以前のブログ記事
岩手における高血圧、脳血管疾患(2012.3月調査) 2013/1/28
で触れた調査(岩手医科大の寺山靖夫氏のチームによるもの)の続報のようなものをみかけたので、忘れないようにメモしておこう。朝日新聞から、
震災1年境に脳卒中5倍増 岩手沿岸部、学会が改善要求
2013年4月1日18時8分
http://www.asahi.com/national/update/0401/TKY201304010114.html (非会員は一部のみ閲覧可)
【辻外記子】東日本大震災被災地の岩手県沿岸部で、震災直後から1年後までと、1年後から10カ月間を比べると、脳卒中患者が約5倍に増えていることが、岩手医科大学の調査でわかった。日本脳卒中学会は患者の増加を防ぐため、国に被災者の健康環境の改善を求める声明を出した。
上記記事の脳卒中のデータを表にしておくと、
期 間 | 脳卒中患者数 (人) | 月平均 (人) |
---|---|---|
2011年4月~2012年3月 | 12 | 0.9 |
2012年4月~2013年1月 の10カ月 |
52 | 5.2 |
出典) 岩手医科大調査(医師から聴取)。 2013/4/1朝日、http://www.asahi.com/national/update/0401/TKY201304010114.html |
また、この被災3市町では、従来の傾向と同じく今年1月の時点でも、過去に脳卒中になったことがなく、不眠などの問題を抱える人々については血圧の数値が悪化していたらしい。前述の記事から、
・・・過去に脳卒中になったことがなく、不眠などの問題を抱える3市町の約千人のデータを分析。13年1月の最高血圧(収縮期)は平均155で、最低血圧(拡張期)は平均93だった。いずれも12年4月と比べて悪化していた。
チェルノブイリの事例によれば、脳卒中も高血圧も増加したとされているけど、ただの偶然だろうか。
上記記事で言及されている日本脳卒中学会の声明は、ググッた限りだと、一昨年7月に出されたもののようだ。関連記事を朝日新聞から、声明を同学会のサイト (http://www.jsts.gr.jp/) から、
被災者に高血圧増加 岩手医大調査「栄養指導など必要」
2011年7月31日
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201107310195.html
東日本大震災の被災地で高血圧の人の割合が増えていることが岩手医科大などの調査でわかった。血圧が高いと脳卒中の発症が増えることから日本脳卒中学会は31日、注意を呼びかけ、政府に被災者の生活改善や脳卒中予防体制の整備などを求める声明を出した。
日本脳卒中学会声明 (2011/7/31付け)
http://www.jsts.gr.jp/img/seimei.pdf (pdfファイル)
・・・この様に、被災地における高血圧有病率と血圧レベルの上昇は、元来、脳卒中多発地方である被災地を抱える東北地方の脳卒中発症が近々圧倒的に増加する事を強く示唆しています。
[中略]
日本脳卒中学会は、政府に対し速やかな「被災者の生活・健康環境の改善」と「強力で有効な脳卒中予防体制の整備」を強く要望するものです。
同声明では、高血圧持ちの被災者が増加していることを背景として、脳卒中予防体制の整備を要望するものだったようだ。現状、確かに脳卒中が増加しているようなので、かなり先見の明があったという気がする。
仮にチェルノブイリの経験に詳しい人がいて、政府の推進する「食べて応援」の中止と高汚染地ならば避難の権利の付与を求めるという趣旨の声明なのであれば、かなり素晴らしいものといえるだろう。
この3市町の一つ、大槌町といって思い出すのは、次の過去のブログ記事だ。
〔メモ〕 被災地高齢者における歩行困難の増加 2012/10/30
同町では、仮設高齢者に心身不調が多かったらしい。いろいろ健康影響がみられるようなので「医学的実験の場」にならないよう、先ずは詳細な汚染地図を作成しチェルノブイリ基準で評価しておいた方がよいのではないだろうか。大槌町に関し、今日の朝日新聞から、
「大槌を社会的実験の場に」 支援の臂さんに聞く復興
2013年4月2日14時26分
http://www.asahi.com/national/update/0330/TKY201303300255.html (非会員は一部のみ閲覧可)