伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972-2022

2023-03-03 22:57:07 | 人文・社会科学系
 元NHK記者と元外務官僚が、あさま山荘事件/連合赤軍事件後弱体化してゆき漂流する様子を対談で概観する本。
 著者らが序章で左翼史を語る意味を、危機の時代に思想に踊らされない真の教養を身につける(16ページ)ことにあるとしているように、この本では運動の歴史ではなく思想の歴史を重視し、基本的には政治家の人の歴史が語られている感があります。著者らが作成したのではないのでしょうけれども、第1章では、70年代後半以降の新左翼は三里塚ぐらいでしか存在感を発揮する場所がなくなってしまったといいながら(47ページ)第1章関連年表(24~25ページ)では三里塚関係は管制塔占拠の1項目だけ、この時代は労働運動へ焦点が移っていった時代、日本の労働運動はかつてない高揚期を迎えた(62ページ)というのに第2~3章関連年表(60~61ページ)では労働運動関係はスト権ストの1行だけというのはなんなんだろうと思います。
 この本は過去の左翼の失敗から何らかの教訓を引き出す(169ページ)ことが目的の1つといい「対立する陣営に対して自分たちが優位に立つ、あるいは自分たちの優位性を第三者に見せつけるためにする論争を排し、代わりに実りのある発展性のある議論に結びつけるにはどうしたらいいのか」(169ページ)と問いかけています。批判が批判のための批判にとどまらず、議論が議論のための議論にとどまらず、生産的な営為でありえているかは、絶えず意識し続ける必要がある重要な問いだと思います。


池上彰、佐藤優 講談社現代新書 2022年7月20日発行
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