https://style.nikkei.com/article/DGXMZO09936400V21C16A1000000?channel=DF180320167077&n_cid=LMNST008
「ごめんなさい/すみません」はとても便利で大切な表現ですが、つい使い過ぎてしまうもの。特にビジネスの会話にはいつでも隠されたパワーゲームがあります。あなたが高い地位にいることを誰もが知っている場合、へりくだって話をすれば、あなたは敬意を得られるでしょう。逆に低い地位にいる場合、過度にへりくだれば、人はあなたを無視し、決して尊敬の念は抱きません。へりくだって弱々しく見せるよりも、力強く積極的に見せる方がいいと思います。
Sorry. は弱さを示すことにもなりかねません。
▲ I'm sorry for being late.
正しい訳:遅れて申し訳ないです。
影の意味:皆様に迷惑をかけて、私は情けない人間です。
遅刻するのはよくないことですが、あなたが上司ではなく部下である場合、このフレーズはあなたを更に低く見せ、あなたが重要な人間ではないというイメージを抱かせます。
▲ I'm sorry I don't understand.
正しい訳:申し訳ありませんが、理解できません。
影の意味: あなたが言っていることを理解する能力がなくてごめんなさい。
I'm sorry, I don't understand. であれば「ごめんなさい。でも分かりません」の意味になります。しかし、区切りがないと、「あなたが言っている言葉を理解することがないことに対してお詫びします」に聞こえる可能性があります。
▲ I'm sorry for interrupting, but I have a question.
正しい訳:割り込んでごめんなさい。でも、質問があります。
影の意味:私みたいな人間が割り込んでごめんなさい。でも、質問があります。
上の人に対するフレーズであれば、卑屈に聞こえる可能性があります。
▲ Sorry, but I can't say yes.
正しい訳:ごめんなさい。でもイエスとは言えないの。
影の意味:本当にごめんなさい。でも興味がないの。
もしかしたら、興味があるのかも……そんな風に取られてしまう可能性があります。
ポジティブな「影の意味」に注目!―Sorry. をThanks. に置き換えてみましょう
◎Thanks. I hope I didn't miss anything.
正しい訳:何も聞き逃していないならいいんですが。
影の意味:この会議が重大であることはよく承知しています。
「少々遅刻したくらいで、そんなに謝らなくてもいいよ」と思っている人は案外多いものです。それより、「大事なことを逃したくない」ということは、この会議の大切さをしっかり理解していることを意味しています。Thanks. という前向きな言葉から始めるのはとても効果的です。
◎Thanks for explaining, but I'm still unclear.
正しい訳:説明してくれてありがとう。ただまだちょっとはっきりしなくて。
影の意味:一生懸命説明してくれて助かりますが、ちょっとはっきりしなくて。
結局は「まだはっきり分からない」ということであっても、Sorry. と言うよりThanks. で感謝の気持ちを表す方がお互いにとって心地よいものです。
◎Thanks, but one question.
正しい訳:ありがとう。でも、ひとつだけ質問があります。.
影の意味:とてもいい説明でしたが、ひとつだけ質問があります。
違和感のない言い方になります。
◎Thanks.(頭を横に振りながら軽く言う)
正しい訳: どうも。
影の意味: 一緒懸命やっているみたいですが、実は興味ないんで。
相手に不快な思いをさせずに、断ることができるフレーズ。重大なことにはなりません。
あなたが知らない本当の使い方―― Thanks.
Thanks to you, everything went well. おかげさまで、すべてうまくいきました。
*thanks to…: ~のおかげで ポジティブなことに使います。
Thanks to the strong yen, we're doing well. 円が強くて、うまくやっています。
*Thank to the strong yen: 円高のおかげで
Thank heavens it went well. よかった。うまくいきました(ホッとしました)。
*thank heaven: よかった、助かった、ありがたい ホッとしたときの気持ちを表します。
Thank God, it's Friday. 花金だ/やっと金曜日だ。
*「ようやく金曜日になってホッとした」すなわち「花金」のこと。TGIFと言ったりもします。
I have to thank you for all your help. 助けていただいて、あなたには感謝しなくてはなりませんね。
*I have to…は「~をせざるを得ない/しなくてはならない」ですが、この場合は、とても謙虚な気持ちを表します。「簡単に感謝することはしませんが、あなたに対する感謝の気持ちがとっても大きいので、これはもう感謝するしかありませんね」の意味になります。
You have my heartfelt thanks. あなたに心から感謝します。
*「あなたは私の心からの感謝を手に入れます」というニュアンス。
It went well, no thanks to you. あなたは全然協力してくれませんでしたけど、うまくいきました。
*これは「嫌味な」言い回しになります。
Special thanks to Sam for all his help. 彼の助力に対しまして深く感謝するものです。
*Special thanks to…「~に深く感謝する」の意味でスピーチなどによく使われますが、本の裏表紙でも、著者が協力者に感謝する意味でこの記述を使うことがよくあります。
He left without a word of thanks. 彼は感謝の言葉も残さず帰ってしまいました。
*word of thanks: 感謝の言葉
自分の心を伝えるためにSorry. を使うかThanks. を使うか。お客様をお待たせした場合、Sorry to have kept you waiting. 「お待たせして申し訳ありません」と謝罪の言葉を述べるか、それとも Thanks for waiting. 「お待ちいただきありがとうございます」と感謝の気持ちを述べるか……。Thanks. の方が明るく前向きなイメージがあります。つい口をついて出てしまうSorry. ですが、口癖にせず、Thanks. に慣れる方がいいのではないでしょうか。