伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

金融法務入門[第2版]

2023-05-09 23:05:41 | 実用書・ビジネス書
 銀行等の金融機関の新入職員向けに、金融機関で取り扱う預金、融資、債権回収等に関する法令の基本的な知識を説明した本。
 銀行取引等に関する基本的な説明なので、さほど目新しいことはなく、大方穏当な内容ですが、「Ⅴ 電子記録債権」というのは、私は知りませんでした。この本では、電子記録債権として電子債権記録機関の記録原簿に記載された場合の効果が説明されているだけで、現実にはどのような場合に用いられているのか等の説明がまったくなかったのですが、調べてみると2008年12月に始まった制度で現在のところ、2026年までに廃止される予定の約束手形の代わりに主として企業間取引で用いられているようです。電子記録債権とされると債権譲渡に債務者への通知が不要(債務者が知らないうちに譲渡されうる)の上に、債務者は原則として譲受人には元債権者に対して主張できる事由が主張できない(人的抗弁の切断)という制度で、一般消費者が当事者でも利用の制限は特に定められていないようです。もし一般消費者が、よくわからないままに業者に求められて申請して登録されると、突然知らない業者から自分が債権者だとして請求を受け、元々の債権者に対して主張できた支払拒否事由(購入した物が不良品だったなど)も主張できなくなって予想外の困った事態に追い込まれるという危険があるように思えます。いつのまにか、経済界の都合でこういう制度が作られ運営されていて、大丈夫なのかと思いました。そういうところ、この本の趣旨目的とは違うでしょうけど、勉強になりました。
 あと、銀行取引約定書って、公正取引委員会から銀行の横並びを助長するおそれがあると指摘されて2000年4月に「ひな型」が廃止されて、以後各銀行が個別に作成している(73ページ)んですね。弁護士報酬基準(やはり公正取引委員会から競争制限だと言われて廃止)と同じなんだ。銀行によってちょっと言い回しが違うところがあるとか、妙に癖のある規定があったりするのはそういうことだったのかと、納得しました。そして、その結果、民法の定型約款にはあたらない(5ページ)ということです。裁判所は銀行に不利な判断はなかなかしてくれませんが、銀行の横暴が目に余る事案では臆せず闘う気持ちのささやかな支えにしておきましょう。


藤池智則、髙木いづみ 経済法令研究会 2023年2月13日発行(初版は2020年2月15日)

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