〔更新履歴:9/23追記〕
今回も前回記事(ココ)の続き。
(7) 易感染性 (つづき)
(F) マイコプラズマ肺炎
噂話のベースだと、個人的な体感に基づいて呼吸器系の感染症全体の増加を訴えるものが多いように感じられる。例えば、少し信ぴょう性のありそうなものだと、ツイッターから、
@kimuratomo
昨夏からの、マイコプラズマ肺炎を始めとした呼吸器感染症の増加、多くの臨床医が実感してることと思うが、まだその勢いが止まらない。平均100人/日の診療所で、週2~3人ペースで「ご新規」肺炎患者さん。これは尋常でない。被ばく問題に全く興味を示さなかった同僚も、さすがに首を捻り始めた。
10:32 AM - 24 Aug 12
従って、易感染性(すなわち免疫力の低下)を背景として、呼吸器系の感染症の全般的な増加という状況が先ずあって、その一部として既に述べた結核、風疹、インフルエンザなどの増加や、今回記事で扱う肺炎、特にマイコプラズマ肺炎の増加があるととらえることができるだろう。
とりあえず、肺炎についての一般的な解説については、gooヘルスケアから、
肺炎 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10P30500.html (リンクはココ)
マイコプラズマ肺炎については、一般的な解説だと、厚労省のサイトから、
マイコプラズマ肺炎に関するQ&A 平成23年12月
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou30/index.html (リンクはココ)
少しマニアックな内容にになると、国立感染症研究所のサイトから引用すると、
マイコプラズマ肺炎とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ma/mycoplasma-pneumonia/392-encyclopedia/503-mycoplasma-pneumoniae.html (リンクはココ)
疫 学
・・・本疾患は通常通年性にみられ、普遍的な疾患であると考えられている。欧米において行われた罹患率調査のデータからは、報告によって差はあるものの、一般に年間で感受性人口の5~10%が罹患すると報告されている。本邦での感染症発生動向調査からは、晩秋から早春にかけて報告数が多くなり、罹患年齢は幼児期、学童期、青年期が中心である。病原体分離例でみると7~8歳にピークがある。・・・
病原体
病原体は肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )であるが、これは自己増殖可能な最小の微生物で、生物学的には細菌に分類される。他の細菌と異なり細胞壁を持たないので、多形態性を示し、ペニシリン、セフェムなどの細胞壁合成阻害の抗菌薬には感受性がない。・・・
感染様式は感染患者からの飛沫感染と接触感染によるが、濃厚接触が必要と考えられており、地域での感染拡大の速度は遅い。感染の拡大は通常閉鎖集団などではみられるが、学校などでの短時間での暴露による感染拡大の可能性は高くなく、友人間での濃厚接触によるものが重要とされている。病原体は侵入後、粘膜表面の細胞外で増殖を開始し、上気道、あるいは気管、気管支、細気管支、肺胞などの下気道の粘膜上皮を破壊する。特に気管支、細気管支の繊毛上皮の破壊が顕著で、粘膜の剥離、潰瘍を形成する。気道粘液への病原体の排出は初発症状発現前2~8日でみられるとされ、臨床症状発現時にピークとなり、高いレベルが約 1 週間続いたあと、4~6週間以上排出が続く。
臨床症状
潜伏期は通常2~3週間で、初発症状は発熱、全身倦怠、頭痛などである。咳は初発症状出現後3~5日から始まることが多く、当初は乾性の咳であるが、経過に従い咳は徐々に強くなり、解熱後も長く続く(3~4週間)。特に年長児や青年では、後期には湿性の咳となることが多い。鼻炎症状は本疾患では典型的ではないが、幼児ではより頻繁に見られる。嗄声、耳痛、咽頭痛、消化器症状、そして胸痛は約25%で見られ、また、皮疹は報告により差があるが6~17%である。喘息様気管支炎を呈することは比較的多く、急性期には40%で喘鳴が認められ・・・
肺炎マイコプラズマは自己増殖可能な最小の微生物とされており、大きさで言えば、ヘルぺスウイルス(ウイルスなので自己増殖には宿主が必要)と同じ位である(前者は0.2×0.15μm程度、後者で0.1~0.2μm程度。ちなみに肺炎球菌の大きさは0.5~1.0μm)。肺炎マイコプラズマは顆粒球で処理するには大きさが小さすぎるので、リンパ球で対処していると思われるが、コルチゾールの過剰環境などのようにリンパ球の機能低下が起きると問題となる面が出てくるだろうと推測される。
