コニカミノルタ・オムロン・資生堂…にわかに広がる大型リストラのなぜ
2024/04/09 06:30M&A Online
上場企業の間で、早期(希望)退職の募集などを通じた大規模な人員削減の動きがにわかに広がっている。今年に入り、コニカミノルタの約2400人を筆頭に、オムロン、資生堂が1000人を超える削減計画を発表した。昨年は大正製薬ホールディングス(HD、4月9日に上場廃止)の645人が最多だったが、ここへて状況が一変した形だ。
コニカミノルタ、グローバルで人員最適化
コニカミノルタは4月4日、2025年3月末までに国内外のグループ全体で2400人規模(正規・非正規従業員)の人員を削減すると発表した。グループ従業員の約6%にあたる。複合機などオフィス向け事務機器市場がペーパレス化やデジタル化の進展で縮小に向かう中、海外を含めた人員の最適化を目指す。
同社は2023年3月期に過去最大の1031億円に上る最終赤字に陥った。2017年に約900億円で買収した米国の遺伝子診断薬企業アンブリー・ジェネティクスなどの業績が振るわず、合計1100億円を超える減損損失の計上に迫られた。
一連のリストラ効果などで足元の2024年3月期の最終利益は40億円と5期ぶりに黒字転換を見込む。今回の大がかりな人員削減で2026年3月期は約200億円の利益の押し上げ効果があるという。
国内にとどまらず、海外を含めたグローバルで人員配置の見直しを打ち出したのはコニカミノルタだけではない。
オムロンも国内外で2000人
オムロンは国内外で合計約2000人を削減する。中国経済の成長鈍化やサプライチェーン(供給網)の混乱などで、FA(ファクトリーオートメーション)関連の制御機器事業を取り巻く環境が想定以上に悪化したとして抜本的な収益基盤の再構築に取り組む。
国内では希望退職者を募り、1000人程度を減らす。グループの勤続3年以上で40歳以上の正社員・シニア社員が対象で、募集期間は4月10日〜5月31日。オムロンが希望退職を実施するのは約1400人を募った2002年以来22年ぶり。
同社は2024年3月期業績について売上高7.5%減の8100億円、営業利益76%減の240億円、最終利益98%減の15億円と、大幅な減収減益を見込む。
ソニーグループは2月末、ゲーム事業子会社のソニー・インタラクティブエンターテインメント(SIE)で総人員のおよそ8%にあたる約900人を削減する計画を発表した。SIEは米国サンフランシスコにグローバル本社とし、東京、ロンドンに機軸拠点を置く。家庭用ゲーム機「プレイステーション」で知られるゲーム事業は今やソニーグループの屋台骨を担うが、世界的な競争激化などで採算性が低下している。
住友ファーマは3月中に、医薬品製造の米国子会社「スミトモ・ファーマ・アメリカ」(SMPA、マサチューセッツ州)で約400人の人員合理化を実施した。SMPAは2009年に約2500億円で買収したセプラコープが前身。
住友ファーマは主力の抗精神症薬「ラツーダ」の米国での特許切れなどに伴い、2024年3月期の最終赤字が1410億円(前期は745億円の赤字)に膨らむ見通しで、北米事業の立て直しが急務になっている。
セガサミーホールディングスは3月末、ゲームソフト開発を手がける欧州の複数拠点で約240人の削減を発表した。コロナ禍の巣ごもり需要からの反動減などによる収益悪化を受け、開発体制を見直す。欧州では昨年来、開発中タイトルの一部中止に伴い、すでに約250人を削減している。
資生堂、日本事業で1500人を削減
一方、国内だけで約1500人の早期退職に踏み切るのは資生堂だ。コロナ禍で落ち込んだ化粧品事業の再構築の一環。日本事業を統括する子会社の資生堂ジャパンに所属する45歳以上で勤続20年以上の社員を対象に、4月17日から5月8日まで募集する。該当する従業員は約1万3300人(契約社員などを含む、2023年12月末)で、募集人数は1割強に上る。
