https://news.yahoo.co.jp/articles/05c4eec231cda15d07cdaf2269c831f352f74bf6
極めて硬い物質として知られるダイヤモンドより軽くて強い炭素結晶の存在を予言した、と筑波大学の研究グループが発表した。5つの炭素原子が環状に結合した構造を立体的に組み合わせたもので、「ペンタダイヤモンド」と名付けた。便利な材料として利用できる可能性があるという。
グループは幾何学的な考察に基づき、炭素原子が5つつながった五角形「五員環」の各辺同士を共有させると立体的な結合のつながりができ、結晶として存在できることを発見した。命名したペンタダイヤモンドの「ペンタ」はギリシャ語で「5つの」を意味する。
炭素原子だけからなる物質には、原子の結合の仕方によって、性質が異なる4種の同素体が広く知られている。ダイヤモンドのほか、鉛筆の芯などの黒鉛(グラファイト)、球状分子のフラーレン、黒鉛が筒状になったカーボンナノチューブだ。ペンタダイヤモンドが実際に合成できればここに加わり、化学の教科書が書き換わることになる。
次にペンタダイヤモンドの性質をシミュレーションで調べ、安定した物質の候補であることを明らかにした。また物質を全方位から圧する力に対してはダイヤモンドの8割とやや劣るものの、一方向に引っ張る力には1.3倍、斜めに歪める力には1.8倍と、さまざまな向きの力のかかり方に対して極めて強靱(きょうじん)であることが分かった。密度はダイヤモンドの6割ほどしかなく、中がスカスカで極めて軽い構造という。
実際に合成できればこうした性質を利用し、硬さが求められる材料や高性能の電極など、幅広い分野で利用できる可能性がある。岡田晋教授(物質科学)は「炭素の物質科学の新たな展開を促す成果になった。五角形だけで空間を埋め、結晶の形がとてもきれいなことに醍醐味を感じる」と述べている。
グループは岡田教授のほか筑波大学数理物質系の丸山実那助教らで構成。成果は米国の物理学誌「フィジカル・レビュー・レターズ」の電子版に6月30日付で掲載され、筑波大が7月1日に発表した。