ちなみに、マイコプラズマ肺炎は、米国では「歩く肺炎(walking pneumonia)」と呼ばれているらしい。横浜市のサイト「横浜市感染症情報センター」の記事から、
マイコプラズマ肺炎について
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/mycoplasma.html (リンクはココ)
アメリカ合衆国では、マイコプラズマ肺炎のことを「歩く肺炎(walking pneumonia)」と呼ぶことがあります。それは、肺炎の中では症状が軽く、入院を必要としない場合が多いからです。歩いて通院治療を受ける患者が多いのです。しかしながら、重症の肺炎となることもあります。
さて、マイコプラズマ肺炎の週間報告件数の推移については、国立感染症研究所のサイト「感染症発生動向調査週報(IDWR)」(2012年33週、8/19の報告まで。http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr-dl.html。リンクはココ)から、
図1 マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数の推移(2002~2012年)
図1をみれば昨年・今年における増加は明確であり、最新のIDWR第33週号の表紙には「マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い」とも記載されている。なお、最近の動向のまとめについては、少し古いけど、同研究所のサイトから、
IDWR 2012年第21号<注目すべき感染症> マイコプラズマ肺炎
2012年5月27日
http://www.nih.go.jp/niid/ja/mycoplasma-pneumonia-m/mycoplasma-pneumonia-idwrc/2263-idwrc-1221.html (リンクはココ)
マイコプラズマ肺炎の増加は、昨年9月頃から予想されていたと記憶している。例えば、某掲示板の緊急自然災害板から、
935 : 地震雷火事名無し(関東・甲信越) : 2011/09/09(金) 01:14:50.81 ID:U+A9OvsrO [1/1回発言]
もう3週間咳が治まらない
最新は風邪だったんだけど…
さすがに続き過ぎて病院に行くのがコワイ
990 : 地震雷火事名無し(四国) : 2011/09/09(金) 12:55:14.95 ID:hyeY6BiJO [1/1回発言]
>>935
それマイコプラズマでは?
994 : 地震雷火事名無し(東京都) : 2011/09/09(金) 13:02:42.65 ID:aHOApjmw0 [3/4回発言]
>>990
マイコプラズマ ttp://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/weeklygraph/18myco.html
今年は多い。宮城・岩手は、津波ヘドロの影響もありそうだけど、多分増えそう。
インフルエンザ ttp://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/weeklygraph/01flu.html
さて、どういう風に動くでしょうか。
[以下略]
東京在住の子供と高齢者の代表ともいえる方々も、一時期マイコプラズマ肺炎を患っていたらしい。これらの事例からは、仮に医療的に恵まれていても、気をつけるべきポイントを外してしまうと意味がない、という教訓が得られるのではなかろうか。
愛子さま、マイコプラズマ肺炎の可能性
2011年11月4日
http://www.asahi.com/national/update/1104/TKY201111040341.html (リンクはココ)
天皇陛下、マイコプラズマ感染か 軽度の気管支肺炎
2011年11月18日
http://www.asahi.com/national/update/1118/TKY201111180188.html (リンクはココ)
マイコプラズマ肺炎に関する第一の疑問は、今回の流行の原因は何か、ということであろう。上述の厚労省のQ&Aによると、「増加した理由はよくわかっていません」とされている。
しかし、個人的には、●の影響(ここではコルチゾール過剰を経由したもの)による易感染性(免疫力の低下)がその原因だろうと考えている。つまり、先ずは免疫力の低下により、喉の痛み・咳・風邪などが起こり易くなり、起きた場合には関係の粘膜組織で炎症がおこり、感染防御のバリアー機能(機械的な感染抵抗性)の低下にみまわれることとなる。そこに、「歩く肺炎」の病原菌がばら撒かれることになると、バリアー機能と免疫力との低下から感染が拡大していくこととなると推定される。