主力の女性用下着の国内販売が低迷しているワコールホールディングスは中核子会社のワコールで2年連続で希望退職者の募集に踏み切った。今年2月に150人程度募ったところ、想定を4割以上上回る215人の応募があった。実は、約250人を募った前回(昨年1月)は155人の応募にとどまっていたが、様変わりの結果となった。
ワコールHDは2023年3月期に会社設立以来初の最終赤字(17億7600万円)に転落。24年3月期は100億円超まで最終赤字幅が広がる見通しだ。
「100人超」が7社の前年と様変わり
2023年はワコールHDを含めて、100人以上の人員削減を発表した上場企業は7社あった。大正製薬HDの645人を最多とし、中外製薬374人、塩野義製薬301人、パンチ工業205人などが続いた。これに対し、今年は第一コーナーを終えたばかりの序盤戦ながら、削減規模の大型化が際立つ。
多くの日本企業がコロナ前を上回る業績の回復ぶりを示し、株価も34年ぶりに史上最高値を更新するなど、足元の日本経済は総じて明るいムードに包まれる中、“出遅れ組”の巻き返しが注目される。
◎2024年1月以降に人員削減を発表した主な上場企業(HDはホールディングスの略)
発表 社名 募集人数など
4月 コニカミノルタ 国内外で約2400人
3月 住友ファーマ 米国子会社で約400人
〃 セガサミーHD 欧州拠点で約240人
〃 フェイス 約40人(4月中旬〜6月に募集)
〃 スカラ 約50人(6月末に退職)
2月 オムロン 国内外で約2000人
〃 資生堂 日本事業で約1500人
〃 ソニーグループ ゲーム事業子会社で約900人
〃 ワコールHD 約150人(2月に募集)→215人応募
〃 ダイドーリミテッド 中国子会社で約120人
〃 ACSL 約40人(2月に募集)→24人応募
1月 東北新社 20〜30人(1月に募集)→11人応募
文:M&A Online
2024/04/09 06:30M&A Online
上場企業の間で、早期(希望)退職の募集などを通じた大規模な人員削減の動きがにわかに広がっている。今年に入り、コニカミノルタの約2400人を筆頭に、オムロン、資生堂が1000人を超える削減計画を発表した。昨年は大正製薬ホールディングス(HD、4月9日に上場廃止)の645人が最多だったが、ここへて状況が一変した形だ。
コニカミノルタ、グローバルで人員最適化
コニカミノルタは4月4日、2025年3月末までに国内外のグループ全体で2400人規模(正規・非正規従業員)の人員を削減すると発表した。グループ従業員の約6%にあたる。複合機などオフィス向け事務機器市場がペーパレス化やデジタル化の進展で縮小に向かう中、海外を含めた人員の最適化を目指す。
同社は2023年3月期に過去最大の1031億円に上る最終赤字に陥った。2017年に約900億円で買収した米国の遺伝子診断薬企業アンブリー・ジェネティクスなどの業績が振るわず、合計1100億円を超える減損損失の計上に迫られた。
一連のリストラ効果などで足元の2024年3月期の最終利益は40億円と5期ぶりに黒字転換を見込む。今回の大がかりな人員削減で2026年3月期は約200億円の利益の押し上げ効果があるという。
国内にとどまらず、海外を含めたグローバルで人員配置の見直しを打ち出したのはコニカミノルタだけではない。
オムロンも国内外で2000人
オムロンは国内外で合計約2000人を削減する。中国経済の成長鈍化やサプライチェーン(供給網)の混乱などで、FA(ファクトリーオートメーション)関連の制御機器事業を取り巻く環境が想定以上に悪化したとして抜本的な収益基盤の再構築に取り組む。
国内では希望退職者を募り、1000人程度を減らす。グループの勤続3年以上で40歳以上の正社員・シニア社員が対象で、募集期間は4月10日〜5月31日。オムロンが希望退職を実施するのは約1400人を募った2002年以来22年ぶり。
