goo blog サービス終了のお知らせ 

ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

2023年8月にテーマ・タイトルを変更(旧は外国語関連)
2015年4月にテーマ・タイトルを変更(旧は健康関連)

はじめに・・・

 gooのサービス終了に伴い移行を迫られているところ、推奨移行先の一つの "Hatena Blog" に本年8月の間に移行中です。移行先のアドレスは:
https://site2508epsilon.hatenablog.com/ となります。(2025年8月記)

 動物の生活様式の本質は遺伝因子に刻まれており、ヒトにおいても難しいことをせずにそのような生活様式を取り入れてみることが健康への第一歩と思います。なぜなら、生物の進化を眺めると、生息環境内で成り立ち得るある種の特徴を持った生態系があり、そこに依存する姿・形が想定する生活様式に倣うことが最も簡単と考えるからです(姿・形は生物側による長期間にわたる最適な変化の蓄積の賜物。例:チンパンジーはツル植物に覆われた密林での果実食に適応し、そのために手及び口の形や移動方法もこれに対応)。
 動物であれば何を食べて生きていくのかということが課題で、生活様式を変えようとすると、野生動物の場合は形質形態を変えるべく遺伝因子の変化を伴います。ヒトはいつの頃からか文化を持つようになり道具・技術を進展させてきましたが、これまでの生活様式を反映した遺伝子による自動制御を活用しないのは勿体ないと思います。(2024年9月記)


 外国語テーマも長く続かずなので、従来の健康ブログに戻してみようかと思いまして・・・ 備忘録的に残しておくと旧タイトルは「タイ語、漢字を使って覚えるの?」でした。(2023.8月記)


 従来の健康ブログ時に記事を書いていて、何故か、そろそろ外国語でも勉強した方がより良いかなーと思いつきまして、以来ちょこちょこと続けてきましたが、なんとなく、ある事を覚えると別の事を忘れてしまうモードに入ってしまったようで、知識量が停滞しつつあるような感じになりました。
 そこで、本ブログを外国語学習ブログに変更して、自分の備忘録的にまとめておこうかなと思いまして・・・。
 しかしながら、少し飽きたのか内容を増やしすぎたのか、書くのに手間がかかるようになり、時間がとれない時は、別ブログ「単語帳の素材?」にてライトな記事を書くことにしました。(この別ブログも徐々にライトでなくなり、記事を500本ほど書いたところで滞り中・・・)
 なお、健康ブログ時代の記事は、コチラの 入り口 からどうぞ。(2015.4月記)
 最近の健康系記事はカテゴリー「タイ語以外(健康2019)」からどうぞ。

過食応答系の機能とインクレチン高値(GLP-1)が及ぼす悪影響(1)

2025年05月17日 | 思いつき

〔更新履歴:2025-5-24字句修正〕

 

 時候の御挨拶。

 昨年晩秋から中華ドラマ鑑賞のマイブームが来ていてさぼっていたような気がする。その甲斐もあって中国語字幕のみ(北京語を解さない人も多々いるので字幕はほぼ有り)でも見る気が起き、ドラマの荒筋は適当に妄想込みで掴めそうな域に達しているのかもしれない。



 さて、前にも書いた気がするけど、健康法を極めようとすると、現代では必然的に薬の副作用に詳しくならざるを得ないだろう。以前は「現代医療の闇」がよく見えていなかった時期が個人的には長くあって、その頃は今より若くそもそも病気との縁は薄かったので、

   仮に病気になっても医者にかかればほとんどの場合は良くなるのだろう

と思っていたのだが・・・。最近では影が現代医療の光の部分を急速な勢いで覆い隠しているようで、実際にはその真逆というか、医療漬けの世界に引き摺りこまれて現代医療関係者の養分にされてしまう可能性がかなりあるだろう。(注1)

 例えば糖尿病についてみれば、その治療法の第一選択は食事療法であり、大半の人は厳しめの糖質制限食が簡便でありでそれで十分だろうと思われる。ところが、闇が広がってしまった現代医療では、養分(患者からの医療費支出)が消滅してしまいそうな新たな治療法(20年以上前に唱えられた内容で誤りがなさそうなものでも何故かまだ得体のしれない「新しいもの」扱いが多いのでは?)に対しては様々な妨害が繰り広げられているように見受けられる。


注1)いわゆる「インフォームド・コンセント」(十分な情報を得た上での同意)が導入され時に、もっとよく考えて気づくべきだったと今では思うところ。1997年に国内導入されたこの制度は結局、健康を害する薬を積極的に販売したとしても製薬業界が裁判で責任が問われるのを難しくする仕掛けとみてよいだろう(担当医や治療ガイドラインを作った学会幹部を盾(いわゆる専門家を「盾」に使い捨てる腕力があり、"Medical personnel shield", MPS とでも呼べそう)にしてその後ろに控えているため)。同制度とは全然関係ないけど、スタチン製剤の国内販売はうろ覚えだと1989年からで、7-8年経てば副作用の知見が十分蓄積したということかもしれない。


 いずれにせよ、西洋薬を服用する際は、薬の副作用に詳しくなった上で、自分の体質を踏まえつつ適正な時間軸で(断薬という出口を常に意識して)使う必要があるだろう。また、薬の副作用に詳しくなる個人的なメリットとしては、副作用をまとめて眺めると代謝の本質が垣間見えてくる場合があるような気がしているところ。

 


 ということで今回は、インクレチン上昇薬(とあるホルモンを上昇させる薬剤で今では糖尿病治療薬(2010年頃から)、肥満治療薬(闇の広がりが末期的なのか、2024年2月頃から)の模様。普段は「インクレチン関連薬」と呼ばれることが多いが、この記事ではこう呼んでおこう)についてみていこう。

 インクレチンは消化管ホルモンの一種であり、歴史的経緯から。小腸から分泌されるもので膵臓(ランゲルハンス島β細胞)からのインスリン分泌の促進作用のある物質がこう呼ばれているらしい。
 インクレチンは二種類あるとされているが、薬に関連するものはその一方(グルカゴン様ペプチド-1。Glucagon-like peptide-1、GLP-1)が多く、主なインクレチン上昇薬については、二つに大別できるだろう:

