https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170928-00010001-dime-bus_all
■外向性と内向性では脳が違う
分析心理学に“ユング派”をもたらしたスイスの心理学者、カール・グスタフ・ユングによって1920年代に人物の性格的特徴として定義されたのが「外向的人物」と「内向的人物」である。
外向的人物とは社会的交流が行動力の源泉となり、1人でいることが不安で不快に感じる人物である。一方、内向的人物は逆に1人でいることでエネルギーの再充電が可能になり、多くの人々と関わることは刺激が強すぎて困難を伴うと感じている。
もちろん多くの人は外向性と内向性のどちらの要素も併せ持っており、どちらの傾向がより強くあらわれているかという程度問題になるのだが、性格的特性という以上に脳の構造の違いからきているものであることも分かってきている。
ドーパミンの働きの違い
いわゆる報酬系に関わる脳内神経伝達物質であるドーパミンだが、このドーパミンが多く分泌される状況が外向的人物と内向的人物では異なる。分かりやすい例では、祭りやイベントなど人の多く集まる場所にいる時、外向的人物の脳内では盛んにドーパミンが分泌されているが、内向的人物の脳内では分泌されていないのだ。
アセチルコリンの働きの違い
神経伝達物質であるアセチルコリンもまた、喜びや快感を引き起こす報酬系の化学物質だが、このアセチルコリンの分泌は熟考や深い集中を可能にする。オフィスなどの半公共スペースで知的作業に取り組むために、内向的人物はドーパミンよりもこのアセチルコリンの働きに助けられている。
優位な神経系統の違い
我々の神経系統は交感神経系と副交感神経系の2つに分かれている。もちろんどちらも重要な自律神経系の働きだが、人によってどちらか一方の働きが優位にあるということだ。
外向的人物はドーパミンを分泌して身体に緊張と興奮を生じさせる交感神経系をよく使っており、内向的人物はアセチルコリンを分泌して脳の血行を良くし筋肉をリラックスさせる副交感神経系をより多く活用しているということだ。
内向的人物が長く考える理由
外向的人物が即断即決する一方で、内向的人物は長く考える傾向がある。実はこれは思考のプロセスで、前頭右島皮質、ブローカ野、左右の前頭葉、左海馬など脳の多くの部分を経由させて考えているからであるという。
したがって内向的人物は1つの体験からでも多くの刺激を受けていることになり、賑やかな場所では刺激が多すぎてしまうのである。
内向的人物の脳は前頭部の灰白質が多い
内向的人物の前頭前皮質の部分は広く厚い灰白質に覆われている。前頭前皮質は抽象的思考と意思決定に関係していると考えられているが、この部分の灰白質が多いことは抽象的思考をより深く長く続けられることになる。
外向的人物と内向的人物とではこうした脳の違いがあるために判断に要する時間や社交性に影響していることになる。内向的であれ外向的であれ性格を直すのはきわめて困難であることが確認されたわけだが、こうした機会に自身の性格特性について自覚を高めておくことも必要だろう。
■外向的であったほうが外国語習得に優れているのだが意外な統計も
外国語を効率良く習得するためには、その言葉を話す外国人の友だちを作ったりつきあったりすれば良いという話をよく聞くが、もしそうだとすれば外向的な性格の者のほうが外国語の習得に優れていることになりそうだ。しかし実際のところはどうなのか? 第二外国語として英語を学ぶ中国人留学生の英語力を分析した研究が最近報告されている。
マレーシアプトラ大学の研究チームがインド・VIT大学の中国人留学生145人(18~21歳)の英語の成績と性格特性の関連を探った研究をこの7月に社会科学系ジャーナル「Pertanika Journal of Social Sciences and Humanities」に発表している。
研究チームは中国人留学生の英語の成績の推移と、性格診断テストによる性格特性の関わりを分析した。性格特性においては47%が内向的であり、35%が外向的であり18%がそのどちらにも分類できないという分布であった。
収集してデータを分析した結果、外向的な性格の学生は総じて英語力が高く、特にスピーキングとリーディングの成績が良い傾向が判明した。外向的な性格のほうが外国語の習得に優れていることがおおむね証明されることになったのだが、1つだけ例外があった。内向的な性格の学生はリスニングの成績が高い傾向が浮き彫りになったのだ。ちなみにライティングの成績に関しては、性格特性による差はほとんど認められなかったということだ。
■“親切の出し惜しみ”をする必要はない
収集したデータを分析した結果、社交的な行為や親切な行為をすることで幸福感が高まり体が軽くなって疲労感が軽減していることが分かった。例えば親切心で荷物を持ってあげる行為は、単純にその荷物と同じ重さの物を持った時よりも疲労を感じないのだ。
しかし話には続きがある。このような社交的かつ親切心から行なった行為は3時間後の疲労に結びついていることも分かったのだ。つまり疲れは“後から来る”のである。そしてこの疲れは外向的な性格であっても等しくやってくるのだ。本当は社交的な人物ではないから人に親切にすると疲れるのではないかという疑惑は無用だということだ。
話にはさらに続きがあって、この“後から来た”疲れは、現在目の前にいる人物に社交的にふるまうことで幾分かは緩和されてくるというのである。
したがって1日単位の疲労をきちんと取る生活をしている限りにおいては、社交的なふるまいが心身に悪いわけではないことも示唆されることになった。
「社交的に行動することで疲れてしまうのは普通のことです。そして疲れるという事実とあなたの性格的特性には何の関係もありません。さらに言えば、社交的にふるまうことで幸福感が増し、疲労は軽く僅かな間だけなので少しくらい疲れていても親切な行為を制限する必要はないでしょう」と研究を主導したヘルシンキ大学のソイントゥ・レイカス氏は語る。
疲れを蓄積することがあってはならないが、ボランティアや慈善活動などを含めて本人の人助けの心が満たされる社交的な活動は、心配せずに何度でも行なってよいということにもなる。もちろん今回の研究はまだまだ初歩的な段階であり、今後の研究の深まりが求められているが、どうやら“親切の出し惜しみ”をする必要はなさそうだ。