この季節になるとユズが届きます。薬味や柚子湯に使うには多すぎて処理に困るので引き取って欲しいらしい。従って保存食(マーマレード)に加工することを考えます。機械でも加工食品でも要求品質を考えて設計するのが常道です。また製品のデザインには先行技術調査が欠かせません。
そもそもマーマレード(marmalade)とはどんな食品なのでしょうか?ジャム類の日本農林規格では「柑橘類の果実を原料としたもので、かんきつ類の果皮が認められるものをいう。」と定義されています。英語の marmalade はポルトガル語由来で、もとはマルメロの砂糖漬けのような食品を指すものであったのですが、更に起源を探ればギリシャに辿り着きます。ローマ人はギリシャ人からマルメロの蜂蜜漬けを学びました。古代の甘味料は蜂蜜に限られていました。
今日、私達が食べているマーマレードが作られたのはスコットランドと言われています。(1797年頃)原料としたのはビターオレンジ、つまり橙(ダイダイ)です。この果樹はインド原産で、ヨーロッパにも伝わっています。アテネでも街路樹として使われています。アテネのsalahiさんの記事「未熟ダイダイのシロップ煮(ネランジャキャ・グリカ)」も興味深く拝見しました。この「ネランジ」を使った料理もおふくろの味なのでしょうね。ハリス・アレクシーウの歌「サワーチェリーとビターオレンジ」をご紹介します。
さて先行技術調査で良いと思ったのが以下のレシピです。
元を辿ると辰巳芳子さんのレシピです。私の方針は加熱時間を最小にして素材の味・香を残すこと、素材を出来る限り利用してゴミを出さないことです。柑橘類にはリモニン(limonin)と呼ばれる苦味成分がありますが、この苦味とどう付き合うかでプロセスが異なります。私はこれが素材の個性だと思ってあまり排除しないことにしました。奥村彪生(おくむらあやお)さんの言う「灰汁も味のうち」と思って、手間を掛けません。
まず瓶や砂糖の在庫を確認します。
途中で買いに走ることがないように。段取り八分と言いますね。瓶の内容量は225mlで、グラニュー糖は500g/袋を用意しました。
ユズの質量は1kgです。ステンレスのボールの質量が220gなので秤の目盛は1.22kgを示しています。砂糖の量にユズの量を合わせることにしています。質量比は2:1となります。隣にぺティナイフとガラスのレモン絞り器が見えます。
果実を1/2にカットして、果汁を絞ります。果汁はガラスかホウロウの器にとりわけ、種は使いません。次にスプーンを使って袋と果皮を分けます。袋を集めて少量の水を加えてミキサーで粉砕します。
この工程で注意するのは安いフードプロセッサを使わないことです。
柑橘類の果皮にはリモネン(limonene)が含まれています。
リモネンとスチレンは構造が似ているので、リモネンがスチレンを溶かします。これを「相溶性」と教えてくれたのがYさんです。安いフードプロセッサの容器はポリスチレンであることが多いので、ガラス製の容器でなければなりません。
細かくなった果実・袋を鍋に入れて煮ます。
ペクチンを使うのが目的です。市販されているペクチンもリンゴやミカンの搾りかすから抽出されています。煮ればトロトロになりますが、粘度が高いので焦げ付きには注意です。
果皮は丁寧に1~2mmの薄さで刻みます。包丁は作業前に研ぐと、心の準備が出来て仕上がりも良くなります。刻んだ果皮の質量は約450gでした。これをたっぷりのお湯で煮て苦味を減少させます。どの程度まで煮るかによって味が決まりますから、大切な工程です。
茹った果皮をざるで受けて、茹で汁をボールに落とします。水道の水で果皮を晒して水を切ります。ボールに溜まった茹で汁は流しません。お風呂に入れて「柚子湯」として利用します。柚子のエキスがたっぷり出ているので、入浴後とても快適です。
トロトロ液に茹でた果皮をいれ、少しずつ砂糖を加えながら煮詰めます。果汁も2・3回に分けて加え、なるべく素材の香を保つことにしました。
柔らかさ・甘さ・酸味・苦味・粘度が納得出来るまで味見をして、良ければ消毒した瓶にいれて、熱いまま逆さにして冷めるのを待ちます。1kgの柚子から4瓶と少し出来ました。
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(2010/12/04追記)アテネのsalahiさんの私信でいろいろ教えて頂きました。マーマレードはギリシャ語ではマルメラーダ(マルメラーザとの中間っぽい発音)といいますが、柑橘などの皮入りのものだけでなくジャム全般を指します。
Googleの翻訳機能を使っても、綴りと発音を知ることが出来ます。いつもはWikipediaの「他の言語」を辞書代わりに使っているのですが、マーマレードに関するギリシャ語の記事はまだ書かれていません。
ユズの茹で汁を柚子湯で使う"mottainai"も評価して頂き、嬉しかったです。いつもありがとうございます!