- インクレチン受容体を動作させるもので体内で分解され難いもの(「インクレチン・アナログ」など)を体内に投与し実質的にインクレチン高値を生成するもの(GLP-1受容体作動薬。GLP-1RA (Glucagon-like peptide-1 receptor agonist))

- 内因性のインクレチンの分解(インクレチン分解酵素(DPP-4)による作用)を阻害してインクレチン高値を生成するもの(DPP-4阻害薬、DPP-4i (Dipeptidyl peptidase-4 inhibitor))


 これら二種類の薬のうち、後者は体内で作られたインクレチンを蓄積させるものなのでありかなと思うところだが、前者の場合、血中濃度がかなり高くなるようなので大丈夫なのかと疑問がないではない。

 実際、健康な人の場合、インクレチン(GLP-1)の濃度は食前で1~5 pmol/L(ピコ・モル/リットル)程度、食後で10~20 pmol/L程度とされている。服薬するとだいたい常時15,000~25,000 pmol/L前後にあがるらしい(GLP-1受容体作動薬である「セマグルチド」(商品名:オゼンピック、週1回0.5mg)の場合。体内でほとんど分解されないようで尿や便排泄が8割の模様)。
 生活習慣病薬(ここでは糖尿病薬)の服用期間は長期化し易いことが多いが、生理的な濃度(ピコ・レベル)の3桁上のもの(薬理的な濃度はナノ・レベル)を常態として本当に問題がないのであろうか。
 また、インクレチン(GLP-1)というホルモンの受容体(及び同ホルモンの分解酵素)は、肝臓を除く代謝臓器のほとんどに発現しているらしく、他のホルモン一般と同様に、多様な機能があると考えるべきではないだろうか。

 ということで、ホルモンというのは本来生体内で極微量で作用するはずだが(本来は小腸から分泌された内因性インクレチンは数分以内に分解されて半減する仕様である)、この薬の場合、薬効を出すため人為的にインクレチン超高値が維持されているようであり、かなり筋悪の薬とみた方がよいのではなかろうか、という問題意識からいろいろ眺めてみよう。その切り口としては、健康な人の普通の生活の中でインクレチン高値を最も招き易い行為は食べ過ぎ(過食)ではないかとと思われるので、これを使ってみよう。

 あとインクレチンに関し詳しくは、例えば、腸内細菌学会のサイトの次の記事でも参照してほしい:


インクレチン(incretin)
https://bifidus-fund.jp/keyword/kw021.shtml 引用#01

インクレチン(incretin)は、「膵臓のランゲルハンス島β細胞を刺激して、血糖値依存的にインスリン分泌を促進する消化管ホルモン」として定義され、具体的にはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide:GIP)とグルカゴン様ペプチド-1 (glucagon-like peptide-1:GLP-1)の2つを指す。GIP は上部消化管に存在する腸内分泌細胞 (enteroendocrine cells)の一種である K 細胞が含有し、GLP-1 は下部消化管の腸内分泌細胞である L 細胞が含有する。インクレチンの血中濃度は食後数分~15分以内に上昇し、食後の血糖上昇によるβ細胞からのインスリン分泌を促進する。このようないわゆる「インクレチン効果(incretin effect)」によって、インクレチンは食後の血糖恒常性(glucose homeostasis)や耐糖能 (glucose tolerance)の維持に貢献していると考えられている。そして分泌されたインクレチンは、消化管、腎臓、前立腺などの上皮細胞や内皮細胞、リンパ球などの細胞膜に発現し、可溶性タンパク質として血中にも存在しているジペプチジルペプチダーゼ-4(dipeptidyl peptidase-4:DPP-4)によって速やかに不活性化される。このため、インクレチンの血中半減期は数分とごく短いことが知られている。・・・<

 


 動物であれば一般に、摂食状況に応じて生体の恒常性を維持するシステムが発達していると思われる。重要性が高いのは、飢餓時において生体恒常性を維持するシステム(以下「飢餓応答系」と呼ぶ)だと思われるが、温帯に生活する哺乳類であれば、実りの秋の時期に起き易い、食べ過ぎ(過食)の際に生体恒常性を維持するシステム(以下「過食応答系」と呼ぶ)もあるだろうと思われる。

 このように考えた過食応答系がどういう生体機能の集まりになっているか、ということは今まで考えたこともなかったけども、少し面白そうでもある。適当に想像すると、過食による過負荷を軽減するための高負荷応答機能、過食による栄養過多に対応するするため高栄養応答機能、過食に関与する神経応答機能という三つが少なくともありそうである。

 過食応答系についての分析は消化器官の専門家でもないし普通ならこれ以上難しいところだが、インクレチン上昇薬(GLP-1受容体作動薬)の正及び負の作用(薬効と副作用)について各種の情報を詳しく眺めてみると(注2)、インクレチン(GLP-1)自体は多機能の消化管ホルモンであり、服薬により著しい高濃度になった際には過食応答系の機能が常時稼働し易くなっているとみられる(「薬剤性インクレチン高値による過食応答系機能常働仮説」)。つまり、現実には過食は起きてないものの同ホルモン的には過食的な状況にあり、いわば過食を仮装したために過食応答系の機能が実際に稼働する状況になっているとみられる(注3)。


注2)情報収集では、清水氏のブログ「ドクターシミズのひとりごと」にインクレチン上昇薬の副作用に関する記事が多数あり(同ブログ内を用語「GLP-1」での検索が便利)、有用だった。関係記事は後述参照。

注3)インクレチン(GLP-1)については「過食仮装ホルモン」「過食応答系機能起動ホルモン」とでも呼びたいところだが、より正確を期すれば「服薬により物理的に過食はないものの腸管ホルモン的に過食を仮装して過食応答系機能を稼働させるホルモン」という趣旨である。

 


 以上の考え方を基礎にしてなんとなく全体像の整合性をとってみると、過食応答系に属する生体機能は次のように分類できる感じであろう:


