ソフトバンクG、ビジョンFの資産売却進める-AIや半導体にシフト
Min Jeong Lee
2024年5月10日 11:57 JST
米上場株ポートフォリオは290億ドル近く縮小
孫正義氏の熱意、VC投資から半導体やAIへの戦略的投資に移る
Masayoshi Son, chairman and chief executive officer of SoftBank Group Corp., speaks during a news conference in Tokyo, Japan, on Wednesday, Feb. 12, 2020. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
ソフトバンクグループのビジョン・ファンドは数十億ドル相当の保有上場株式について、ここ数年でひそかに売却または減損処理を行ってきた。創業者の孫正義氏がかつて熱中していたベンチャーキャピタル取引から、半導体や人工知能(AI)への戦略的投資にシフトしていることを示している。
世界最大のスタートアップ投資ファンドであるビジョン・ファンドは21年末以降、クーパンやドアダッシュ、グラブ・ホールディングスなどの株式売却を進めた。株価下落も影響し、米上場株のポートフォリオは290億ドル(約4兆5100億円)近く縮小した。当局への提出書類から明らかになった。
この数字には、ビジョン・ファンドが保有していた英半導体設計会社アーム・ホールディングスの株式をソフトバンクGに昨年売却した分は含まれていない。ハイテク分野のキングメーカーだったビジョン・ファンドも、従業員を100人余り解雇し、新規投資を過去のペースから大幅に減速させるなど、かつての面影はない。
The Vision Fund Shrinks
SoftBank's venture capital arm has sold or written down many of its largest US-registered public holdings since end-2021
Source: US Securities and Exchange Commission filings
Note: Data is based on an analysis of 13F-HR filings made by three SoftBank entities: SoftBank Group Corp., SB Investment Advisers (UK) Ltd. and SB Global Advisers. These filings represent approximately 50% of Vision Fund's public market investments. Data as of Dec. 2023, except for Coupang (Mar. 2024) and Compass (Jan. 2024). Share total for 2024 does not include WeWork.
孫氏は、AIや関連ハードウエア分野への進出の可能性に備え、同ファンドのポートフォリオから資産を売却していると、同氏の考えに詳しい関係者は語った。ソフトバンクGのエクイティーキャピタルマーケットチームは、市場の混乱を最小限に抑えながらビジョン・ファンドの保有株式を現金化するプロセスで中心的な役割を担ってきたと、同関係者は説明した。情報が公になっていないことを理由に匿名を条件に語った。
孫氏が主導する投資の多くは現在、ビジョン・ファンドを迂回(うかい)し、持ち株会社であるソフトバンクGが指揮を執っている。孫氏は以前、2-3年ごとに新しいビジョン・ファンドを立ち上げる可能性を示唆していたが、3つ目のビジョン・ファンド、ましてや4つ目を設立する可能性はもはやないと、同関係者は語った。
ビジョン・ファンドの残りのスタッフは現在、主に管理の役割を果たしている。エクイティーキャピタルマーケットチームが資産売却のタイミングを見計らうことに貢献しており、株式流通市場でのブロック取引を通じて行うこともある。同チームは投資利益を確保し損失を反転させることに注力している。
アームの成功に触発されたこともあり、孫氏の熱意は新たな分野に向かっている。昨年の上場以来、アームの時価総額は約1060億ドルに膨らみ、ソフトバンクGの持ち分90%の価値はソフトバンクG全体よりも大きくなっている。
孫氏が計画している可能性のあるプロジェクトの一つは、エヌビディアに対抗し、AIサービスの開発に必要な半導体を供給する1000億ドル規模の半導体ベンチャーを立ち上げることだ。関係者によると、この計画はまだ流動的だという。
孫氏がAI半導体ベンチャー設立目指す、1000億ドル規模-関係者
ソフトバンクGの資産売却に関する開示は、米証券取引委員会(SEC)に提出されたフォーム13Fに基づくもので、ビジョン・ファンドが保有する米上場企業株式のみが対象。評価額ベースで、同ファンドのポートフォリオの上場企業の約半分に相当する。同ファンドは、インドのスタートアップ企業ペイティーエム(Paytm)と中国の商湯集団(センスタイム)の株式も徐々に売却しており、ソフトバンクGが保有する両社の株式はいずれも5%未満となっている。
ソフトバンクG全体の時価純資産に対し、ビジョン・ファンドによる寄与分は昨年12月末時点で7兆3000億円。21年末時点では約9兆5000億円だった。アームの寄与分は昨年末時点で6兆1000億円。
ソフトバンクGの担当者はコメントを控えた。
ソフトバンクG、3年連続の通期赤字も四半期は改善-注目は次の一手
原題:SoftBank Sells Off Vision Fund Assets as Son Pivots to AI, Chips(抜粋)
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