【米国市況】株下落し国債上昇、中東情勢懸念で逃避-153円25銭近辺
Rita Nazareth2024年4月13日 6:08 JST
- イスラエルがイランからの直接攻撃に警戒との報道で逃避需要
- 円は一時1ドル=152円59銭に上昇も、その後値を消す
12日の米金融市場では、地政学リスクの高まりから株式相場が大幅安。一方で逃避需要から国債やドルを買う動きが広がった。
株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数 | 5123.41 | -75.65 | -1.46% |
ダウ工業株30種平均 | 37983.24 | -475.84 | -1.24% |
ナスダック総合指数 | 16175.09 | -267.11 | -1.62% |
この日の午前中にブルームバーグ・ニュースは、イスラエルがイランから直接もしくはイランの代理勢力から数日中に無人機やミサイルで政府目標が攻撃を受ける可能性に備えていると報道。イスラエルは、レバノン領内からロケット弾40発が発射されたとして、一部については迎撃したと明らかにした。バイデン米大統領は記者団に対し、イランがすぐにでもイスラエルを攻撃すると予想していると発言。攻撃するなというのがイランに対するメッセージだと語った。
S&P500種株価指数は1.5%安で終了。銀行や半導体が特に大きく下げた。
ミラー・タバクのマット・メイリー氏は、投資家は地政学的問題にあまりに無関心だと指摘する。
「金・原油市場は、この危機が市場に与える有意な影響を織り込んできており、株式市場がこれに追随する可能性はゼロではない」とメイリー氏。「言い換えれば、投資家は今後数日から数週間は機敏に動く姿勢を維持したいだろう」と述べた。
またシティー・インデックスのファワド・ラザクザダ氏は「12日の市場ではリスクがメニューから外れた」と指摘。「週末を控え、投資家はリスク資産へのエクスポージャーを減らしている。何かが起きた場合に、リスク資産は下げる恐れがあるとの懸念が背景にある」と語った。
カーステン・フリッチ氏らコメルツ銀行のアナリストは、イスラエルとイランによる直接衝突となった場合、中東での対立が激化し、原油価格の大幅な上昇につながると指摘する。
中東情勢やウクライナによるロシアのエネルギーインフラへの攻撃などを受けた地政学的緊張の悪化を背景に、原油のオプション市場では強気の動きが広がっている。
インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トレス氏は、直近の動きについて、投資家心理と高い株式バリュエーションが地政学的対立や根強いインフレ、原油価格に対していかに脆弱(ぜいじゃく)であるかを示していると語る。
「投資家は、米緩和サイクルの開始時期の予想を後ずれさせている。米金融政策に代わり地政学が市場のボラティリティーを左右する重要要素の一つになる可能性がある」と分析した。
この日朝方には、一部大手金融機関の決算が発表された。
JPモルガン・チェースとウェルズ・ファーゴでは、純金利収入が市場予想を下回った。シティグループは利益が予想を上回った。企業による資金調達が活発化したほか、消費者のクレジットカード利用が増えた。高金利の長期化が大手行の追い風となっている兆しを示した。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は発表資料で「多くの経済指標は引き続き良好だ。しかし今後を展望すると、重大な不確定要素が多数存在することに対し警戒を続ける」とコメント。戦争、地政学的緊張の高まり、インフレ圧力の持続、量的引き締めの影響などを挙げた。
米国債
米国債相場は急伸。中東での対立悪化が予想される中で、逃避先として買いが集まった。この日発表された経済指標にも、リスク選好の後退を反転させる力はなかった。4月のミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は市場の予想以上に低下。一方でインフレ期待は上昇した。
国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り | 4.63% | -5.2 | -1.11% |
米10年債利回り | 4.52% | -6.7 | -1.46% |
米2年債利回り | 4.89% | -6.6 | -1.34% |
米東部時間 | 16時56分 |
アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・戦略責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は「売られ過ぎの市場環境に加え、週末を控えて米国債への逃避買いに弾みがついたことで」債券は上昇していると分析。「今年はわずか数回の利下げしか織り込まれておらず、このところの2年債と5年債利回り上昇を受けて、短期的に逃避先としての十分な価値を見いだせる」と述べた。
ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、米金融当局による年内の利下げは多くて2回とみている。また同氏は、インフレの抑制は困難なものになるとの見方を示した。
CNBCのインタビューでフィンク氏は、自身が当局者なら「インフレ率が2.8-3%になれば、勝利宣言をして終了だ」と述べた。これは、当局の目標2%をなお上回る水準だ。
為替
外国為替市場ではドル指数が上昇。イスラエルがイランからの直接攻撃に警戒しているとの報道が手掛かりとなった。週間では約1年半ぶりの大幅高。
為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数 | 1259.38 | 8.55 | 0.68% |
ドル/円 | ¥153.26 | -¥0.01 | -0.01% |
ユーロ/ドル | $1.0640 | -$0.0086 | -0.80% |
米東部時間 | 16時57分 |
Bloomberg Dollar Gauge Set for Best Week Since 2022
Fed repricing boosts greenback against major peers
Source: Bloomberg
ドルは、米国と他の主要国・地域の金融政策の乖離(かいり)にも支えられている。金利スワップ市場は現在、米金融当局が9月に利下げを開始し、年内の利下げ回数は2回程度になるとみている。
米カンザスシティー連銀のシュミッド総裁は、政策決定者は先手を打って政策を調整するのではなく、利下げの前にはインフレ率が2%に戻るという「明確かつ説得力ある」証拠を待つべきだと述べた。
円は対ドルでほぼ横ばいの1ドル=153円25銭近辺。朝方には中東情勢に関する報道に反応して円が大きく上昇し、一時152円59銭を付ける場面もあった。
円上昇し一時152円59銭、中東の緊張悪化で逃避需要-米国債急伸
原油
ニューヨーク原油相場は上昇。北海ブレントは一時大きく上げ、昨年10月以来の高値を付けた。イスラエルがイランの攻撃を受ける可能性に備えているとのブルームバーグ報道が手掛かり。中東地域は世界原油生産の3分の1を占めており、大規模な供給混乱の可能性が意識された。
北海ブレント原油急上昇、6カ月ぶり高値-中東情勢エスカレート懸念
北海ブレントは一時2.7%上昇し、1バレル=92ドルを上回った。イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘開始を受けて相場が跳ね上がって以来、付けたことのなかった水準だ。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は一時3.1%上昇した。
CIBCプライベート・ウェルスのシニアエネルギートレーダー、レベッカ・バビン氏は「イランが直接関与する事態になれば、中東での供給混乱の可能性が高まる」と指摘。「週末に何らかの動きがあるリスクが大きい中で、この上昇局面で売りを出す投資家はほとんどいない」と述べた。
WTI先物5月限は64セント(0.8%)高の1バレル=85.66ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント6月限は71セント(0.8%)上昇し、90.45ドルで引けた。
金
金スポット相場は反落。一時は大きく上げて最高値を更新したが、上昇は行き過ぎとの見方から利益確定売りが広がった。
スポット価格は一時2.5%高の1オンス=2431.52ドルと、初めて2400ドルを上回ったが、その後反転して1.6%安まで売られた。
コンサルティング会社メタルズ・フォーカスのマネジングディレクター、フィリップ・ニューマン氏は「相場が上げ過ぎたための手仕舞い売り」と指摘。その上で「手仕舞い売りや相場調整は長くは続かず、非常に強い買いの機会を提供することになるだろう」と述べた。
金の相対力指数(RSI、14日間)は80近くで推移してきており、一部の投資家が買われ過ぎとみる水準を大きく超えている。
金スポットはこのままいけば、週間ベースでは4週連続の上昇となる。実際にそうなった場合は、2023年の早い時期以来の長期上昇局面。
金スポット相場はニューヨーク時間午後3時19分現在、前日比1.5%安の1オンス=2336.92ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は同1.40ドル(0.1%)高の2374.10ドル。
原題:Stocks Get Hit as War Jitters Fuel Rush to Bonds: Markets Wrap(抜粋)
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