★彼岸花しおれて土のなお黒く 藤森 順
★むらがりていよいよ寂しひがんばな 日野草城
★天上も戦の有りや天蓋花 酒田晴彦
もう先週のことであったが、彼岸花がしおれていた。しおれると赤い彼岸花も黒ずんでくる。まるで流れた血が黒く変色するようだ。そして花弁は消えゆくように細くなる。
だから曼殊沙華は淋しい花である。
畔でも土手でも、赤く、白く、それなりの大きさで咲く。これが薄い紫であったり、もっと小さな花であれば、多分可憐な花として愛でられたかもしれない。あるいは目立たず、ひとしれず咲いて人知れず消えてゆくものとして人口に膾炙することも無かったろう。
下手に目立ち、そして彼岸という時期に必ず咲くものとして見つけられてしまった花である。強いられた咲き方、強いられて認知のされ方は花自体に責任はないが、人間が勝手に思い入れをしてしまっている。それも不吉な意味合いの花として。