<過食応答系に属する生体機能の分類について>

1- 高負荷応答機能(本来的には摂取量の過多に起因):主に次の3種類
 --A. 消化運動遷延応答機能
 --B. 高分泌応答機能(胃酸・胆汁・インスリンを含む膵液)
 --C. 高損傷応答機能(損傷が増えそうな部位に対し予め対処)

2- 高栄養応答機能(としての消費亢進)

3- 神経応答機能



 上記の分類についてかなり長くなるけど補足説明をしていこう。

 先ず、インクレチン上昇薬(GLP-1受容体作動薬)の薬効(正の作用)としては主に、それぞれ過食応答系の機能の一つに当たるが、インスリンの分泌増強機能(上記1-Bに属するもの)と食欲の抑制機能(上記3に属するもの)があるのであろう。これらの機能については、現在これらを前面に出して喧伝することにより、糖尿病薬や肥満治療薬として販売されているようであるから、ここでの更なる説明は不要であろう。各種のネット記事があるので、適当に参照してほしい。

 他方、負の側面と評価される過食応答系の機能については、以下の通りかなり数が多くなっている:

過食応答系 1. 高負荷応答機能
1-A. 消化運動遷延応答機能

 消化運動の遷延が過食応答系の機能に属すると考える理由については、過食による胃腸の負担を軽減するため、胃腸の運動をゆっくりにして負荷を時間的に分散させるという仕様になっていると思われるからである。具体的には、胃から摂取物を腸へ送るのを(それが高じると胃不全麻痺に至る得る)、あるいは腸の蠕動を遷延させるのであろう。(注4)

注4)肥満治療薬として販売を射程に入れていたからなのか、いつの頃からか消化運動遷延応答自体がインクレチン上昇薬の薬効の一部となっていることもあるので、念のため。

 

 実際、インクレチン上昇薬(GLP-1受容体作動薬)の服薬の副作用(以下文脈上明らかなときは単に「服薬の副作用」という)として、胃腸障害がいろいと列挙されているところである(悪心、嘔吐、腹部不快感、消化不良、腹部不快感、腹部膨満、上腹部痛、腹痛、おくび、胃排出遅延など)。参考までに主な薬の添付文書を紹介しておこう。京都大学系の金久ラボラトリーズが運営する医療関係データベース "Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes (KEGG)"の記事を二つ:


医療用医薬品 : ビクトーザ (ビクトーザ皮下注18mg)  引用#02
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058715
引用者注>一般名リラグルチド関連。インクレチン上昇薬(GLP-1受容体作動薬)における国内初のもので2010年販売開始、


医療用医薬品 : オゼンピック (オゼンピック皮下注2mg)   引用#03
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00070262
引用者注>一般名セマグルチド関連。


1-B. 高分泌応答機能

 高分泌による応答が過食応答系の機能に属すると考える理由については、過食をすると消化分泌液の量の不足によるトラブルが予想されることから、消化液の高分泌させるということだろう。従って、過食応答系の稼働時は、多めに分泌される仕様となっていると思われるからである。
 しかし、現実には過食は仮装であり、実際の食物摂取量に比して分泌液が多くなりがちになるのではないだろうか。服薬の副作用とされる胃腸障害の一部はこのようなことから起きているのかもしれない(例えば、下痢、便秘、消化不良など)

 臓器別に見ていくと、胃酸が高分泌になると、食道炎が起こり易くなる傾向があるだろう。実際、服薬の副作用として逆流性食道炎が挙げられている。
 また、胆汁や膵液も過食となけば当然に高分泌になると思われるが、その結果、胆嚢や膵臓が高稼働となり疲弊しやすくなるのだろう(生理的な濃度の千倍で高稼働を要請される訳だから・・・)。この結果として、膵炎、胆嚢炎(その関連の胆石症、胆管炎などを含む)、及びこれら関連のがんが増加するものとみられる。

 実際の服薬の副作用について、清水氏のブログ「ドクターシミズのひとりごと」の記事から四つ:

 

糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その3 急性膵炎 -2023年7月18日
https://promea2014.com/blog/?p=23284  引用#04
>他にも、18~64歳の2型糖尿病で急性膵炎の入院症例1,269人と、年齢カテゴリー、性別、糖尿病合併症などが一致した対照1,269人を比較した研究があります。
 様々な交絡因子とメトホルミンの使用を調整した後、30日以内のGLP-1ベースの治療の現在の使用は急性膵炎を発症する可能性が2.24倍、GLP-1の30日~2年未満の最近の使用では急性膵炎の可能性が2.01倍でした。<


糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その4 がん -2023年7月21日
https://promea2014.com/blog/?p=23321  引用#05
>上の図は有害事象について報告されたFDAのデータベースによる、GLP-1受容体作動薬のエクセナチド、DPP-4阻害薬のシタグリプチンとコントロールとを比較したものです。その3で述べた膵炎の報告、次にすい臓がんの報告、甲状腺がんの報告、そして他の全てのがんの報告です。
 膵炎の報告の可能性は、コントロール群と比較して、エクセナチド で10.68倍、シタグリプチンで6.74倍でした
 すい臓がんが発生する可能性は、コントロールと比較しても2倍以上で、他の治療法と比較してもエクセナチドで2.9倍高く、シタグリプチンでは2.7倍高くなりました
 甲状腺がんの報告された発生率は、エクセナチドでは4.73倍増加しました
 やはり、GLP-1薬はすい臓がんのリスク増加がありそうです。それに加えて甲状腺がんも高くなるかもしれません。さらにDPP-4阻害薬も膵炎およびすい臓がんの注意が必要です。<
引用者注>甲状腺がんのリスク増加に関しては後述2-Aを参照。

 

糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その6 胃腸有害事象 -2023年10月11日
https://promea2014.com/blog/?p=24052  引用#06
>2つの主要なGLP-1受容体作動薬であるセマグルチドまたはリラグルチドを減量目的に処方された(リラグルチド4144人、セマグルチド613人)人とGLP-1と関係のない減量薬ブプロピオン・ナルトレキソン(こちらも怪しそうな薬ですが)との比較です。(図は原文より)
 上の図は減量薬ブプロピオン・ナルトレキソンを1として様々な胃腸有害事象のリスクを示しています。その結果は膵炎がなんと9.09倍、腸閉塞が4.22倍、胃不全麻痺が3.67倍でした。<
引用者注>腸閉塞の増加に関しては後述1-C-aも参照。