そもそもマーマレード(marmalade)とはどんな食品なのでしょうか?ジャム類の日本農林規格では「柑橘類の果実を原料としたもので、かんきつ類の果皮が認められるものをいう。」と定義されています。英語の marmalade はポルトガル語由来で、もとはマルメロの砂糖漬けのような食品を指すものであったのですが、更に起源を探ればギリシャに辿り着きます。ローマ人はギリシャ人からマルメロの蜂蜜漬けを学びました。古代の甘味料は蜂蜜に限られていました。
今日、私達が食べているマーマレードが作られたのはスコットランドと言われています。(1797年頃)原料としたのはビターオレンジ、つまり橙(ダイダイ)です。この果樹はインド原産で、ヨーロッパにも伝わっています。アテネでも街路樹として使われています。アテネのsalahiさんの記事「未熟ダイダイのシロップ煮(ネランジャキャ・グリカ)」も興味深く拝見しました。この「ネランジ」を使った料理もおふくろの味なのでしょうね。ハリス・アレクシーウの歌「サワーチェリーとビターオレンジ」をご紹介します。
さて先行技術調査で良いと思ったのが以下のレシピです。
元を辿ると辰巳芳子さんのレシピです。私の方針は加熱時間を最小にして素材の味・香を残すこと、素材を出来る限り利用してゴミを出さないことです。柑橘類にはリモニン(limonin)と呼ばれる苦味成分がありますが、この苦味とどう付き合うかでプロセスが異なります。私はこれが素材の個性だと思ってあまり排除しないことにしました。奥村彪生(おくむらあやお)さんの言う「灰汁も味のうち」と思って、手間を掛けません。
まず瓶や砂糖の在庫を確認します。
途中で買いに走ることがないように。段取り八分と言いますね。瓶の内容量は225mlで、グラニュー糖は500g/袋を用意しました。
ユズの質量は1kgです。ステンレスのボールの質量が220gなので秤の目盛は1.22kgを示しています。砂糖の量にユズの量を合わせることにしています。質量比は2:1となります。隣にぺティナイフとガラスのレモン絞り器が見えます。
果実を1/2にカットして、果汁を絞ります。果汁はガラスかホウロウの器にとりわけ、種は使いません。次にスプーンを使って袋と果皮を分けます。袋を集めて少量の水を加えてミキサーで粉砕します。
この工程で注意するのは安いフードプロセッサを使わないことです。
柑橘類の果皮にはリモネン(limonene)が含まれています。
リモネンとスチレンは構造が似ているので、リモネンがスチレンを溶かします。これを「相溶性」と教えてくれたのがYさんです。安いフードプロセッサの容器はポリスチレンであることが多いので、ガラス製の容器でなければなりません。
細かくなった果実・袋を鍋に入れて煮ます。
ペクチンを使うのが目的です。市販されているペクチンもリンゴやミカンの搾りかすから抽出されています。煮ればトロトロになりますが、粘度が高いので焦げ付きには注意です。
果皮は丁寧に1~2mmの薄さで刻みます。包丁は作業前に研ぐと、心の準備が出来て仕上がりも良くなります。刻んだ果皮の質量は約450gでした。これをたっぷりのお湯で煮て苦味を減少させます。どの程度まで煮るかによって味が決まりますから、大切な工程です。
茹った果皮をざるで受けて、茹で汁をボールに落とします。水道の水で果皮を晒して水を切ります。ボールに溜まった茹で汁は流しません。お風呂に入れて「柚子湯」として利用します。柚子のエキスがたっぷり出ているので、入浴後とても快適です。
トロトロ液に茹でた果皮をいれ、少しずつ砂糖を加えながら煮詰めます。果汁も2・3回に分けて加え、なるべく素材の香を保つことにしました。
柔らかさ・甘さ・酸味・苦味・粘度が納得出来るまで味見をして、良ければ消毒した瓶にいれて、熱いまま逆さにして冷めるのを待ちます。1kgの柚子から4瓶と少し出来ました。
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(2010/12/04追記)アテネのsalahiさんの私信でいろいろ教えて頂きました。マーマレードはギリシャ語ではマルメラーダ(マルメラーザとの中間っぽい発音)といいますが、柑橘などの皮入りのものだけでなくジャム全般を指します。
Googleの翻訳機能を使っても、綴りと発音を知ることが出来ます。いつもはWikipediaの「他の言語」を辞書代わりに使っているのですが、マーマレードに関するギリシャ語の記事はまだ書かれていません。
ユズの茹で汁を柚子湯で使う"mottainai"も評価して頂き、嬉しかったです。いつもありがとうございます!
可愛らしい箱をあけたら「ゆず」の他にもう一瓶「ふじ」というラベルの貼ったのが。。こちらは「りんご」のジャムですね。
さっそくスプーンでひと口ずついただきました。新鮮で果実の風味が活かされていて口の中が幸せいっぱいになりました。
この記事で紹介された製造過程もしっかり読ませていただきました。「重さ」や「重量」ではなく「質量」と書いてあったのが科学ブログらしいなと思いました。(笑)
母も「珍しい贈り物だわね。」と喜んでいました。家族みんなで味わせていただきます。
先日のお願いとそのお骨折りに対するささやかな御礼です。ご家族の皆さんにも好評で私も嬉しいです。
マーマレードの記事は改訂版を上げたところです。β版から製品版に一歩近づけたつもりです。調理は技術・工学分野と考えています。
リンゴのふじは、フジでも富士でもないことが分かりました。いずれこれも話題にしたいと思いますが、この品種は世界でも生産量がトップなのですね。