伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

原発を終わらせる

2011-09-17 19:34:11 | 自然科学・工学系
 福島原発震災を受けて、14名の筆者が様々な観点から福島原発震災や原子力発電の科学・技術的な問題点、安全規制行政側の問題点や原発立地自治体の原発依存体質、核兵器転用の危険性、ソフトエネルギーへのシフト、脱原発の国作り等を論じ、脱原発への提言をしている本。自然科学系の記述と社会系の記述が双方ありますが、印象としては自然科学系の方が強く感じることもあり一応分類は自然科学系にさせてもらいました。
 前半の福島原発震災関係では、最初の「原発で何が起きたのか」で福島原発震災で地震で配管が破断するとともに圧力抑制機能が喪失したことが論じられ、新書版32ページとしてはかなり踏み込んで論じられています。同じ筆者が同じテーマで雑誌「科学」(岩波書店)2011年9月号でさらに詳論していますので、これで足りない人はそちらをということになるのでしょう。続く「事故はいつまで続くのか」はやや抽象的になりますが、事故で何があり得たのかとこの先を考える上で含蓄のある話が展開されています。「原発は先の見えない技術」では、金属材料学的な見地から原発の圧力容器が使用継続によってもろくなることを特に玄海1号機の最近のデータからの危険性を挙げて指摘し、高レベル放射性廃棄物のオーバーパック(炭素鋼:鉄)の耐久性の問題点を指摘しています。
 ページ数の関係でもう少し踏み込んで欲しいなと思うところも見られます(全体に5割増しくらいのページ数があったら、という印象を持ちました)が、原発の今を総合的に見るのによい本だなと思います。


石橋克彦編 岩波新書 2011年7月20日発行
コメント
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