歩く事も這う事も出来なかった先天的な障害を背負ってこの世に生を受けた五才の美絵が今、療護園の秋の大運動会に選手代表として選手宣誓を大きな声で無事責を果たした。感無量と言うか針で刺された様に胸全体がしびれて熱いものさえこみ上げる。之をおさえてジッと見上げる空に、先程ピエロに扮装した先生が運んで園児に手渡した赤青黄色とりどりの風船が北の方に舞い上がる、上空は北風が強いのか、再び南へ東へ送られて点々と消えてゆく。車イスや松葉杖にたよって歩く園児たちがマットの上を転がりながら障害物競走に挑んで這っていく、ゴールの赤いテープに向かって這っていく、先生の「A君頑張れ!Bちゃんがんばれ!」「もう少しだ!もう少しだ!」の声が折から吹きまくる風にアカシヤの黄色い葉と共に園児にふりかかる。園児たちは一人々完走しては、土にひざまづいたままで手作りのメダルを首にかけてもらって満足そうだ、美絵の首にもかけられた、その手作りの兎の顔に金紙で丸くほどこした紙メダルの輝き、本物の金メダルよりズッシリ重く暖かいものを私は感じとった。二才、三才で親元をはなれ療護園へ送り出す度に声が枯れるばかりに泣き別れの児、排便もままならず食事も一人でできぬ児を、これ程までに育んでくれた神術の教育と言うか、躾を先生方は、どこで、どうして培ったのでしょうか、とても肉親でも及ばぬ様な、力の限りの抱きしめた愛情の一つなのでしょうか、それと同時に、同じハンディを背負った園児が生活の中に、お友達の痛みを知り合い、命あるものを慈しみ合う心を、先生方から育みそだて培われたものでしょうか、今の学校教育に之が通じたら、どんなに素晴らしい社会に成るだろうと一人目をつむる。この様に園児の心の中に「生きる力」を育てて下さる先生方に感謝の言葉もみあたらず、私は心静かにそして白い雲が静かに碧い空を流れる下で幾度も幾度も合掌する療護園の運動会でした。 追記:私の父が綴ってくれた文です。障害児を育てるためには、家族の絆と団結が大切です。思えば美絵が生まれたとき2~3年の命ですと宣告され、あれから幾歳月、施設に預けることなく今も家族と一緒に生活して24年、家族の絆があったればこそと想います。
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