14歳の少女リリー・Bが、5歳の頃にアイロンでけがした火傷の跡が残るこめかみや左右の太さが違う膝のことや、友人との関係、共働きでバリバリと働いていた両親が次々とリストラされ、不仲になり離婚を決めほかの相手と情事にふける様などに悩み、傷つき、街角で知り合った青年レオンに憧れ、カフェで隣にいたフロリアンやその友人エマとつきあう中で成長していく様子を描いた青春小説。
あくまでもリリー・Bの目から描かれていて、客観的な事実としての提示はなく、疑いは真実の判明によってではなくリリー・Bの判断によって解決というか解釈されていきます。物語として読むには、回収・解説されない疑問が残っていき、不満に思えます。しかし、自分の身の回りのことも、同様に客観的な真実が判明するというよりは主体による判断の積み重ねで解釈されていくのですから、14歳の少女リリー・Bの目から見た世界としては、むしろ自然な描写ともいえます。ストーリーではなく、リリー・Bの気持ちの揺れ動きを描き、それを味わう作品として読むべきでしょう。
憧れるレオンと、友人となったフロリアンを引き比べ、「フロリアンとレオンはまったくの別問題。レオンは情熱だもん、まばゆいほどの情熱だもん。フロリアンのことは友達として好き。でもフロリアンの態度にイライラすることがある。頭にくることだってある。だから、私にメロメロになってくれても困るけど、ほかのコのことは好きになってほしくない。彼がしつこくしてくるとはねつけて、離れていったらつきまとうんだ。もし、レオンと再会する日が来ても、フロリアンには苦しんでほしくないな。でも、今はレオンとの再会を待ちつつ、フロリアンと一緒にいるのがいい。」(174~175ページ)という迷いのようにも現実的な判断ともみえる思い、自分の気持ちを認めているような認めたくないような揺れが瑞々しく微笑ましく感じられます。そういう思いをぶつけられる側はじれたりとまどったりするでしょうけれど、「それが青春」「それが恋」でもあって…
原題:LES CARNETS DE LILY B.
ヴェロニック M ル・ノルマン 訳:鳥飼カオル
文芸社 2013年2月15日発行 (原書は2006年)
あくまでもリリー・Bの目から描かれていて、客観的な事実としての提示はなく、疑いは真実の判明によってではなくリリー・Bの判断によって解決というか解釈されていきます。物語として読むには、回収・解説されない疑問が残っていき、不満に思えます。しかし、自分の身の回りのことも、同様に客観的な真実が判明するというよりは主体による判断の積み重ねで解釈されていくのですから、14歳の少女リリー・Bの目から見た世界としては、むしろ自然な描写ともいえます。ストーリーではなく、リリー・Bの気持ちの揺れ動きを描き、それを味わう作品として読むべきでしょう。
憧れるレオンと、友人となったフロリアンを引き比べ、「フロリアンとレオンはまったくの別問題。レオンは情熱だもん、まばゆいほどの情熱だもん。フロリアンのことは友達として好き。でもフロリアンの態度にイライラすることがある。頭にくることだってある。だから、私にメロメロになってくれても困るけど、ほかのコのことは好きになってほしくない。彼がしつこくしてくるとはねつけて、離れていったらつきまとうんだ。もし、レオンと再会する日が来ても、フロリアンには苦しんでほしくないな。でも、今はレオンとの再会を待ちつつ、フロリアンと一緒にいるのがいい。」(174~175ページ)という迷いのようにも現実的な判断ともみえる思い、自分の気持ちを認めているような認めたくないような揺れが瑞々しく微笑ましく感じられます。そういう思いをぶつけられる側はじれたりとまどったりするでしょうけれど、「それが青春」「それが恋」でもあって…
原題:LES CARNETS DE LILY B.
ヴェロニック M ル・ノルマン 訳:鳥飼カオル
文芸社 2013年2月15日発行 (原書は2006年)
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