伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

まぐわう神々

2023-06-07 22:19:58 | 人文・社会科学系
 神話や遺跡出土物、道祖神等の立像・陰陽石、祭礼や民俗芸能等に残る性神信仰、生殖器崇拝について論じた本。
 道祖神、陰陽石などについては中部地方東部と関東地方西部(長野県、山梨県、静岡県、神奈川県、群馬県)、著者の郷里の岡山県を中心とし、他の部分は文献による研究紹介が多く、網羅的なものではなく事例紹介的なものと受け止めた方がよさそうです。
 石像等については、明治5年の太政官布告で取棄が命じられたために東京や東海道・日航街道筋のものが軒並み排除されたが、地方ではそれが徹底されず残され、性神信仰の神体の残存率は世界でも類がないほどではないかと紹介しています(12~17ページ)。
 性神信仰・生殖器崇拝の動機については、性病平癒があった(子宝、豊作の祈願のみではない)ことを、著者は一種執念を持って論じているという印象があります。
 性器(の模型)を担ぎ出す祭りとして、小牧市田縣神社の豊年祭(へのこ祭り:3月15日)、犬山市大縣神社の豊年祭(おそそ祭り:3月15日前後)、佐渡市草刈神社・菅原神社のつぶろさし(6月15日)、松本市湯ノ原温泉の道祖神祭り(9月23・24日)、愛知県設楽町津島神社のさんぞろ祭り(11月第2土曜日)、愛知県西尾市熱池神社のてんてこ祭り(1月3日)が紹介されています(190~200ページ)。私が知る限り一番有名な(というか、それしか知らない)川崎市金山神社の「かなまらさま」はまだ出てこないのかと思っていたら、かなまらさまは一説には火をおこす鞴を男根に見立てたものでもともと鍛冶職人たちの信仰が元にあるので性神信仰といえるかどうか疑問だというのです(201~202ページ)。う~ん、学者/学問の世界は奥が深いのか我が/こだわりが強いのか…


神崎宣武 角川選書666 2023年3月23日発行
コメント
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