おだやかな山の景色が、幸せな一家を包んでいた。ギターを手にした若い母親が、幼い息子の手を取って指板に乗せる。
「ほら、ニコ。これがド、これがレよ」
父親がおっとりと笑った。
「無理だよ、ルシア。まだ2歳になったばかりだよ、ニコラスは」
「でも、ロレンソ。見て、この子、弾こうとしてるわ。きっと、ギタリストになるわよ」
ルシアはギターを構え直し、ゆっくりと弾き出す。もうすっかり覚えてしまった、優しい子守歌のようなメロディーを。
すると、ギターが、包み込むように温かく輝き始めた。ニコラスが手を伸ばす。
「まあ、きれい。ギターが光ってる」
ルシアがひときわ顔をなごませ、光なすギターを、息子に差し出した。
ニコラスは、静かに記憶を噛み締めた。
「そうだ……あれは、確かに、母さんだった」
「思い出したのね。そう──あれはルシアの、息子を想う心の光……」
彼女──エストが、慈しみ深く言葉を紡ぐ。今やその全身は、泉の女神たる本性を顕し、白銀にきらめいていた。
「そして、今度は、あなたたちの番。……わたしは、ベロニカとあなたが成長するさまをずっと見守ってきたわ」
エストの声が、少しずつ遠ざかる。
「あなたたちは、出逢うべくして出逢ったのよ。ふたりの愛が、ギターに新たな光を与えているの。どうか、これからも……」
幸せに、と言った気もするが、よくは聞き取れなかった。
「ニコ? 起きたの?」
隣で、ベロニカが身動きする。ニコラスは、そっと彼女を抱き寄せた。
「うん──あなたに、聞いてほしい話があるんだ、ベロニカ」
「ほら、ニコ。これがド、これがレよ」
父親がおっとりと笑った。
「無理だよ、ルシア。まだ2歳になったばかりだよ、ニコラスは」
「でも、ロレンソ。見て、この子、弾こうとしてるわ。きっと、ギタリストになるわよ」
ルシアはギターを構え直し、ゆっくりと弾き出す。もうすっかり覚えてしまった、優しい子守歌のようなメロディーを。
すると、ギターが、包み込むように温かく輝き始めた。ニコラスが手を伸ばす。
「まあ、きれい。ギターが光ってる」
ルシアがひときわ顔をなごませ、光なすギターを、息子に差し出した。
ニコラスは、静かに記憶を噛み締めた。
「そうだ……あれは、確かに、母さんだった」
「思い出したのね。そう──あれはルシアの、息子を想う心の光……」
彼女──エストが、慈しみ深く言葉を紡ぐ。今やその全身は、泉の女神たる本性を顕し、白銀にきらめいていた。
「そして、今度は、あなたたちの番。……わたしは、ベロニカとあなたが成長するさまをずっと見守ってきたわ」
エストの声が、少しずつ遠ざかる。
「あなたたちは、出逢うべくして出逢ったのよ。ふたりの愛が、ギターに新たな光を与えているの。どうか、これからも……」
幸せに、と言った気もするが、よくは聞き取れなかった。
「ニコ? 起きたの?」
隣で、ベロニカが身動きする。ニコラスは、そっと彼女を抱き寄せた。
「うん──あなたに、聞いてほしい話があるんだ、ベロニカ」