グレムリンは、本書で扱っている悪魔の中で、最も特殊な存在である。
何故なら、この悪魔が人々に知られる様になったのは、二十世紀に入ってからであり、まだ百年にも満たない、短い歴史しか持っていない悪魔だからだ。
最初にこの悪魔についての報告をもたらしたのは、第二次世界大戦直前、インド北西部の爆撃基地で任務に就いていたイギリス空軍の兵士とされている。頻発する飛行機の故障や、空での事故の原因を、悪魔のせいであるとしたのだ。
以後、「陰鬱な」と云う意味と、童話作家の名前に引っ掛けた「グリム」と、ビール飲みを意味する「フレムリン」の合成語として、グレムリンと名づけられた。
この空の悪魔は、世界中の飛行機乗りたちに信じられる様になって行った。考えてみれば、新しい文明の機器が発表される度に、それに纏わる悪魔も登場して来るのが、人間と悪魔の歴史の常である。汽車が発明された時は、汽車の悪魔が登場している。
飛行機の悪魔がいても、少しもおかしくはないのである。
「天使」と「悪魔」がよくわかる本