利上げペース早める必要も、円安で物価再上昇なら-安達日銀委員
伊藤純夫
2024年5月29日 10:56 JST 更新日時 2024年5月29日 16:13 JST
基調物価の上昇持続なら、金融緩和度合い段階的に調整すること大切
国債買い入れ減は段階的に、予見性のある減額「今の段階では早い」
日本銀行の安達誠司審議委員は29日、円安の加速・長期化によって消費者物価が早期に再上昇する可能性があるとし、利上げのペースを速めることもあり得るとの見解を示した。熊本県金融経済懇談会で講演した。
安達氏は、「円安が加速、もしくは長期化することで、想定しているよりも早いタイミングで消費者物価の上昇率が反転する可能性がある」と指摘。先行き持続的・安定的な物価上昇が2%を上回る可能性がより強まっている場合には、「利上げを行うことで金融緩和度合いを調整するペースを速める必要性があるかもしれない」と述べた。
日銀は3月に17年ぶりの利上げに踏み切ったが、物価上昇圧力の継続や外国為替市場での円安傾向を背景に、市場では日銀による早期の追加利上げや国債買い入れの減額に対する思惑が強まっている。安達氏は、物価目標の実現確度が一段と高まる中での円安進行は、利上げなどの政策アクションにつながり得るとの見解を示した形だ。
緩和環境を維持
安達氏は、物価の先行きについて「下振れリスクと同時に上振れリスクにも配慮する必要がある」と指摘。基調的な物価上昇率が2%に向けて高まる状況が持続している限り、「経済・物価・金融情勢に応じて、金融緩和度合いを段階的に調整することが大切ではないか」と語った。
一方、目標達成が確信できるまで、緩和的な金融環境を維持することの重要性も強調。金融政策が前のめりになりすぎることで、「経済が回復する機運に水を差す拙速な利上げは絶対に避けなければならない」とし、実質金利がマイナスの状態を維持することの重要性を指摘した。
国債買い入れについては、将来のどこかの時点で減額させるとしながらも、「減額が急激なペースで行われると、長期金利等に不連続な変動をもたらしてしまい、金融政策自体の不連続な引き締め局面への移行と解釈」されることを懸念。「債券市場の需給や機能度、そして流動性の状況を総合的に勘案しつつ、段階的に減額していくことが望ましい」と述べた。
会見
午後の会見では、円安の影響について「長期化すれば、当然物価に影響が出る」とし、中長期の予想インフレ率が上振れするような状況では政策対応も考えると指摘。その上で、物価目標に向けて着実に基調的な物価上昇率が上昇している状況の下では、「景気の状況などを見ながら、非常にゆっくりとしたペースで金利を調整していくのが適している」と語った。
また、日銀が13日に残存5年超10年以下の国債の買い入れを500億円減らしたのは「政策意図を持ってやったわけではない」と説明。今後の減額については「最初は現場の裁量の範囲内で対応し、その後はまた考えていく」とし、予見性のある減額は「今の段階では早い」との見解を示した。
日銀が国債買い入れオペ減額、5年超10年以下-金融正常化
他の発言
物価目標実現確度高まっているが、確信持てる状況ではない
金融政策のリスクマネジメントで重要な局面にきている
消費者物価、本年夏から秋頃にかけて上昇に転じる可能性
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(発言の詳細を加えて更新しました)
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