また、マイコプラズマ肺炎の今回の流行においては、どうも従来より難治例が増加しているようで、難治例の増加の原因は何か、というのが第二の疑問であろう。
その原因の一つとして言われるのが、抗生物質(マクロライド系)に耐性のある肺炎マイコプラズマによるのではないかという説がある。この説は、耐性菌増加原因説ともいえるだろう。この点について、昨年11月にNHKで報道されたようだけど、オリジナルの記事がみあたらないので、サイト「Ceron.jp」から引用すると、
抗生物質効かない肺炎が流行 NHKニュース
http://ceron.jp/url/www3.nhk.or.jp/news/html/20111116/k10013989031000.html (リンクはココ)
11月16日 6時11分 マイコプラズマという細菌による肺炎が、ことし、子どもを中心に流行していますが、これまで効くとされていた薬が効かない「耐性菌」が多いことが分かり、専門家は、症状が長引いて重症化するおそれがあるとして、注意を呼びかけています。 ・・・
この説については、従来から耐性菌の割合は漸増状態にあった模様であり、難治例の増加の全てをこれで説明するのは無理があるのではないだろうか(耐性菌の割合が漸増状態にあった点については、ブログ「内科開業医のお勉強日記」の記事「マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎」(2011年11月16日) http://intmed.exblog.jp/14015817/を参照(記事内の最初の図))。
難治例の増加の原因として別の説だと、耐性菌パワーアップ原因説があるようだ。ブログ「新小児科医のつぶやき」の主は、次の記事で、マイコプラズマ肺炎の難治例が体感的に増加している点を説明しつつ、難治例の増加の原因は、耐性菌増加原因説か、あるいは耐性菌パワーアップ原因説かのどちらかであろうと指摘している。
耐性マイコプラズマ菌 2011-11-07
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20111107 (リンクはココ)
本当に漠然たる印象で申し訳ないのですが、考えられる仮説は2つで、
1. 耐性菌自体がパワーアップしている
2. 耐性菌の増加率が非常に高くなり、その中の難治例が目立っている
耐性菌パワーアップ原因説についてみておくと、これは他の感染症(赤痢、病原性大腸菌など)でもみられる病原菌パワーアップ原因説と同根なのだけど、個人的には余り信じていない。
なぜなら、●の影響を考えても、病原菌が突然変異によってパワーアップする確率はそもそもかなり低く、パワーダウンする確率の方が大きいとみられるからだ。個人的には、新たにパワーアップした病原菌の存在が明確に確認されない限り、別の理由による説明の方がより蓋然性が高いと感じられる。
また、発病という現象はヒトの免疫力と病原菌の病原力とのバランスの問題なので、病原菌パワーアップ原因説というのは、免疫力低下原因説の裏返しともいえるのである。問題の原因として一旦病原菌パワーアップ原因説と免疫力低下原因説との両方を提示した上で、具体的理由をあげて病原菌パワーアップ原因説を採用する主張するのなら傾聴に値するのだが、何故か免疫力の低下には言及されないことが多いのではないだろうか。何か免疫力の低下を言い出せない事情があるということかもしれない。
仮に耐性菌増加原因説、耐性菌パワーアップ原因説も違うとすれば、では、何が難治例の増加の原因だろうか。個人的には、当然に免疫力低下が関与したものを考えているのだけど、せっかくなので、この点を少し掘り下げておこう。なぜ掘り下げるかというと、マイコプラズマ肺炎の難治例ではステロイド剤の投与が有効な場合もあるとされており、単純な免疫力低下原因説では余り適切ではないだろうからだ(つまり、ステロイド剤の投与で免疫抑制が進むはずで、単純な免疫力低下原因説だと病状が悪化する傾向の筈)。
掘下げのために先ずは、マイコプラズマ肺炎の発症メカニズムをみておこう。ラジオNikkeiの番組サイト「アボット感染症アワー」内の記事から、
マイコプラズマ肺炎重症化のメカニズム
2007年11月9日放送
http://radio848.rsjp.net/abbott/html/20071109.html (リンクはココ)
マイコプラズマ肺炎における感染病態と肺病変の形成
