「えーっと、確かこの棚にしまったはずなんだけど……」
「何を探してるんだい、ベロニカ」
いきなり立ち上がったと思ったら、戸棚の引き出しを次々と開けはじめた妻を、ニコラスはしばし呆気に取られて眺めていた。しかし、小柄なベロニカが背丈を遥かに超える高い段に腕を伸ばしたときには、さすがに安閑とは座っていられなくなった。
「待った! 無理しないで。ぼくが取るよ。だから、何を探しているのか教えてくれてもいいだろう?」
「写真よ、写真!」
答える間ももどかしげに、ベロニカ。
「おばあちゃんの結婚式の写真。わたしが小さいころにもらってあったの」
「そうなのか……」
「なんで忘れていたのかしら。そういえば、ふしぎだったのよ。どうして知らない人たちがたくさん写っているんだろうって。あの美しいベールは何なんだろうって!」
肩の下でひといきにまくしたてるベロニカに相槌を打ちながら、ニコラスは引き出しの奥へと手を伸ばした。指が平らなものに触れる。
「これ──かな?」
「あった!?」
ベロニカの声が一気にはずんだ。ニコラスは慎重に指先がとらえたものを手繰り寄せる。わずかな間ののち、獲物が姿を現した。
「おっとっと」
「気をつけてね、ニコ! 大事な思い出の品なんだから」
「ごめん、埃が溜まってて」
ニコラスは危うく取り落としかけた写真を、今度はしっかりと持ち直した。丁寧に埃をぬぐって、ベロニカに渡す。ベロニカは最前のしかめっ面が嘘のような、晴れやかな笑顔でそれを受け取った。
「ああ、懐かしいわ。何年ぶりかしら」
「何を探してるんだい、ベロニカ」
いきなり立ち上がったと思ったら、戸棚の引き出しを次々と開けはじめた妻を、ニコラスはしばし呆気に取られて眺めていた。しかし、小柄なベロニカが背丈を遥かに超える高い段に腕を伸ばしたときには、さすがに安閑とは座っていられなくなった。
「待った! 無理しないで。ぼくが取るよ。だから、何を探しているのか教えてくれてもいいだろう?」
「写真よ、写真!」
答える間ももどかしげに、ベロニカ。
「おばあちゃんの結婚式の写真。わたしが小さいころにもらってあったの」
「そうなのか……」
「なんで忘れていたのかしら。そういえば、ふしぎだったのよ。どうして知らない人たちがたくさん写っているんだろうって。あの美しいベールは何なんだろうって!」
肩の下でひといきにまくしたてるベロニカに相槌を打ちながら、ニコラスは引き出しの奥へと手を伸ばした。指が平らなものに触れる。
「これ──かな?」
「あった!?」
ベロニカの声が一気にはずんだ。ニコラスは慎重に指先がとらえたものを手繰り寄せる。わずかな間ののち、獲物が姿を現した。
「おっとっと」
「気をつけてね、ニコ! 大事な思い出の品なんだから」
「ごめん、埃が溜まってて」
ニコラスは危うく取り落としかけた写真を、今度はしっかりと持ち直した。丁寧に埃をぬぐって、ベロニカに渡す。ベロニカは最前のしかめっ面が嘘のような、晴れやかな笑顔でそれを受け取った。
「ああ、懐かしいわ。何年ぶりかしら」