輝きはじめた羽は、ニコラスの手におさまっていたが、やがてふわりと宙に舞った。
「おっと」
ニコラスは、そうなるだろうことを予測していた。長い腕を差し伸べて、うまく羽の動きを制した──かにみえた。
「おっ──っと」
その腕が、予想を超える力で引っ張られた。
「ニコ!」
「パパ」
ベロニカとエストが、両側からニコラスを押しとどめる。
「ああ……大丈夫。驚いたね」
ニコラスはひとつ息をついた。
けれど、羽はまだ、鎮まってはいなかった。何かを訴えるように、ニコラスの手の中でぱたぱたと動いている。
シルクロが、まん丸い身体を転がすように走り出ていった。戻ってくるのも、早かった。
「……紙?」
ベロニカが目を丸くする。
シルクロがくわえてきたものは、エストが使う画用紙だった。
と──
羽がニコラスの手をすいっと離れ、金の光を撒きちらしつつ、画用紙にきらきらとした文字を刻みつけていった。
黄金の羽の、金の文字。
3人は、固唾を呑んで羽を見つめていた。
長い文章ではないようだった。
「どこの言葉かしら、これ……」
ベロニカが、魅入られたように呟く。
「アルファベットでは、あるようだけど」
と、ニコラス。
「読めないね、全然」
それは、彼らが見たこともない言葉だった。
羽は再びニコラスの手のうちにあったが、さいぜんまでの輝きは、もうなかった。あたかも役目は果たしたといわんばかりに、美しいけれど普通の、大きな羽に戻っていた。
「おっと」
ニコラスは、そうなるだろうことを予測していた。長い腕を差し伸べて、うまく羽の動きを制した──かにみえた。
「おっ──っと」
その腕が、予想を超える力で引っ張られた。
「ニコ!」
「パパ」
ベロニカとエストが、両側からニコラスを押しとどめる。
「ああ……大丈夫。驚いたね」
ニコラスはひとつ息をついた。
けれど、羽はまだ、鎮まってはいなかった。何かを訴えるように、ニコラスの手の中でぱたぱたと動いている。
シルクロが、まん丸い身体を転がすように走り出ていった。戻ってくるのも、早かった。
「……紙?」
ベロニカが目を丸くする。
シルクロがくわえてきたものは、エストが使う画用紙だった。
と──
羽がニコラスの手をすいっと離れ、金の光を撒きちらしつつ、画用紙にきらきらとした文字を刻みつけていった。
黄金の羽の、金の文字。
3人は、固唾を呑んで羽を見つめていた。
長い文章ではないようだった。
「どこの言葉かしら、これ……」
ベロニカが、魅入られたように呟く。
「アルファベットでは、あるようだけど」
と、ニコラス。
「読めないね、全然」
それは、彼らが見たこともない言葉だった。
羽は再びニコラスの手のうちにあったが、さいぜんまでの輝きは、もうなかった。あたかも役目は果たしたといわんばかりに、美しいけれど普通の、大きな羽に戻っていた。