なぜ一部の症例で重症化するのでしょうか?その機序を理解し易くするため、まずマイコプラズマ感染による病態形成について説明します。マイコプラズマは増殖過程で産生される過酸化水素や活性酵素によって、直接的に呼吸器粘膜を障害することの他に、菌体表面に存在するリポプロテインが引き起こす免疫反応を主体とする間接的な細胞障害があります。したがって、マイコプラズマ感染症における肺炎の病像は必ずしもマイコプラズマによる直接侵襲ではなく、宿主の免疫応答がむしろ有害に作用した結果と考えられています。この観点からマイコプラズマ感染症における肺炎の病変形成は、様々なサイトカインが産生され炎症が惹起されている可能性が報告されています。
[中略]
マイコプラズマ肺炎の治療
以上をまとめると、マイコプラズマが気道感染を起こすと全例に多少なりとも免疫学的な反応を起こすが、とりわけツベルクリン反応が陰性化するような肺局所へのリンパ球の一過性の過剰集積、Th1の過剰反応とその結果としての全身性の一過性の細胞性免疫能の低下が起こるような例では急激な呼吸不全を来たす可能性があります。・・・
この記事によれば、肺炎マイコプラズマによる組織障害は、直接障害と間接障害があるとされている。前者は、同菌の増殖過程で産生される過酸化水素(つまり酸化ストレス)によるものとみられ、後者は、同菌が引き起こす免疫反応を主体とするものであるとされ、記事全体の趣旨を踏まえると、この免疫反応とは細胞性免疫の過剰反応のことであることがわかるであろう。
先ず、間接障害について考えてみよう。肺炎マイコプラズマに感染すると、感染した患者の体質によっては、細胞性免疫の過剰反応が出て重症化するようである。この点については、出現した細胞性免疫の過剰というのは、その患者の免疫系(自律系なので患者の意思で制御は不能)が決めたものであって、その患者の体内から肺炎マイコプラズマを退治するのに十分と判断された水準(強さ)と考えられる。ただ、ここで問題が生じるのは、患者の身体がその過剰な水準の負担に耐えられない場合であり、そのような際にマイコプラズマ肺炎の重症化がみられると推測される。
少し免疫の話のおさらいをしておこう。免疫系では、細胞性免疫(Th1細胞が媒介するもの。古いリンパ球による免疫)と液性免疫(Th2細胞が媒介するもの。進化したリンパ球による免疫)が互いに拮抗してバランスをとっているとされている。この点については、「酒井医院のホームページ」から、
Th1/Th2細胞のバランスの乱れ
http://homepage2.nifty.com/fwkx2334/link33.htm (リンクはココ)
乳幼児への安易な抗菌薬投与が、花粉症やアトピー性皮膚炎といったアレルギー疾患増加の一因と考えられている。・・・この免疫応答の基礎となっているのが、ヘルパーT(Th)1細胞とTh2細胞の拮抗作用、つまりTh1/Th2細胞バランスである。・・・通常、両細胞は相互にバランスを保ち免疫応答を制御しているが、何らかの原因でTh2細胞が過剰になるとカビやダニに対するIgE抗体が産生され、アレルギー疾患が生じる。一方,Th1細胞が過剰になると自己免疫疾患を引き起こすといわれる。
さてここで、コルチゾールの過剰などによって免疫抑制状態にある人の集団が肺炎マイコプラズマに感染し、細胞性免疫が過剰に反応する場合を想定してみよう。このような場合を模式的に書くと、以下のよようになるのではないだろうか。なお、横軸が免疫の強さを表していると仮定している。
├─────────→ Th1 〔免疫抑制がない通常の場合・感染前)
├─────────→ Th2 一定の範囲でバランスしている(健康な状態)
├───→ Th1 〔免疫抑制がある場合・感染前〕
├───→ Th2 免疫力が低下し通常より低い水準となるも、バランスしている。
├→ 過 剰 分 ←┤ 〔免疫抑制がない通常の場合・感染後〕
├───────────────────→ Th1 Th1細胞の過剰が生じ対応不能の人は重症化。
├─────────→ Th2
├→ 過 剰 分 ←┤ 〔免疫抑制がある場合・感染後〕
├───────────────────→ Th1 過剰の度合いが通常より増大し、
├───→ Th2 対応不能の人の割合が増加。
感染前は、免疫抑制状態にあることから、このような人々は細胞性免疫と液性免疫の両方が通常の水準より抑制されていことが多いであろう。言い換えれば、Th1細胞とTh2細胞の能力はいずれも低下しているが、その低い水準でTh1/Th2細胞の比率はバランスしているということである。
