財政と金融、蜜月の代償 膨らむ借金が政策縛る
円安再考㊥
経済
2022年4月17日 0:00
海外の投資家による円売りが、円相場の下落に拍車をかけている。日銀が金利を抑える円は、足元で独歩安の状況にある。米通貨先物市場では投機筋による円の対ドル売越額が、この1カ月で2倍近い1.4兆円に膨らんだ。ある外資系金融機関の幹部はつぶやく。「政策から見て確実に円安になるのだから、うまみが大きい」
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政府・日銀の関係は長年、円高阻止が焦点だった。2003~04年には財務省の溝口善兵衛財務官と日銀の福井俊彦総裁が巨額の円売り介入と資金供給の拡大で協調した。その後は円高とデフレの責任が日銀に押しつけられ、海外勢は当局の苦境を突く円買いで攻めるのが常だった。
13年に日銀総裁となった黒田東彦氏は異次元の金融緩和で「アベノミクス」を支え、政府・日銀は「蜜月」となった。だが円高を止めるのではなく、円安を止めるとなると、金融緩和を続ける中では協調が難しい。
「大規模緩和を進めた結果なのだから、理解されにくいだろう」。鈴木俊一財務相が「悪い円安」と言っても、為替介入を巡る財務省幹部の歯切れは悪い。円安は金融緩和の産物で、円買い介入でも長期の効果は見込めない。中間選挙を控えインフレを警戒する米政府が、ドルを安くする介入に賛同するかは不透明だ。
では金融政策の見直しで円安を防ぐのか。それをすると、財政が危うい。
財政の健全度を示す指標の1つに、国内総生産(GDP)に対する債務残高の比率がある。21年時点で米国が133%、英国は108%と高い水準だが、日本は256%とギリシャを超える。10年で長短の国債残高が280兆円増えたのに金利が上がらなかったのは、日銀が国債保有を460兆円積み増して吸収したからだ。「日銀の金融政策は事実上、政府債務の穴埋めに組み込まれた」(東短リサーチの加藤出社長)
巨額の債務を抱えた財政は金利上昇にもろい。財務省の試算では金利が1%上昇した場合、25年度の元利払いの負担は想定より3.7兆円増える。「それほどの資金をどうひねり出すのか」(財務省幹部)
政府内で議論が進む物価高対策も、金融政策と財政の蜜月を試す。金融緩和を続ければ低利で国債を発行し、補助金などにまわせる。一方で円安が進み、次の物価高対策を迫られる。そんな矛盾が目の前にある。
アベノミクス下の金融緩和は当初、円安による輸出企業の収益拡大や株高で経済を支えた。一息つく間に財政出動と成長戦略で成長力を高めるはずだったが、足元の日本の潜在成長率は0.1%程度とされる。
13年1月、政府・日銀の共同声明(アコード)で政府は「持続可能な財政構造の確立」を約束したが、十分とは言い難い。財政の持続性を高め成長も促すため、新たなアコードを模索すべき時がきている。
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