伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

あの子はなぜ荒れるのか 発達障害・アタッチメントとトラウマインフォームドケア

2024-09-10 23:04:47 | 実用書・ビジネス書
 幼稚園から中学生の「荒れた」子どもの様子とそれに対応した教師の13事例を紹介して解説し、著者らの考える子どもの荒れの原因と支援の課題を語る本。
 この本の大部分を占める事例報告が読みどころで、これを読んでいると、周囲の者の迷惑を顧みず逸脱する子ども1人に寄り添い理解しその荒れを治め成長につなげるのに教師がどれほどの献身的な努力を要するのかがよくわかり、その大変さに感心するとともに溜息が出ます。教師のみならず、医療現場や介護現場など、人と向き合う仕事には、そういう人との付き合いが付きもので、苦労は避けられないものとみられます。弁護士の仕事も、ある意味同じ面がありますが…
 紹介されているのは当然に成功例だけで、その陰には、同じくらいとかあるいはもっと苦労を重ねながらうまく行かず徒労感ばかりが残るケースが山積なのでしょうね。
 事例に引き続き著者による「解説」がありそこで教師の実践が賞賛され、あるいはなお足りないと問題点が指摘されています。こういった記述を見て、良心的な教師はもっと頑張らないとと思うのでしょう。そういった教師たちの姿は美しいかも知れませんが、教師の個人的な献身・自己犠牲を求める風潮は教師らに過労死への道を歩ませることにもなると思います。
 分類・研究することが、科学的で効率的な対応につながるということなのでしょうけれども、報告を読んだだけとみられる著者が、荒れる子どもたちやその親などを発達障害だろうなどと決めつけて行く「解説」に、私は不快感を持ちました。「隣のひとが消しゴムを忘れているから、貸してあげてね」と担任からいわれて自分の消しゴムを定規で半分に切って渡したというのをASD(自閉スペクトラム症)の特性が顕著にみられる(154ページ)って。食べ物をシェアするならふつう半分にして渡すでしょう。その子はそれと同じ感覚で自分のものを分けてあげたんじゃないでしょうか。私にはこの著者の言い草の方が異常に見えました。


楠凡之、丹野清彦 高文研 2024年7月10日発行

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