幸せの深呼吸

幸せは自分の中にある。
幸せは自分が決める。

孤独死したコロナ患者の部屋に見た過酷な孤立

2020-06-01 | 医療、健康

https://toyokeizai.net/articles/-/353706

自宅でひっそりと、1人で最期を迎える孤独死――。ニッセイ基礎研究所によると、わが国では年間約3万人の孤独死が起こっている。そんな孤独死を取り巻く現場が、コロナ禍でさらに危機的な状況になっている。
これまで可能だった民生委員などの地域の見守り活動が困難になり、高齢者が長期間にわたって、家の中で亡くなっても遺体が発見されないという事例が相次いでいるのだ。さらに、特殊清掃業者は、実態を隠そうとする遺族や管理会社のせいで、コロナ疑いの現場を手掛けなければならなくなっている。
NHK NEWS WEBは5月24日付で衝撃的なニュースを伝えた。東京都内の住宅で一人暮らしの70代の男性が誰にも看取られずに死亡し、その後の検査で新型コロナウイルスに感染していたことが関係者への取材で判明したというものだ(孤独死の高齢者 新型コロナの感染判明 「見守り」課題に)。
この記事によると、男性は死亡する2カ月ほど前、親族と疎遠になっているうえ、足が不自由になり困っているとして、長年会っていなかった中学時代の友人に助けを求めていた。男性は小学校で教師をしていたが、50代で退職。その後、家に閉じこもるようになっていたという。
友人が病院に行くように勧めたが本人は拒否
男性は食べ物もなく、友人を頼った。友人は男性の生活を支援していたが、2週間ほど前から体調がすぐれなくなったという。病院に行くように勧めたものの、男性は拒否。死亡する前日、男性は「胸の辺りが気持ち悪い」と言うようになり、薬局で薬を買ったが、発熱やせきなどの症状はみられなかった。
しかし、友人が家を訪れたところ、男性は風呂場で亡くなっていた。その後、保健所の検査で、男性が新型コロナウイルスに感染していたことが判明した。
孤独死の8割は、ゴミ屋敷の状態だったり、偏った食事などによる不摂生だったりと、いわゆるセルフネグレクト(自己放任)だ。医療の拒否も、セルフネグレクトの一つである。この男性もセルフネグレクトに陥っていた可能性もあり、もし友人の勧めどおりに病院に行っていたら、もしかしたら結果は違ったかもしれない。そう考えると、悔やまれてならない。
注目すべきは、この男性はかろうじて友人に助けを求めていたことだ。そして、献身的な友人が男性を気にかけてくれたこともあり、遺体は早期発見された。
しかし、今後懸念されるのは、コロナ禍によって人と人との接触が制限され、距離を取ることが求められる中で、より孤立し、命に関わる深刻な事態になっても、誰にも助けを求めることができずに、最悪の場合、その場で息絶えてしまう人たちがいることだ。
現在、孤独死現場では、「人とのつながりが切れた」結果として、遺体が長期間放置されてしまうという事例が相次いでいる。
コロナの影響で4カ月以上も遺体が放置
10年以上にわたって孤独死物件なども含めて原状回復工事を行っている武蔵シンクタンクの塩田卓也氏は、新型コロナの影響で長期間遺体が放置された物件の特殊清掃に取り組んでいる真っただ中だ。塩田氏は、つい先日、4カ月以上放置された物件の清掃を手掛けた。
「先日手掛けた物件は、コロナの影響で地方に住んでいるご遺族が来れなくて、ずっと放置されていました。死後4カ月ずっとそのままだったんです。さすがに、近隣からは『くせえよ、いい加減にしろよ』というクレームが殺到していました。遺体が長期間放置されると、柱が腐敗体液で痛んだりして、お部屋も重篤な状態になる。高額なリフォーム費用がかかったり、スケルトン(建物の躯体だけの状態)にまで戻さなければならなかったりするケースもあります」
コロナ禍において、塩田氏はここ数カ月で、遺体の発見が通常以上に遅れたケースが増えたと嘆く。
