『果報者ササル:ある田舎医者の物語』
ジョン・バージャー/ジャン・モア、2016、『果報者ササル:ある田舎医者の物語』、みすず書房
今週火曜日に車のタイヤの履き替えの時間つぶしに立ち寄ったショッピングセンターの書店で見つけた本書。とてもビンゴな書籍であった。
イギリスのグロスターシャー州の田舎医者のジョン・ササルに関するドキュメンタリー(と言っていいのかどうか)。患者の痛みや死、様々な苦しみに立会い、理解し、自分で解決しようとするササルは、個人的な関係もまた知り尽くしているような関係の中で医療行為をしている田舎医者だ。その彼に密着取材して彼の医療行為を取材したのが本書。様々な診療科の医者のバイブルとも思える重みを持っているし、文化人類学としても非常に重みのあるフィールドワークの記録と言っていいだろう。個々人と医者の関係というだけでなく、彼の患者たちのおかれた、歴史的、社会的、文化的な背景についても触れる本書を読み解くことは誠に重要だと思う。本書の中で触れられている、ササルの患者たちの言葉の少なさ(自己表現力の少なさ)は、この地域の社会文化的な変遷や現代社会の抱えるグローバリゼーションの問題とも通底する問題を提起する。自己を表現することのできた言語(表現)を喪失し、新たに自己を表現することの出来る言語(表現)を未だ獲得できていない人びとと、現場の医師として人びとの人生や暮らしに関わろうとするのササル。現代の医療だけではなく、様々なセクションにとって重要な問題の投げかけが行われていると思われるのだが。
今週火曜日に車のタイヤの履き替えの時間つぶしに立ち寄ったショッピングセンターの書店で見つけた本書。とてもビンゴな書籍であった。
イギリスのグロスターシャー州の田舎医者のジョン・ササルに関するドキュメンタリー(と言っていいのかどうか)。患者の痛みや死、様々な苦しみに立会い、理解し、自分で解決しようとするササルは、個人的な関係もまた知り尽くしているような関係の中で医療行為をしている田舎医者だ。その彼に密着取材して彼の医療行為を取材したのが本書。様々な診療科の医者のバイブルとも思える重みを持っているし、文化人類学としても非常に重みのあるフィールドワークの記録と言っていいだろう。個々人と医者の関係というだけでなく、彼の患者たちのおかれた、歴史的、社会的、文化的な背景についても触れる本書を読み解くことは誠に重要だと思う。本書の中で触れられている、ササルの患者たちの言葉の少なさ(自己表現力の少なさ)は、この地域の社会文化的な変遷や現代社会の抱えるグローバリゼーションの問題とも通底する問題を提起する。自己を表現することのできた言語(表現)を喪失し、新たに自己を表現することの出来る言語(表現)を未だ獲得できていない人びとと、現場の医師として人びとの人生や暮らしに関わろうとするのササル。現代の医療だけではなく、様々なセクションにとって重要な問題の投げかけが行われていると思われるのだが。
果報者ササル――ある田舎医者の物語 | |
クジョン・バージャー/ジャン・モア | |
みすず書房 |