日銀の緩和修正は「出口への一歩」「驚天動地」-エコノミストの見方
氏兼敬子
2022年12月20日 14:34 JST ブルームバーグ
日本銀行は20日に開催した金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の運用の一部見直しを決定した。市場ではサプライズと受け止められ、円は急騰、債券と株式相場はともに急落している。
今回の決定に関するエコノミストのコメントは以下の通り。
UBS証券の足立正道チーフエコノミスト:
日銀が何と呼ぼうとこれは出口への一歩だ。こういった動きを受けて2023年の利上げの可能性も出てくる
少なくともマイナス金利や0%程度の10年金利のターゲットは維持されているが、今日の決定は大きなサプライズであり、改めて市場とのコミュニケーションの改善の必要性を感じさせる
黒田総裁が批判を受け、悪役になるのも覚悟で今日の決定をしたというのはサプライズ。大規模緩和を10年続けてきた後、次期総裁がやりやすくなるようにと配慮したのだろう
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト:
YCCの修正に強く反対してきた黒田総裁が新体制に一定程度の配慮を示し、政策移行を多少なりともスムーズにするために柔軟化姿勢に転じたことも意味する
今回のYCC修正措置がすぐに正常化策につながるわけではない。その前に2%の物価安定目標の位置付けを中長期の目標へと修正すること、総括検証のようなものを実施することの2つの段取りが必要
総括検証を経て、マイナス金利解除など正常化策が実施されるのは24年半ば以降とみておきたい
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト:
完全にサプライズ。共同声明に焦点が当たっている中で、気を抜いているうちにこの部分をやってきた
為替、株への影響はサプライズだった分大きい。債券市場の機能低下を明確に言っているし、バンド拡大はそこへの第一歩としては正しい。なぜこのタイミングなのかは分からない
今後も新総裁の下での共同声明の検証は継続したテーマになる。賃上げの傾向を見極めないと、日銀・政府は動けない
S&Pグローバルマーケットインテリジェンスの田口はるみ主席エコノミスト:
現状この政策をもう一度点検するタイミングには来ている
日銀が50%以上の国債を既に保有していることは、今後この政策を続けていくのが難しいのは明らかだ
国債を買い続けることは政府の財政規律を緩める一つの要因の可能性もある。日銀は政府との声明も点検する時期にあり、両者でそういった動きを強めていくことは必要だ
SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミスト:
驚天動地。日銀の内田真一理事が以前、変動幅拡大は利上げだと言っていたので、そこまで踏み切るのは正直驚きだ
債券市場の機能度改善のために変動幅を拡大するが、金利を低位維持する意図は変わらないので、国債買い入れを大幅に増額するということだろう
国債買い入れの増額をしているので、金融引き締めをする気はないということ。あくまでも金融緩和維持で、利上げではないとの位置付けになる
世界経済が来年減速する際に金融緩和をやめるのはあまりにもリスクが大き過ぎるので、今の段階でそれを示すことはない
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