271828の滑り台Log

271828は自然対数の底に由来。時々ギリシャ・ブラジル♪

滑り台の帯電防止対策(その2)

2007-04-26 10:26:48 | 遊具
滑り台の帯電防止対策(その1)ではポリエチレンを滑面とした滑り台の静電気対策が、ポリエチレンの物性から、いかに困難であるかを簡単に書きました。今回は私たちが犯した失敗を隠さず明らかにしたいと思います。
この滑り台の開発を試みた時期は長いローラー滑り台が各地で施工された時期と重なります。しかしメーカーとしては次期の製品の開発を怠ることは出来ません。ポリエチレン回転成形のチューブ滑り台も海外から入ってきました。しかしこれは主にコンビネーション遊具の1アイテムであって、ローラー滑り台のように地形に合わせて設計出来るものではありません。その都度型を起こしていたら資金がいくらあっても足りません。
そこで既成のポリエチレンのベンチ材を利用して、それをスチールのフレームに組み込むことを考えたのです。フレームさえ出来てしまえば、ポリエチレンの型材を撓ませながらはめ込むことは可能でした。この考えで作ったのが冒頭の写真に示す滑り台です。
しかし直ぐに欠陥が現れます。静電気の発生が酷く滑り終わると、製品の金属部分に近づいただけで電撃を食らうのです。そこで、製品に直接接触しないように内側と外側にポリエチレンの型材を追加しました。断面を以下に示します。手摺は小型船舶に使われる防舷材を流用しています。

帯電を防止するためには金属線を滑面に沿わせて取り付ければ簡単だと思われますが、実際にやってみると放電する箇所が増えるだけで何らの解決にはなりませんでした。金属の部品を排除するために、部材同士のジョイントをスチールからFRPの棒をフライス加工したものに取り替え、ボルトもポリカーボネートに変更しました。放電する箇所を最小限に止めたいと考えたのです。帯電防止スプレーも市販されていましたが、滑り台は常時磨耗試験をやっているようなものですから、耐久性は全く期待できません。

このような滑り台の「非金属化」を行ったにもかかわらず、思わぬ伏兵に出会います。それはプラスチックの熱変形です。このことについてはまた別の投稿で取り上げますが、熱応力によってポリカーボネートのボルトがせん断されるのです。

写真に見える大きな穴には樹脂のボルトがあったのですが、殆ど切れてなくなっているのです。安全のために止む無く金属製のボルトで補修しています。速やかに改良をしなければならないので、帯電防止グレードの製品をメーカーにお願いしました。私が直面したのは静電気と熱変形でした。

後で知ったことですが、同業他社も同じような試みをしていました。IPDL(特許電子図書館)で「滑り台」+「静電気」で検索するといくつかヒットします。代表的な出願を以下に示します。

【発明の名称】 静電気除電装置付滑り台
【公開番号】 特許公開2004-65880
【出願番号】 特許出願2002-260584

【発明の名称】 滑り台の除電用コーナー
【公開番号】 特許公開平11-300051
【出願番号】 特許出願平10-111664

しかし上記の特許が製品化されたとは思えません。私の苦い経験からも推測できますが、明細表示にある「経過情報」には次のように記されていました。

出願細項目記事 査定種別(査定無し) 最終処分(未審査請求によるみなし取下)

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