植田日銀は平均「77・9点」 総裁就任から1年、主要エコノミストアンケート
2024/04/07 17:18
(産経新聞)
日本銀行の植田和男総裁が9日で就任から1年を迎えるのを前に、産経新聞は金融政策に詳しい主要エコノミスト20人にアンケートを行った。この間の日銀の金融政策全般の運営に関する評価は100点満点で平均「77・9点」だった。3月の金融政策決定会合で、マイナス金利政策解除など約17年ぶりの利上げで金融政策正常化に踏み出し、黒田東彦前総裁が主導した大規模緩和から転換を果たした植田氏への高評価が浮き彫りになった。
手腕はおおむね高評価
20人のうち80点以上をつけたのが14人、70点台が3人と植田氏の手腕を評価する回答が目立った。最低は40点で2人。1人は点数については回答しなかった。
高評価の理由では、サプライズを好んだ黒田氏と異なり、市場との緊密なコミュニケーションをとりながら政策修正を行う植田氏の姿勢を評価する声が目立った。
「80点」をつけたソニーフィナンシャルグループの菅野雅明氏は「先行きの経済政策に関し、サプライズを起こすことなく、事前に市場に織り込ませるよう努力しているようにみえる」と指摘する。
みずほ証券の小林俊介氏は「90点」をつけ、「理論とデータに基づいて慎重に議論を重ねつつも、政策判断は大胆で思い切りが良い」と評価した。
賃上げ頼みに懸念も
一方、「40点」と低く評価した2人からは厳しい声が寄せられた。
クレディ・アグリコル証券の会田卓司氏はマイナス金利解除の時期が「早い」と指摘。日銀が「内需の弱さによる景気の悪化やデフレへの再転落のリスク」を軽視していると問題視。「春闘の賃上げの一本足打法による日銀の金融政策の変更は拙速だ」と批判した。
逆にマイナス金利解除が「遅い」としたピクテ・ジャパンの市川真一氏は「長期にわたり名目政策金利がゼロ、もしくはマイナスだったことで、不採算企業・設備が温存され、むしろデフレを助長したと考えられる」と分析した。植田氏の新体制下でも大胆な政策変更が期待できない点を挙げ、評価を下げた。
アンケートは3月29日〜4月5日に行った。(宇野貴文)
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回答したエコノミスト(敬称略)
SMBC日興証券 牧野潤一▽クレディ・アグリコル証券 会田卓司▽ソニーフィナンシャルグループ 菅野雅明▽SOMPOインスティチュート・プラス 亀田制作▽第一生命経済研究所 熊野英生▽大和証券 岩下真理▽東短リサーチ 加藤出▽ニッセイ基礎研究所 上野剛志▽野村証券 森田京平▽野村総合研究所 木内登英▽バークレイズ証券 馬場直彦▽ピクテ・ジャパン 市川真一▽みずほ証券 小林俊介▽みずほリサーチ&テクノロジーズ 門間一夫▽三井住友信託銀行 大和香織▽三井住友DSアセットマネジメント 吉川雅幸▽三菱UFJモルガン・スタンレー証券 六車治美▽明治安田総合研究所 小玉祐一▽UBS証券 足立正道▽りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一