感染後に細胞性免疫の過剰反応が出たとすると、その過剰な反応で達すべき水準は、免疫抑制状態にない場合と同様に、体内から肺炎マイコプラズマを退治するのに十分と免疫系が判断した水準と考えるのが自然であろう。とすると、免疫抑制によって低い水準でTh1/Th2細胞の比率はバランスしていたことから、Th2細胞によるTh1細胞の抑制作用は、免疫抑制状態にない場合に比べると、小さくなっているものと考えられる。つまり、Th2細胞の機能が低下していた分だけ、Th1細胞の過剰に対するブレーキが弱くなっているものと考えられる。
このように、肺炎マイコプラズマの間接障害作用については、●の影響がある場合には免疫抑制状態になることから、細胞性免疫の過剰反応が起きた際には、この過剰に対抗して過剰による弊害を抑制させる作用が小さくなっていると考えられる。このようなメカニズムを通じて、もともと肺炎マイコプラズマが持っていた間接障害作用が大きくなっている可能性があるだろう(免疫抑制状態原因説)。
また、肺炎マイコプラズマの直接障害作用についても、●の影響がの場合には以前記事で触れたように酸化ストレスが亢進することになることから、これがバックグラウンドとして存在するならば、もともと肺炎マイコプラズマが持っていた直接障害作用を大きくしている可能性もあり得るだろう(酸化ストレス亢進原因説)。
以上をまとめると、肺炎マイコプラズマの間接障害作用と直接障害作用は、それぞれ免疫抑制状態と酸化ストレスの亢進を通じて、その効果が大きくなり、難治例の増加に寄与しているものと考えられる。
(G) クラミジア肺炎
マイコプラズマ肺炎の流行の背景にある事情については肺炎一般に言える部分もあり、繰り返すのも長くなるだけなので、クラミジア肺炎については、簡単にみるだけにしよう。
クラミジア肺炎の週間報告件数の推移については、国立感染症研究所のサイト「感染症発生動向調査週報(IDWR)」(2012年33週、8/19の報告まで。http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr-dl.html)から、
図2 クラミジア肺炎の定点当たり報告数の推移(2002~2012年)
一般的な解説については、、同研究所のサイトから、
クラミジア肺炎とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ka/chlamydia-pneumonia/392-encyclopedia/395-chlamydia-intro.html (リンクはココ)
本来、クラミジア肺炎とは、クラミジアによる肺炎という意味であり、肺炎クラミジア [C. pneumoniae]、トラコーマ・クラミジア [C. trachomatis]、オウム病クラミジアによる肺炎が含まれる。・・・感染症法では前2者をまとめてクラミジア肺炎(オウム病を除く)として分類している。
[中略]
疫 学
・C. trachomatis 肺炎
C. trachomatis 肺炎の発生は新生児、乳児期にほぼ限られる。感染母体からの新生児・乳児肺炎の発症は3~20%と高率であると報告されているが、本症は4 類感染症定点報告の疾患であり、正確な発生数の把握はされていない。成人では、性感染症として咽頭に感染することが知られているが、免疫低下時以外は肺炎 にいたることはきわめてまれである。
・C. pneumoniae 肺炎
C. pneumoniae による疾患としては急性上気道炎、急性副鼻腔炎、急性気管支炎、また慢性閉塞性肺疾患(COPD)を主とする慢性呼吸器疾患の感染増悪、および肺炎である。C. pneumoniaeは 市中肺炎の約1 割に関与するが、発症年齢がマイコプラズマ肺炎と異なり、小児のみならず、高齢者にも多い。性差ではやや男性が多い。また、他の細菌との重複感染も少なくない。家族内感染や集団内流行もしばしば見られ、集団発生は小児のみならず高齢者施設でも報告されている(IASR Vol.22 No.6 p10 (144 ))。感染既往を示すC. pneumoniae IgG 抗体保有率は小児期に急増し、成人で5~6 割と高い。この抗体には感染防御の機能はなく、抗体保有者も何度でも感染し発症し得る。
ついでに、gooヘルスケアからも、
クラミジア肺炎 http://health.goo.ne.jp/medical/search/101C2100.html (リンクはココ)
易感染症の項は、趣味に走るとなかなか終わらないな。 (つづきは、ココ)
・9/23追記:
上記以外の肺炎についても、増加している気配があるのだろう。ツイッターから、
@FRCSRJP
2011年死因順位:1.悪性新生物 2.心疾患 3.肺炎 4.脳血管疾患 5.不慮の事故 6.老衰 7.自殺 8.腎不全 9.慢性閉塞性肺疾患 10.肝疾患....肺炎が脳血管疾患を抜いて3位
9:13 PM - 7 Sep 12