蔓草のように伸び上がった金の文字──いや、“文字だったもの”は、しだいにひとつの形を結びつつあった。
「飛行機……?」
ベロニカは要領を得ない顔で、
「いえ……違うわ……これは……」
恐ろしいまでに真剣な眼で、ベロニカはひたと目の前の“もの”を見据えはじめた。射抜くような眼光に、思わず声をかけたニコラスも口をつぐむ。
「この形……わたし、見たことがある」
かすかに真ん中がふくらんだ、すらりと長い流線型。腕のいい金細工師が手がけたとしてもなかなかこうはいかないだろう、最高級になめらかな表面。
頭部もない。くちばしもない。
翼もない。それでも。
「これは……鳥だわ」
迷いなく、言った。
「鳥、だって!?」
ニコラスは訊き返さずにはいられなかった。そして、自分の手元の羽を見る。──見ようと、した。
「羽は……どこだ?」
呆然と呟く。シルクロを抱き上げたエストが寄り添う。
「もういいんだわ、パパ。羽は、鳥に還ったから」
「……え?」
「思い出したのよ、ニコ」
どこかうっとりと、ベロニカ。
「ティトおじいちゃんが眺めていた写真に、これが写っていたの」
「──で?」
驚きから脱しきれないニコラスが問う。
「どうして、これが鳥なんだい?」
ベロニカは答えるより早く、伸び上がった“鳥”に手を差しのべた。呼応するように、“鳥”が大きく羽ばたいてみせた。
「飛行機……?」
ベロニカは要領を得ない顔で、
「いえ……違うわ……これは……」
恐ろしいまでに真剣な眼で、ベロニカはひたと目の前の“もの”を見据えはじめた。射抜くような眼光に、思わず声をかけたニコラスも口をつぐむ。
「この形……わたし、見たことがある」
かすかに真ん中がふくらんだ、すらりと長い流線型。腕のいい金細工師が手がけたとしてもなかなかこうはいかないだろう、最高級になめらかな表面。
頭部もない。くちばしもない。
翼もない。それでも。
「これは……鳥だわ」
迷いなく、言った。
「鳥、だって!?」
ニコラスは訊き返さずにはいられなかった。そして、自分の手元の羽を見る。──見ようと、した。
「羽は……どこだ?」
呆然と呟く。シルクロを抱き上げたエストが寄り添う。
「もういいんだわ、パパ。羽は、鳥に還ったから」
「……え?」
「思い出したのよ、ニコ」
どこかうっとりと、ベロニカ。
「ティトおじいちゃんが眺めていた写真に、これが写っていたの」
「──で?」
驚きから脱しきれないニコラスが問う。
「どうして、これが鳥なんだい?」
ベロニカは答えるより早く、伸び上がった“鳥”に手を差しのべた。呼応するように、“鳥”が大きく羽ばたいてみせた。