「最近は、1~2カ月見つからないケースがざらになってきましたね。同じ孤独死でも、これまで発見が早かった65歳以上でも、長期間わからずに放置されているケースが増えています。コロナ禍で、地域の見守りの力が弱体化していることが影響していると思います。ハエがいればまだ発見されやすいと思うんですけど、今の季節はまだハエが飛んでいないので、なおさら異変が起こっても、見つけづらいですね。コロナの影響で、今後ますます痛ましいご遺体の状態になってしまう孤独死は、残念ながら増え続けるでしょう」
特殊清掃業者としても、コロナ禍によって孤独死現場と向き合うのはそれ相応の準備と覚悟が必要になる。亡くなった人が陽性者だった可能性もあり、相応の感染症対策が要求されるからだ。特殊清掃業者である上東丙唆祥(じょうとう・ひさよし)氏は、先日、コロナ疑いの孤独死現場の清掃を行った。
「例えば部屋で亡くなり、死ぬ寸前に故人がテーブルに手をついて、時間を空けずそのままお部屋に入ると、われわれも感染リスクが上がります。だから、コロナを想定して入る必要があるのです。日本にコロナが上陸して、日々感染者数が上下していますが、コロナに感染しながらも誰にも知られずに亡くなる方もいらっしゃるはずです。そういう人は、よほどのことがないと表に出てこないと思っています」
孤独死の現場でコロナ陽性が隠されている?
上東氏が先日訪れた物件では、80代の女性が室内で死亡していた。寝室の窓ガラスは不自然に斜めに割れていて、レスキュー隊か警察官が突入した形跡が見て取れた。
作業を依頼した親族は「コロナではない」と言い張ったが、死因や死亡場所などを聞いても、話が二転三転して不自然な点が多く、いまだに死因がコロナだった疑いは晴れていないという。
私がいくつかの特殊清掃業者を取材した感触では、お部屋で亡くなった人が実はコロナ陽性者だったにもかかわらず、それをひた隠しにする心無い遺族や大家や管理会社も多く、「コロナの陽性隠し」も現場では横行している疑いが濃いという実感がある。そのような現状があることから、上東氏や塩田氏らは、どの現場も最初からコロナであることを前提で、清掃作業に臨んでいるという。
高齢者の生活支援サポートを行っている民間団体LMNの遠藤ひでき代表は、コロナ禍における高齢者の孤立の現状について、こう話す。
「コロナ禍が始まってからは、われわれのもとに独居の人から相談や依頼の電話が増えています。そのほとんどが、子供や親族がいても疎遠だったり、身内が高齢者の兄弟だけだったりで、孤立している方です。病院に行くことを拒んで、発熱していても自宅でかたくなに我慢する方もいらっしゃいました。コロナによって鬱が進んでしまった方もいます。
『買い物と病院に行けない』という悩みが最も多いです。私たち現役世代はネットスーパーなどを使えるけど、高齢者は無理なんです。さらに、人と会えないのは、孤独に追い打ちをかけるんです。そのため、話を聞いてあげたり、買い物に行ったり、マスクを持っていったりするなどの支援を行いました」
スマホなどITを駆使した見守りも登場
遠藤氏によると、子供がおらず、高齢者だけの兄弟の世帯も孤立のリスクが高い。しかし、そんな状況を少しでも打破しようと、ITを駆使した新たな見守りの形も生まれようとしている。
最近では、高齢者から「Zoomのやり方を教えて」と言われることも多くなってきたという。これまでは携帯電話を持っていなかったが、これを機会に新たに見守り用にスマートフォンを買う高齢者もいる。
「今後、コロナ禍において、見守りの形も変化していくでしょう。時間と場所を選ばない見守りがベストなんです。われわれは、LINEを高齢者の見守りにも採用しています。一度覚えてもらえれば、簡単ですから。リアルとITと、時々に応じて使い分けていくことが大切です」
これまでも、孤独死の増加で何かと話題になっていた社会的孤立の問題。今回のコロナ禍を機に、少しでも支援の輪を広げていくことが重要だと感じている。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 喫煙が新型コロナの重症化進... | トップ | 孤独死 男8割、女2割、現役世... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。