女神エストは先の水神を一瞥し、“水返しの歌”に合わせてゆるやかに舞う。快い、心地よい祈り──誰もがそう感じたとき、忌まわしい歌声はやんでいた。「眠った──か」水神ふたりが顔を見合わせる。「よければ、この子はわたしが預かるわ」女神の言葉に、水神が慌てる。「待った、まだ修業が」「大丈夫。心強い世話係もいるし」「まさか……ママ?」女神は、自分の名を継ぐ娘を優しく抱く。「ええ。ベロニカは、一緒に星の泉を護ってくれているの。あなたたちが来るのを待っているわ」「そうか……」感に堪えたように、ニコラスが呟いた。「では」切り出したのは先の水神。「次の水神の弟子に、フアンはどうだろう」「ぼくが?」フアンは周りをかえりみ、やがて小さく頷いた。天と地の調べ、神と人の道は再び交わり、新たな鼓動を刻んでゆく。
(了)
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