エスペランサがつけた、貝の髪飾り。オルランドやソニアが見つめる前で、髪飾りは少しずつその姿を変えていった。
はっきりと貝殻の形をしていたものが、何かの力で引っ張られるように、細長く延ばされていく。
(これじゃ、貝の中身みたいだ)
オルランドは思った。このままでは、ぐにゃぐにゃになってしまうのではないだろうか。けれど、オルランドがそう思った次の瞬間、さらなる変化が起きた。
(水しぶき……!)
オルランドの目の前で、あざやかなしぶきがはじけた。いまや髪飾り──いや、髪飾りだったもの、は、美しい弧をえがく小さな波のしぶきと化していた。驚いたのは、エスペランサやソニアも同様らしい。小さな喚声をあげたのは、エスペランサだ。ソニアは、目をきょときょとと泳がせている。
「まあ珍しい。母さんが驚いてる」
すぐ体勢を立て直したエスペランサが笑う。そっくりの顔をした自分もこんな表情を浮かべているのだろうかと、オルランドもおかしくなった。
その一方で、まるで動じていない人物がいた。マントをかぶった御者だ。オルランドの耳に、ゆうべの少女の言葉が響く。
「馬車が着きます。待っててください──って、以上、風のお兄ちゃんからの伝言です」
と、あの娘は言わなかったか? それが本当だとすれば、このマントの男が……
「なあ、あんた……」
意を決してオルランドが御者に声をかけた、まさにそのとき。
家の奥から、ただならぬ声が聞こえた。
「……オル、ランド……!」
母親の声だった。
オルランドの顔色が変わる。
「母さん!」
一同は、家の中へと駆け込んだ。
はっきりと貝殻の形をしていたものが、何かの力で引っ張られるように、細長く延ばされていく。
(これじゃ、貝の中身みたいだ)
オルランドは思った。このままでは、ぐにゃぐにゃになってしまうのではないだろうか。けれど、オルランドがそう思った次の瞬間、さらなる変化が起きた。
(水しぶき……!)
オルランドの目の前で、あざやかなしぶきがはじけた。いまや髪飾り──いや、髪飾りだったもの、は、美しい弧をえがく小さな波のしぶきと化していた。驚いたのは、エスペランサやソニアも同様らしい。小さな喚声をあげたのは、エスペランサだ。ソニアは、目をきょときょとと泳がせている。
「まあ珍しい。母さんが驚いてる」
すぐ体勢を立て直したエスペランサが笑う。そっくりの顔をした自分もこんな表情を浮かべているのだろうかと、オルランドもおかしくなった。
その一方で、まるで動じていない人物がいた。マントをかぶった御者だ。オルランドの耳に、ゆうべの少女の言葉が響く。
「馬車が着きます。待っててください──って、以上、風のお兄ちゃんからの伝言です」
と、あの娘は言わなかったか? それが本当だとすれば、このマントの男が……
「なあ、あんた……」
意を決してオルランドが御者に声をかけた、まさにそのとき。
家の奥から、ただならぬ声が聞こえた。
「……オル、ランド……!」
母親の声だった。
オルランドの顔色が変わる。
「母さん!」
一同は、家の中へと駆け込んだ。