度合いを示すとされる。米中合意をよそにここにきて急上昇している。

国内でもプットの建玉(未決済残高)をコールの建玉で割った「プット・コール・レシオ(PCR)」が2倍近くで高止まりを続ける。投資家の下振れ懸念の強さをうかがわせる。

では投資家は何をテールリスクとして恐れているのか。ピクテ投信投資顧問の松元浩常務執行役員は「米中合意は一時的な休戦にすぎないとの見方は根強い」と指摘する。トランプ大統領は今年5月や8月など、株高となれば、対中交渉での強硬姿勢を打ち出し結果的に相場を冷やす展開を演じてきた。この"トランプ砲"が投資家のトラウマとなっている。



UBSウェルス・マネジメントの青木大樹・日本地域最高投資責任者(CIO)は「20年初めはトランプ大統領が株安をいとわず、強硬姿勢に転じる時間的な余裕がある」とみる。UBSの1960年以降の分析によると、米大統領選の2四半期前の米S&P500指数の高低と現職の再選成否が強く関係するとの結果が出た。その時期は今回は20年4~6月期にあたる。

20年1月には米上院でトランプ氏の弾劾裁判が開かれる見通し。「市場の関心をそらすため、第1段階の合意をほごにして中国に強く出る可能性がある」(青木氏)。仮に調整局面となっても、再選のカギを握る4~6月期までにはまだ余裕があるとの論法だ。

また自由貿易を重視するバイデン前副大統領が民主党の候補となった場合、中国側がトランプ大統領の再選を阻もうと、20年4~6月にあえて米中交渉を行き詰まらせて株安に導くシナリオもあり得るという。

こうしたシナリオの数々は取り越し苦労に終わるのか。世界景気や企業業績の回復期待を先行して織り込む株高だが、まだ半身の投資家も少なくないことは知っておいた方がよさそうだ。

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