伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

実戦民事訴訟の実務(第6版)

2023-05-20 23:25:49 | 実用書・ビジネス書
 裁判官経験20年、弁護士経験25年余の著者による民事裁判の実務についての解説書。
 民事裁判の制度と実情、実務の運用に関する事実認識と説明はほぼ私の認識するところと同じ(その事実をどう評価するか、それで自分はどう行動するかの部分は必ずしも意見が一致しないところがありますが)で、民事裁判の実務を知るために非常に有益な本だと思います。私が自分のサイトを開設・運営しているのも、民事裁判の実務を一般の人によく理解してもらいたいと考えたから(もちろん、自己PRの目的もありますけど)ですが、この本もそういう趣旨で書かれ、その目的に沿うものと考えられます。
 弁護士が書いたものとしては、かみ砕いて書いてあり、比較的読みやすいと思うのですが、最大の難点は600ページを超える「大著」のため、この本を読んでもらいたい一般人や新人弁護士が読み通せるか、にあります。意を尽くしたいという気持ちからでしょうけれども、同じことを言葉を変えて続けて繰り返しているところが多くあり、大事なことだからだと思いますが、同じことが別のところで何度も繰り返されていて、最初のうちはスルスル読めたのですが、次第に「くどい」という印象を持ってしまいます。
 タイトルが「実践」ではなくて、「実戦」というのも、著者の戦闘意識を示しているのでしょう。訴訟の目的が真実の発見とか適正な裁判の実現というのはきれいごとで、多くの人(依頼者)にとっては自分に有利な真実の発見、自分に有利な裁判の取得が目的ということが繰り返し述べられている(3ページ等)あたりにも著者の思いというか、決意が感じられます。こういうのを読んで、そうだそうだと思ってやってくる依頼者を相手にする(事件を引き受ける)のは、なかなかたいへんだろうなと…
 法廷での裁判官の言動に不満・失望を抱くことが少なくないという説明で「当事者双方の主張・立証活動を真摯に検討していない者、当事者の一方に偏見を抱いているとしか考えられない者、自由心証主義を振りかざす者、極めて非常識な訴訟活動を放任し、法廷をサーカス場にしている者、法廷をジャングルにしている者、居丈高な言動を繰り返す者、怒鳴る者、関係法律を理解していない者、社会常識、社会通念を無視する者、自分の経歴を明言し、振りかざし、当事者の主張を制限しようとする者、科学・技術が密接に関係する訴訟でこれらの知見を無視し、あるいは無知な者、判決は書き方次第でどちらでも書けるなどと広言する者、根拠のない和解を強いる者、法廷のとっさの出来事に適切に対応できず、戸惑うだけの者などの諸相がみられるのである」と書いています(25ページ:ふつうは、問題例を論うとしてもせいぜい3例とか5例くらいまでだと思うのですが、これだけ書かないと気が済まないというのがこの本の特徴で、こういう説明で分厚くなっているという面があります)。裁判官経験者が、ここまで裁判官を詰り、読者に裁判官への不信感を煽るというのは、私には驚きでした。裁判官だけでなく、夏以外でもジャケット、ネクタイを着用しないと「だらしない服装で入廷する実務家」と非難される(226ページ)ので、私も反省しないといけないかなと思いますが…


升田純 民事法研究会 2023年3月19日発行(初版は1997年7月)

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