 

1-C. 高損傷応答機能

 高損傷への応答が過食応答系の機能に属すると考える理由は、過食をすると摂取物やその分解物の流量が多くなる管腔臓器があり、このような臓器では上皮細胞などの管壁(表層組織)の摩耗が増加することから、過食の程度に応じ管壁を修復強化する仕様になっていると思われるからである。
 具体的にトラブルが顕著になっているのは、腸管と血管であろう。これは、現実に過食があれば管壁の修復強化分が過食による摩耗増分とバランスすることにより恒常性が維持されるのだろうが、問題の薬は腸管ホルモン的に過食を仮装するのみで現実に摩耗増分は発生しないというミスマッチが生じることになり、これがトラブルの元凶になっているとみられる(管壁の過形成などとして発現)。それぞれ説明していこう:

1-C-a. 腸管壁の修復強化

 過食をする場合は、摂取して消化管を通る食物量が増加することから、腸管粘膜の摩耗が増えるものと予想される。過食応答系においては、過食の程度に応じ粘膜の修復を強化することになるのであろう。現実に過食があれば管壁の増分が摩耗増分とバランスすることにより恒常性が維持されるのだろうが、問題の薬はホルモン的に過食を仮装するものであり、摩耗増分は発生しないというミスマッチが生じることになる。
 実際、服薬の副作用をみると。腸閉塞のリスクが増加するようであり、原因の一つとして腸管壁の肥厚の可能性が疑われているようである(もしかすると、前述1-Aの消化運動遷延応答の方が寄与度が大きいのかもしれない)。前出の清水氏のブログの記事から:


糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その1 -2023年7月10日
https://promea2014.com/blog/?p=23242  引用#07
>糖尿病患者では腸閉塞のリスク増加などの長期的な有害事象が報告されています。インクレチン関連薬であるGLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、他の血糖コントロール薬を投与されている患者よりも4.5 倍高くなっています。(図はこの論文より)
 GLP‐1作動薬で3倍、DPP-4阻害薬は8.66倍、腸閉塞のリスク増加と大きく関連しているようで、さらに重篤な腸閉塞の報告は他の糖尿病の薬よりもGLP‐1作動薬で7.4倍、DPP-4阻害薬は12.67倍でした。<
動物実験上では上の図のように、GLP-1薬によって、ネズミさんの小腸の長さと重量が増加しました。GLP-1薬は腸の長さと絨毛の高さを継続的に増加させる可能性があるため、小腸は緩んだバネのように弾力性がなくなり、線維化する可能性があります。そして深刻な便秘、腸閉塞を起こすリスクがあるのです。<

 


1-C-b. 血管壁の修復強化(血管の再生増)

 最近の報告によれば、問題の薬の服用により血清中の血管再生前駆細胞(vascular regenerative (VR) progenitor cell)が増加するらしい。米国政府系の医療文系サイト "PubMed"の記事から:


GLP-1RA therapy increases circulating vascular regenerative cell content in people living with type 2 diabetes -2024年
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38874618/  引用#08

Glucagon-like peptide-1 receptor agonists (GLP-1RAs) and sodium-glucose cotransporter-2 (SGLT2) inhibitors are guideline-recommended therapies for the management of type 2 diabetes (T2D), atherosclerotic cardiovascular disease, heart failure, and chronic kidney disease. We previously observed in people living with T2D and coronary artery disease that circulating vascular regenerative (VR) progenitor cell content increased following 6-mo use of the SGLT2 inhibitor empagliflozin. In this post hoc subanalysis of the ORIGINS-RCE CardioLink-13 study (ClinicalTrials.gov Identifier NCT05253521), we analyzed the circulating VR progenitor cell content of 92 individuals living with T2D, among whom 20 were on a GLP-1RA, 42 were on an SGLT2 inhibitor but not a GLP-1RA, and 30 were on neither of these vascular protective therapies. In the GLP-1RA group, the mean absolute count of circulating VR progenitor cells defined by high aldehyde dehydrogenase (ALDH) activity (ALDHhiSSClow) and VR progenitor cells further characterized by surface expression of the proangiogenic marker CD133 (ALDHhiSSClowCD133+) was higher than the group receiving neither a GLP-1RA nor an SGLT2 inhibitor (P = 0.02) and comparable with that in the SGLT2 inhibitor group (P = 0.25). The absolute count of proinflammatory, granulocyte-restricted precursor cells (ALDHhiSSChi) was significantly lower in the GLP-1RA group compared with the group on neither therapy (P = 0.031). Augmented vessel repair initiated by VR cells with previously documented proangiogenic activity, alongside a reduction in systemic, granulocyte precursor-driven inflammation, may represent novel mechanisms responsible for the cardiovascular-metabolic benefits of GLP-1RA therapy. ...<


 この点を過食応答系常働仮説的にみれば、次のようになるだろうか:
過食をする場合は、吸収されて血管を流れる栄養素が増加することから(栄養素の中では特に糖質は細胞障害性が高い)、血管壁の摩耗も増えるものと予想される。過食の程度に応じ血管壁を修復強化することになるのであろう。現実に過食があれば修復増分が摩耗増分とバランスすることにより恒常性が維持されるのだろうが、問題の薬はホルモン的に過食を仮装するものであり、摩耗分増は発生しないというミスマッチが生じることになる。

 上記の報告では、服薬による血管再生前駆細胞の増加は、あたかも良いもののようにとらえようとしている。確かに、大血管には良いことが起こるかもしれない(動脈硬化が軽快し心血管系のトラブルが減る?)。しかし、大血管にも細小血管にも良いことしか起きるのであれば、ヒト体内で血清中の血管再生前駆細胞の濃度を引き上げれば引き上げるほど良いということになると思われるが、現実にはそのようなことにはなっていないだろう。
 実際の服薬の副作用の例は以下の通りであり、これらを眺めると、血管再生前駆細胞の増加は細小血管における血流障害を惹起するだろうと考えるのが適切だと思うが、読者の方はどう思われるだろうか?(注4)。清水氏のブログの記事から四つ:


糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その5 腎機能低下 -2023年8月1日
https://promea2014.com/blog/?p=23322  引用#09
>上の図のようにGLP-1受容体作動薬注射後に急速に腎機能が低下し、クレアチニンは3.5に増加、eGFRは11まで低下していました。尿タンパクは3+、UPCRは4.9g/gでした。GLP-1受容体作動薬が中止された後も、腎機能の回復やタンパク尿の減少は見られません。不可逆的な腎機能低下が起きたと考えられます。もちろん長期的にはわかりませんが。<
引用者注)腎機能の低下が短期的なもの主体であれば、後述2-Bで触れる実質的なたんぱく質不足の寄与度の方が大きいかもしれない。


糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その8 ED -2024年5月28日
https://promea2014.com/blog/?p=26521  引用#10
>上の図は患者背景と、セマグルチド処方後のED診断および/またはホスホジエステラーゼ5阻害剤(PDE5i)の処方を受けた割合、テストステロン欠乏症の発症の割合を示しています。
 対照群と比較すると、セマグルチドを処方された男性はEDとなる可能性が10倍になっていました。同様に、テストステロン欠乏症と診断されるリスクも2.25倍になっていました。<

 

糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その9 糖尿病網膜症 -2024年12月20日
https://promea2014.com/blog/?p=28678  引用#11
>上の図は糖尿病網膜症の合併症(硝子体出血、失明、または硝子体内薬剤や光凝固による治療を必要とする状態) の発生率です。セマグルチド群の方が1.76倍も糖尿病網膜症の合併症リスクが高くなりました。個別に見ると、網膜光凝固術を必要とした患者数は、セマグルチド群で38人(2.3%)であったのに対し、プラセボ群では20人(1.2%)、硝子体内薬剤の使用を必要としたのはセマグルチド群16人(1.0%)、プラセボ群13人(0.8%)、硝子体出血を起こしたのはセマグルチド群16人(1.0%)に対してプラセボ群7人(0.4%)でした。そして、糖尿病関連失明を発症したは数は少ないですが、セマグルチド群5人(0.3%)プラセボ群1人(0.1%)で、数にしてセマグルチド群では5倍でした。<

 

糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その10 失明 -2024年12月26日
https://promea2014.com/blog/?p=28675  引用#12
>上の図のAは2型糖尿病の人での、NAIONなしで経過した割合です。オレンジの線がGLP-1薬のセマグルチドを処方された2 型糖尿病患者、青っぽい線がGLP-1薬ではない抗糖尿病薬を処方された患者です。GLP-1薬以外ではほとんどNAIONは起きていませんが、セマグルチド処方された人では12か月の間に徐々にNAIONが発症し、その後は横ばいになっています。GLP-1薬以外の糖尿病薬と比較すると、セマグルチドによるNAIONが発症リスクは4.28倍です
 Bの図は、過体重および肥満の人の場合です。Aと同様に、オレンジの線がGLP-1薬のセマグルチドを処方された群、青っぽい線がGLP-1薬ではない抗肥満薬を処方された群です。GLP-1薬ではない抗肥満薬と比較して、減量目的で処方されたセマグルチドによるNAIONが発症リスクは7.64倍です。体重は減っても、失明してしまっては大変ですね。<
引用者注)NAION(Non-Arteritic Ischemic Optic Neuropathy):非動脈炎性前部虚血性視神経症

 

注4)山勘だと、インクレチン上昇薬(GLP-1受容体作動薬)の服用による
   - 血管再生前駆細胞の増加
   - インスリン分泌の増加(及びこれに伴うインスリン様成長因子の増加)
という組み合わせが効くため、細小血管でトラブルが起こるのではないだろうか。
 また、上記報告(引用#08)によれば、SGLT2阻害薬(sodium-glucose cotransporter-2 inhibitor。SGLT2i)でも血管再生前駆細胞が同程度に増加するとされている。しかし、この場合の増加について、同薬の効果(血中ぶどう糖を常時尿に排泄していくこと)によるインスリン基礎分泌の低下に伴う代償的なものとみられ、血管恒常性の維持に資する応答と解される。
 ついでに、同じ報告の引用末にある "a reduction in systemic, granulocyte precursor-driven inflammation" に関しては後述(注5参照)。

 

 

過食応答系 2. 高栄養応答機能

 次に高栄養に対する応答(としての消費亢進)が過食応答系の機能に属すると考える理由は、過食をすると消化吸収される栄養素の流量が増えることから、栄養素を節約する機構は働かずにふんだんに使用し、実際に消費した分を次の食事(高栄養と想定されている)において補充する仕様が最も簡便と考えられるからである。
 この項目には、A. 代謝全般の亢進と、B. 栄養素(特にアミノ酸)の消費亢進との二つありそうと考えている。それぞれ説明してみよう:


2-A. 代謝全般の亢進

 先ず代謝全般の亢進について。常に過食している場合は、栄養素を節約するという機構や飢餓応答系は発動する余地もないだろうし、体型を維持するためには消費を亢進させた方がよいということになりそうである。そうすると、甲状腺ホルモンが通常より高値で分泌されることとなり(消化液の高分泌応答に類似様)、甲状腺の疲弊が進むのではないかと考えられる。

 実際、服薬により甲状腺がんが増加するという報告もある。清水氏のブログの記事から二つ:


糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その7 甲状腺がん -2023年11月27日
https://promea2014.com/blog/?p=24045  引用#13
>その結果、GLP-1受容体作動薬を使用している人は、現在その薬を使用していない人に比べてすべての甲状腺がんのリスクが1.46倍高く、GLP-1受容体作動薬を1~3年間使用した人では1.58倍、3年以上使用した人では1.36倍リスクが高くなりました。甲状腺髄様がんは1.78倍のリスク増加でした。
 DPP-4阻害薬を3年以上使用した人は、非使用者と比較して甲状腺がんのリスク増加が1.19倍になりました。<


