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多発性硬化症の新薬「ケシンプタ」が保険適用 有効率が高く、月1回の外来投与で済む利点も(夕刊フジ) - Yahoo!ニュース
【ここまで進んだ最新治療】 指定難病の「多発性硬化症(MS)」。本来、細菌やウイルスなどの外敵から守るはずの免疫システムが、間違って自分...
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【ここまで進んだ最新治療】 指定難病の「多発性硬化症(MS)」。本来、細菌やウイルスなどの外敵から守るはずの免疫システムが、間違って自分の中枢神経(脳や脊髄、視神経など)を攻撃することで発症すると考えられている。 症状は、歩行障害、感覚障害、視覚障害、認知機能障害など、病変の部位によって多岐にわたる。MSの9割以上占める典型的なタイプは、急に症状が現れ(急性期)、しばらくすると症状が治まる寛解期を迎え、そして再発を繰り返す。 今年5月、MSの治療薬として「(商品名)ケシンプタ」という新しい注射薬が保険適用になった。どんなタイミングで使う薬なのか。国立精神・神経医療研究センター/神経研究所免疫研究部の山村隆特任研究部長が説明する。 「MSの治療は、急性期には『ステロイドパルス療法(点滴による大量投与)』や『血漿(しょう)浄化療法』を行います。そして寛解期には、再発を防ぎ進行を抑制する『疾患修飾(しゅうしょく)薬』を使用します。これまで自己注射薬が3剤、経口薬が3剤、点滴薬が1剤ありましたが、ケシンプタ(皮下注射薬)は8種類目の疾患修飾薬になります」 そしてケシンプタは、MSに対する国内初のB細胞を標的とした「抗体医薬」になる。体を異物の侵入から守るリンパ球(白血球の一部)には、T細胞、B細胞、NK細胞などがある。MSでは、T細胞が活性化して中枢神経が攻撃される。しかし、MSにおいてB細胞を除去すると、T細胞の活性化が抑えられることが分かっている。つまり、ケシンプタは血液やリンパ管に存在するB細胞を除去して、T細胞の活性化を抑える薬。他の臓器に分布するB細胞は除去しないという。 「従来の疾患修飾薬には課題として、それぞれ有効率が3~4割で使ってみないと効果があるか分からないということがありました。一方、ケシンプタは有効率が7割くらいと高く、従来の薬と比べてハズレが少ないので再発予防治療の第一選択薬になりうると思います。また、従来の薬は有効性と安全性が裏腹で、よく効く薬には副作用のリスクがありました」 一部の疾患修飾薬には重篤な副作用として、寝たきり状態になる「進行性多巣性白質脳症(PML)」を起こす可能性があることが知られている。ケシンプタは臨床での使用期間が短いのでまだはっきりしたことは分からないが、PMLのリスクは低いとみられている。 月1回の外来投与で済むのもケシンプタの大きな利点。従来の自己注射薬では毎日もしくは1日おきに注射する必要があったので、患者のQOL(生活の質)が大幅に向上することは間違いないだろう