那須太社 錦輔 の日記

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アメリカン・スナイパー(1) クリス・カイル著

2015-03-28 10:47:30 | 読書感想文

まだ読んでいる途中だが、翻訳者が「噛みタバコ」を「嗅ぎタバコ」と誤訳している。

前後の文章から「噛んで」いるのか、「嗅いで」いるのか、わかるはずだが、なぜ間違うのだろうか。

文庫版で読んでいるが、文庫化するときにチェックなどないのかな。

 

あと、作者のクリス・カイル氏は自分の行為を正当化するために、イラク人を徹底的にこき下ろし、野蛮人・卑怯者・狂信者と口を極めて罵っているが実に醜悪。読んでいて不愉快になる。

逆に自分の愚劣さを露呈しているような気がする。

また、逆に自分たちのことは道徳的で正しい、ということも何度も繰り返すが、これも鼻につく。

いわく、アメリカ人は宗教施設を尊重する、墓地に手を出さない、自分(クリス・カイル)は弱いもの、女子供を守る、仲間を助ける。しかしイラク人はそうではない。その裏をついて寺院に武器を隠し病院を攻撃する。

しかし、自分の国に攻め込まれたら墓地だろうが寺院だろうが利用して戦うだろう。

また、クリス・カイルは狙撃のために侵入した民家で住人に所有物をあさる。金・ゲーム・その他。そしてそれを気の聞いたジョークのつもりで開陳している。

いわく、イラク人の家をあさっていたらセクシーなランジェリーが出てきたが、俺には似合わなかった、とか、戦闘規定に戦場から物を持ち去っていけないと書いてあるが、そこにあったゲームが上達したのは事実だ、とか。

平均的なアメリカ人は皆こんな認識でいるのだろうか?

 

アンディ・マクナブ(イギリス特殊部隊隊員)の手記では、イラク人をここまで酷い書き方はしてなかった気がするが。

アフガンで闘った、マーカス・ラトレルも、こんなに正義・正義とは言わなかった。彼は、地元テキサス愛・自国アメリカのリベラル派マスコミへの怒りが強くて、クリス・カイルみたいに敵国人を一方的に悪と決め付けはしなかった。

 

小説を読む前に映画も観たが、クリント・イーストウッド監督はこの小説を映画化して、何を世に問いかけたかったのかわからない。

反戦なのか、それともアメリカ万歳なのか。

ふたつ気がついたのは

1、クリス・カイルが帰国して、役所で彼に命を救われたという元兵士と出会うシーン。

  この本では元兵士はカイルに謝意を述べ、元兵士の父親も出てきてカイルを賞賛する。

  しかし映画では、元兵士はカイルに謝意を述べるが身体障害者となっていて、カイルに傷痍軍人の会への出席を勧める。元軍人の父親などは出てこない。

2、小説ではカイルの嫁さんの短い手記がたくさん挟み込まれている。構成側としてはスーパー・マッチョなカイルの弱いところ、苦悩する姿、家庭人としての至らなさ、みたいな人間性を表現したかったのではないかと思うが、映画では小説以上の頻度で嫁さんが登場するが、ありきたりな女の愚痴や自己憐憫のセリフが何度も何度も繰り返されるだけで、ウンザリさせられはするが、クリス・カイルの苦悩や、弱さをあまり表現しようとしてなかったように思える。

イーストウッドの意図がどこにあったのか、映画と原作との違いで何か読み取りたいが、むずかしいなあ・・・。

他の人に映画評を読んでて気がついたが、ドリルで子供を殺すテロリストや、オリンピックに出たスナイパーも、そういえば小説には出てこないな。

 

 

 

コメント
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