2型糖尿病患者に対する皮下注射用GLP-1受容体作動薬の危険性 -2025年4月8日
https://promea2014.com/blog/?p=28779  引用#14
>まずは、インスリンとの比較です。
 12か月未満のGLP-1薬の使用では、急性腎炎1.62倍、甲状腺がん1.61倍、皮膚毛包嚢胞2.03倍の発生リスクの上昇が観察されました。 12か月以上使用したグループでは、急性腎炎リスクはさらに上昇し2.24倍、甲状腺機能障害1.57倍、ニキビ4.29倍の発生リスクも有意に増加しました
 そして特に、インスリン群と比較してGLP-1薬の12か月を超えての長期使用のみ、すい炎2.12倍、白血病6.88倍のリスク増加になりました。
 次にメトホルミンとの比較を見てみましょう。
 メトホルミンのみ群と比較した場合、12か月未満のGLP-1薬の使用で、すい炎2.01倍、、急性腎炎3.20倍、腎不全3.73倍、甲状腺がん2.25倍、甲状腺機能障害1.27倍、皮膚毛包嚢胞1.50倍の発生リスクの上昇でした。 GLP-1薬の12か月以上使用した場合、すい炎3.48倍、急性腎炎4.11倍、腎不全3.16倍、甲状腺がん3.43倍、甲状腺機能障害1.65倍、ニキビ5.32倍、ほとんどの副作用リスクが短期間の使用よりも高くなりました。<
引用者注>一部の薬では(例えば、リラグルチド)、高脂血症が副作用に入っており、血中で脂質がだぶつき易いようで皮膚毛包嚢胞(アテローマ)やニキビが出易いのではないだろうか。

 

2-B. 栄養素(特にアミノ酸)の消費亢進

 次に、アミノ酸の消費亢進について。食後のインクレチン高値(GLP-1)は、体質によっては高たんぱく食と解される可能性があるように見受けられる。ヒトには飢餓時にはタンパク質の消費を節約する機能が備わっているが、インクレチン高値で高たんぱく食と解した応答が誘導される人では、アミノ酸の利用節約が起きにくいだろう。日本スポーツ栄養学会のサイトの記事から:


高タンパク食で食欲抑制ホルモンの分泌が亢進するが、反応の仕方は性別により異なる -2022年01月29日
https://sndj-web.jp/news/001660.php  引用#15

>一方、食後のGLP-1濃度は、高タンパク食条件では4.21 ± 5.19pMであるのに対して、対象条件では2.59 ± 4.18pMであり、高タンパク食条件のほうが有意に高値だった(p<0.001)。


 現実的に過食でなくとも高たんぱく食であれば、毎日節約することなくふんだんにアミノ酸を消費したとしても、食事毎に十分なアミノ酸が補充されるので長期に見て特段の問題が起きるとは考えにくい(タンパク質多めでの厳しめの糖質制限はこのようは場合だろう)。しかし、低タンパク質あるいは通常タンパク質の食事の場合には、日々補充されないアミノ酸分が塵のように積もっていき長期的には問題になると思われる。
 また、糖質食については、インスリン追加分泌が多くなり越冬準備食的な役割があると考えられるところ、皮下脂肪をなるべく蓄える方向性のため貯蔵している脂肪を温存する傾向が出てアミノ酸消費圧が高まるとも考えられる。

 実際、服薬による副作用をみると、エネルギー基質(糖質・脂肪酸・糖原性アミノ酸)間の代謝バランスが乱される結果として実質的にタンパク質不足が起きていると解釈できる事例があると思われる(減量分の4割が筋肉・骨の減少、心筋の減少らしい)。前出の清水氏のブログの記事より三つ:


GLP-1受容体作動薬によるサルコペニアと骨粗鬆症 -2025年5月1日
https://promea2014.com/blog/?p=29482  引用#16
>実際に数値を見てみると、セマグルチド投与により、総脂肪量は8.36kg減少しましたが、局所内臓脂肪量はたった0.36kgしか減少していません。0.36kgなんて誤差範囲です。不健康な脂肪である内臓脂肪がほとんど減らないというのは問題でしょう。
 そして、除脂肪体重、つまり筋肉(および骨)の減少量は5.26㎏にもなりました。ひどい減り方です。体重減少の約40%が筋肉(および骨)の減少なのです。<
>さらに、プラセボ群と比較して、セマグルチド群ではベースラインから52週目までに腰椎および股関節全体の骨密度が減少しました。大腿骨頸部の骨密度の変化については群間差はありませんでした。
 つまり、GLP-1薬を使うと、筋肉だけでなく骨粗しょう症も促進してしまう可能性が高いのです。<
引用者注)骨は、タンパク質(コラーゲン)を鉄筋、ヒドロキシアパタイト(水酸燐灰石。リンと石灰の化合物の一種)をセメントとする構造物であり、タンパク質不足だと骨形成に支障が出る模様。


GLP-1受容体作動薬は心臓の筋肉を減少させるかもしれない 恐ろしい… -2025年5月8日
https://promea2014.com/blog/?p=30489  引用#17
セマグルチドを投与された痩せたマウスでは体重に明らかな変化は見られなかったものの、セマグルチド投与は3週間で骨格筋量を8.2%減少させました。肥満マウスへのセマグルチド投与と同様に、セマグルチド投与を受けた痩せマウスでは収縮機能(EF)に変化は見られませんでしたが、左心室重量および心臓全体重量の減少、ならびに心筋細胞面積の減少が見られました
 つまり、セマグルチドによる心臓サイズの縮小は体重減少とは無関係に起こることが示唆されます。<


糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その12 脱毛 -2025年5月16日
https://promea2014.com/blog/?p=30640  引用#18
>今回の研究では、GLP-1受容体作動薬のセマグルチドと日本では未承認の別の肥満薬Contrave(ブプロピオン・ナルトレキソン)使用患者の脱毛の発生率を比較しました。(プレプリントなので注意が必要です。)
 患者1,600万例から無作為に抽出した、セマグルチド使用者1,926人とブプロピオン・ナルトレキソン使用者1,348人を比較しています。
 セマグルチド使用者とブプロピオン・ナルトレキソン使用者の脱毛症発症率は、それぞれ26.5/1,000人年と11.8/1,000人年でした。セマグルチド使用している全患者および男性の脱毛症のリスクは有意ではありませんでしたが、女性だけだと2.08倍でした
 他国の添付文書上に掲載されているセマグルチドの臨床試験結果でも、下の図のようにプラセボと比較して2倍以上の脱毛の有害事象が認められています。(図はここより)<
引用者注)髪の毛は、化学構成的には7割がケラチンというタンパク質で、他を含めると計8-9割がタンパク質で構成されるているらしい。このため、脱毛は実質的なタンパク質不足とも考えることができるだろう。また、髪の毛の栄養不足の原因は主として血流障害とされているようなので、あるいは上記1-C-bで触れた細小血管(この場合は頭皮)での血流障害の方が寄与度がより大きい又は同程度であるのかもしれない。

 


過食応答系 3. 神経応答機能

 最後に神経応答については、中枢神経系と自律神経系に関連するものの二つがあるのではなかろうか。先ず中枢神経系については、前述の薬効の部分で述べた通り中枢神経系を介した食欲抑制があるだろう。インクレチン高濃度(ホルモン的に過食を仮装可能な水準に達している)に脳が反応し(過食していると勘違いし)食欲を抑制する応答であり、過食応答系の機能における最も自然な反応といえるだろう。

 次に、自律神経系への影響について。

 自律神経系はストレスとの連動性が高いことが知られている。安保 徹氏の言説によれば、この連動性に白血球の活動も関連するとされている。同氏の白血球の自律神経支配の法則によれば、ストレスが交感神経を優位にしこれが顆粒球の活動を活発にし、リラックスが副交感神経を優位にしこれがリンパ球の活動を活発にするというものである。
 食事は一般的に副交感神経を優位にする行為であろう(多分、細菌より小さなサイズの異物を多数取り除く必要があり、リンパ球の活性化が必要なのであろう)。精神的ストレスを抱える者(従って交感神経優位)が暴飲暴食でストレス解消を図るというのがよくみられるが、これは過度に交感神経が優位になったことの反動から副交感神経を優位にする行動に出てバランスをとるものと解することもできるだろう。なお、前出の安保氏の法則については、国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) の科学文献サイト「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)の記事から:


からだを守る白血球の自律神経支配 -2002年  引用#19
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/52/5/52_5_486/_article/-char/ja/

487頁左欄>・・・多分、体を守る白血球は、我々の血液を循環したり、あるいはリンパ節とか脾臓、免疫臓器に行きますけど、そこでも、やはり停滞 と循環を繰り返していますから、よもやですね、こういう動き回る細胞までも自律神経支配に入っているかとはすごく考えにくかったと思います。
 ところが、アドレナリンとかノルアドレナリンとかの交感神経刺激物質は、独特の血中濃度を保っていて、そういう浮遊循環細胞さえも刺激出来ます。副交感神経の刺激物質であるアセチルコリンの方は、すぐアセチルコリンエステラーゼで分解されます。血中濃度を保持は出来ないですが、神経末端が消化管に入れば、そこのすぐそばにリンパ球が取り巻いていて、やっぱりそういう形で直接リンパ球は副交感神経でも刺激されて完全に自律神経支配に入っていた訳です。すると、どういうことがわかるかっていうと、私達の体を守る防御系が完全にですね、自律神経の支配下に入って、増えたり減ったりを繰り返している。これら殆どの反応は、私達がより良く体を守る為の、合目的反応が殆どだと思います 。まず8割はですね。その神経支配によって、いかに効率よく我々の体を防御するかってことで、分布が変わっていると思います。
 ところが、私達の自律神経ってのは、いつもバランス良く揺れている訳じゃなくて、たまにはどっちかに偏り過ぎることもあります 。 ・・・<

 

〔記事の字数制限に引っかかったので、つづきを別記事へ分割。リンクはココ

コメント

過食応答系の機能とインクレチン高値(GLP-1)が及ぼす悪影響(2)

2025年05月17日 | 思いつき

〔字数制限のため分割、記事(1)からの続き、リンクはココ

 

 服薬の副作用を眺めると、服薬により過食応答系が稼働する結果として、自律神経系が副交感神経優位に偏向しているという問題が起こっているように見受けられる(注5)。精神的ストレスを抱えている者であればそれによってバランスがとれるかもしれないが、もともと気分が落ち込んでいる者、抑うつの気がある者、うつ病の者などにとっては(これらの者の多くは食欲が減退しているのではなかろう)、副交感神経優位偏向が追加されることにより更に気分が落ち込んでしまうというトラブルが考えられるだろう。(注6)

 実際、そのようなことが起きているのではと疑いたくなる事例がみかけられる。前出の清水氏のブログから記事を三つ:


糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その2 自殺リスク -2023年7月12日
https://promea2014.com/blog/?p=23253  引用#20
>そして、米国食品医薬品局有害事象報告システム(FAERS)によると、2018年以降にGLP-1受容体作動薬のセマグルチドを服用している患者またはその医療提供者から自殺念慮に関する報告が少なくとも60件あり、2010年以降、GLP-1受容体作動薬のリラグルチドの使用者またはその医療提供者から自殺念慮に関する報告が少なくとも70 件あったそうです
 自殺の発生率は低いかもしれませんが、十分配慮すべき副作用です。痩せるために何も考えず使用するのは危険かもしれません。<


GLP-1受容体作動薬の自殺念慮のリスク -2024年8月26日
https://promea2014.com/blog/?p=27468  引用#21
セマグルチドおよびリラグルチドのいずれの場合も、62.5%の症例で薬剤中止後に自殺念慮が解消しました
 セマグルチドに関連する自殺念慮についてのみRORが1.45倍でした。セマグルチド治療開始から自殺念慮発現までの平均期間は 80.39日でした。
 抗うつ薬との併用例を含む分析では、セマグルチド関連の自殺念慮の報告がすべての薬剤と比較して不均衡でRORは4.45倍、ベンゾジアゼピンとの併用例を含む分析では、セマグルチド関連の自殺念慮の報告がすべての薬剤と比較して不均衡でRORは4.07倍でした。<
引用者注)ROR(Report odds ratio):報告オッズ比。


糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その11 うつ病、不安、自殺行動のリスク -2025年1月22日
***https://promea2014.com/blog/?p=29178  引用#22
>上の表のように、6か月から5年まで、GLP-1受容体作動薬使用者の様々な精神疾患などが一貫して増加しました。GLP-1受容体作動薬を使用していない人と比較すると、全ての精神疾患のリスクは1.98倍、うつ病は2.95倍、不安は2.08倍、自殺念慮または自殺企図は2.06倍です。<


注5)注4の終りで触れたように、問題の薬の服用により全身性の抗炎症作用が出るとする報告(前出の引用#08)もある("a reduction in systemic, granulocyte precursor-driven inflammation" の部分。「顆粒球前駆細胞の誘導する全身性の炎症の減少」の趣旨)。これについては、副交感神経優位への偏向が起きているとすれば、前出の白血球の自律神経支配の法則からすれば、顆粒球の活動低下としう方向性に一致したものと推測され、違和感がなく当たり前のことではないかと思料される。

注6)上記1-Bや2-Aにおいて、膵臓、胆嚢、甲状腺などの臓器の高稼働によるトラブルの可能性を指摘したけど、自律神経の働きを踏まえると、高稼働をするための準備状態が長期に遷延することが問題なのかもしれない。なぜならば、精神的ストレスで交感神経が優位なりすぎて長期間遷延すると心身のトラブルが起こるとされているが、これはもともと高強度の運動(いわゆる「闘争・逃避反応」)の準備状態が遷延することが関係しており、実際に高強度の運動は発生していなくてもトラブルが起こるからである。 

 ついでに、EDの記事(引用#10)においてテストステロンの不足現象が増加するとされたいたが、テストステロンの分泌は交感神経優位と密接な関係にあるとされているので(運動すると交感神経優位モードでテストステロンも増える)、副交感神経優位偏向となれば、その分泌が減るのはある意味自然と言えるだろう。

 

 いろいろ書き散らしてきたけど、適当にまとめに入ろう。

 

 ヒトの身体は複雑系と思われるので、本来は過食応答系の機能も多因子制御と推測される(注7)。仮に実際に過食をしたとしても、このような制御因子が多数あるとすれば、一つの制御因子しか反応しない事象の場合には過食応答系が誤って稼働しないよう他の制御因子が負のフィードバックを働かせることになっているはすである。


注7)このような制御因子のうち最も重要なものは、山勘だと、胃腸にかかる生体力学的な作用(機械的な力)を計測している因子と思われる。しかし、生体力学的な作用の強度を測定するのはかなり難しく、定性的に存在の有無を議論できても、定量的に(より科学的に)議論するのは現在も近い将来でも難しいだろう。何故なら、力学的な作用を測定する実験系を組み上げたとしても、その系が生成する雑音なのか元々の生体力学的な作用なのか区別がつかないと思われるからだ。各種の生体力学的な機能・作用の謎については、現在の科学技術の水準では解明はほとんど期待できないだろう。


 インクレチン上昇薬(GLP-1受容体作動薬)の場合、薬理的な濃度は、上述のとおり生理的な濃度の千倍近くになっているとみられる。過食応答系の起動を抑制する負のフィードバック機構があったとしても、3桁も濃度が違う状況に遭遇したとなればインクレチン超高値に引きずられ起動してしまうのではないかと思われる。1桁程度の違いでは様々な負のフィードバックが効いて何も起こらないからこそ、3桁の違いが必要なのかもしれない。

 また、インクレチン上昇薬(GLP-1受容体作動薬)は、一種のホルモン補充療法と言えるだろう。非必須ホルモンの補充療法では想定外の副作用が出ることも多い印象を受ける(例:更年期障害に対する女性ホルモン補充療法、経口避妊法(いわゆるピル))。これらは多分、次の事情に起因するのではないだろうか:

- 個人の体質は様々であるため関係ホルモン分泌は常時不随意系により微調整されているが、体外から投与(注射又は服薬)となるとそのような微調整は期待できない、
- 多数の人に薬理作用の発現を確保するために(血行動態を高濃度にするため)用量が多くなりがちである。


 最後に、最近読んでいる本にホルモンの役割の一般論をたまたま見かけたので引用しておこう。坪井 貴司氏著「そうだったのか!ヒトの生物学」(2018年)から:

「・・・ホルモンは、極微量でも細胞に効果があります。私たちの体を水いっぱいに張った50メートルプールに例えると、そこにスプーン1杯のホルモンがあるだけでホルモンは十分に作用します。また女性ホルモンの量は、生涯でスプーン1杯程度ともいわれています。そのため、ホルモンの分泌量は非常に厳密に調節されていて、不要になったホルモンは速やかに分解され体内から取り除かれます。また、体外や体内の環境変化に応じて適切なホルモンが分泌され、それらのホルモンによって体内環境を一定の状態に保ちます。このようなしくみのことを生体恒常性(ホメオスタシス)と呼びます。・・・」(156頁)


 薬でホルモン超高値を人為的に形成して生体恒常性を乱した上で、その乱れの一部を薬効と称して囃し立て薬販売に繋げ、残りの乱れは過小評価して問題を矮小化する。現代医療の闇が際限なく広がる中、現実にはそういうことが起きているのかもしれない。このような状況では、より良いサービス提供に徹して患者第一主義であっても、考える葦にならないとそのような目的は果たせないのかもしれない。つまり:

   良心的であろとしても、マニュアルくんで考えない葦では闇を見抜けない


脚注:なお、このブログ記事の内容は、以前某所の記事に投稿したコメントをベースに修正・加筆したもの(同記事を見つけるのに結構時間をとられたので(タイトルに「GLP-1」が入っていなかったでござる)、備忘録として清水氏のブログの元の記事を):

SGLT-2阻害薬に伴う急性膵炎と死亡リスク -2023年8月10日
https://promea2014.com/blog/?p=23257  引用#23

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