同社は2024年3月期業績について売上高7.5%減の8100億円、営業利益76%減の240億円、最終利益98%減の15億円と、大幅な減収減益を見込む。
ソニーグループは2月末、ゲーム事業子会社のソニー・インタラクティブエンターテインメント(SIE)で総人員のおよそ8%にあたる約900人を削減する計画を発表した。SIEは米国サンフランシスコにグローバル本社とし、東京、ロンドンに機軸拠点を置く。家庭用ゲーム機「プレイステーション」で知られるゲーム事業は今やソニーグループの屋台骨を担うが、世界的な競争激化などで採算性が低下している。
住友ファーマは3月中に、医薬品製造の米国子会社「スミトモ・ファーマ・アメリカ」(SMPA、マサチューセッツ州)で約400人の人員合理化を実施した。SMPAは2009年に約2500億円で買収したセプラコープが前身。
住友ファーマは主力の抗精神症薬「ラツーダ」の米国での特許切れなどに伴い、2024年3月期の最終赤字が1410億円(前期は745億円の赤字)に膨らむ見通しで、北米事業の立て直しが急務になっている。
セガサミーホールディングスは3月末、ゲームソフト開発を手がける欧州の複数拠点で約240人の削減を発表した。コロナ禍の巣ごもり需要からの反動減などによる収益悪化を受け、開発体制を見直す。欧州では昨年来、開発中タイトルの一部中止に伴い、すでに約250人を削減している。
資生堂、日本事業で1500人を削減
一方、国内だけで約1500人の早期退職に踏み切るのは資生堂だ。コロナ禍で落ち込んだ化粧品事業の再構築の一環。日本事業を統括する子会社の資生堂ジャパンに所属する45歳以上で勤続20年以上の社員を対象に、4月17日から5月8日まで募集する。該当する従業員は約1万3300人(契約社員などを含む、2023年12月末)で、募集人数は1割強に上る。
主力の女性用下着の国内販売が低迷しているワコールホールディングスは中核子会社のワコールで2年連続で希望退職者の募集に踏み切った。今年2月に150人程度募ったところ、想定を4割以上上回る215人の応募があった。実は、約250人を募った前回(昨年1月)は155人の応募にとどまっていたが、様変わりの結果となった。
ワコールHDは2023年3月期に会社設立以来初の最終赤字(17億7600万円)に転落。24年3月期は100億円超まで最終赤字幅が広がる見通しだ。
「100人超」が7社の前年と様変わり
2023年はワコールHDを含めて、100人以上の人員削減を発表した上場企業は7社あった。大正製薬HDの645人を最多とし、中外製薬374人、塩野義製薬301人、パンチ工業205人などが続いた。これに対し、今年は第一コーナーを終えたばかりの序盤戦ながら、削減規模の大型化が際立つ。
多くの日本企業がコロナ前を上回る業績の回復ぶりを示し、株価も34年ぶりに史上最高値を更新するなど、足元の日本経済は総じて明るいムードに包まれる中、“出遅れ組”の巻き返しが注目される。
◎2024年1月以降に人員削減を発表した主な上場企業(HDはホールディングスの略)
発表 社名 募集人数など
4月 コニカミノルタ 国内外で約2400人
3月 住友ファーマ 米国子会社で約400人
〃 セガサミーHD 欧州拠点で約240人
〃 フェイス 約40人(4月中旬〜6月に募集)
〃 スカラ 約50人(6月末に退職)
2月 オムロン 国内外で約2000人
〃 資生堂 日本事業で約1500人
〃 ソニーグループ ゲーム事業子会社で約900人
〃 ワコールHD 約150人(2月に募集)→215人応募
〃 ダイドーリミテッド 中国子会社で約120人
〃 ACSL 約40人(2月に募集)→24人応募
1月 東北新社 20〜30人(1月に募集)→11人応募
文:M&A Online