舞い上がった流れ星の女神は、たちまち上空へと昇ってゆく。
「あの──っ」
フアンの呼びかけに、遥か上から返事が降ってきた。
「仕事の時間です。それに、案内は済んだ」
かくて夜の庭園に、フアンと雷神が残った。もはやふたりを隔てるものも、仲介するものもない。
雷神が、ちらりとフアンを見る。射すくめられるような気がした刹那、ふいの炎めいた口調で雷神が言い放った。
「人ならぬ身とは申せ──わらわの力を継ぐ娘を欲するというのか」
「えっ」
フアンは熱さも忘れて立ちすくむ。
「どうして、それを」
「仮にもわが血脈に連なる者のこと、わらわが目配りしていないと思うたか」
雷神の放つ威圧感が、熱波のようにフアンを包む。いくら風の助けがあっても、このままでは身がもちそうにない。
でも。
雷神が、事の次第を承知しているなら、いっそ話は早い。
「あの……雷神さま」
雷神は、昂然と、しかし、待っている。
フアンは、言葉を振り絞った。
「ぼくに、チャンスをください」
「──チャンスとは、なんじゃ」
「……試験です。ぼくが、エストにふさわしい男かどうか。もしふさわしければ」
少し迷って、
「エストの火の性質を変えてください」
「ほう……」
雷神が、ほんのつかのま表情をやわらげた。
「して、そなた、何をすると?」
「ぼくは、歌うたいです。歌を──」
フアンは、身構えようとした。
けれど。
「あの──っ」
フアンの呼びかけに、遥か上から返事が降ってきた。
「仕事の時間です。それに、案内は済んだ」
かくて夜の庭園に、フアンと雷神が残った。もはやふたりを隔てるものも、仲介するものもない。
雷神が、ちらりとフアンを見る。射すくめられるような気がした刹那、ふいの炎めいた口調で雷神が言い放った。
「人ならぬ身とは申せ──わらわの力を継ぐ娘を欲するというのか」
「えっ」
フアンは熱さも忘れて立ちすくむ。
「どうして、それを」
「仮にもわが血脈に連なる者のこと、わらわが目配りしていないと思うたか」
雷神の放つ威圧感が、熱波のようにフアンを包む。いくら風の助けがあっても、このままでは身がもちそうにない。
でも。
雷神が、事の次第を承知しているなら、いっそ話は早い。
「あの……雷神さま」
雷神は、昂然と、しかし、待っている。
フアンは、言葉を振り絞った。
「ぼくに、チャンスをください」
「──チャンスとは、なんじゃ」
「……試験です。ぼくが、エストにふさわしい男かどうか。もしふさわしければ」
少し迷って、
「エストの火の性質を変えてください」
「ほう……」
雷神が、ほんのつかのま表情をやわらげた。
「して、そなた、何をすると?」
「ぼくは、歌うたいです。歌を──」
フアンは、身構えようとした。
けれど。