伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

H.I.V.E. 悪のエリート養成機関

2008-09-26 23:20:37 | 物語・ファンタジー・SF
 理解力と記憶力が桁違いに優れた13歳の少年オットー・マルペンスが、火山島の地下に隠された悪のエリート養成学校「H.I.V.E」に連れてこられ、そこで知り合った友人とともに脱走を試み、危機に陥るSFアクション小説。
 集められた子どもたちは様々な才能を持ち、もちろん教師は超人的。魔法は登場しないものの、近未来テクノロジーが具体的説明や緻密なディテールなく登場するので、建前は科学(SF)だけど魔法を使うといわれるのとあまり変わらない感じです。設定、キャラの造形、登場するテクノロジーとも、感覚的には漫画的。軽めの展開好みの方向けの読み物です。
 私たちの世代ではサブタイトルの「悪のエリート養成機関」なんていわれると「タイガーマスク」の虎の穴をイメージしてしまうんですが、そこはより現代的というか未来的で、悲惨なしごきとかは出てきません。
 この組織「H.I.V.E.」の目的も、ここでいう「悪」の目標というか理想像も、読んでいて今ひとつスッキリわかりません。影の支配者「ナンバーワン」も人物像が全然見えないし。ほとんどの謎が続編(未訳)に引き継がれていて消化不良です。
 いろいろな作品が引用されていますが、ナルニア国物語が出てきたときのオットーの台詞が「だいたいおれはプリンは嫌いだしね」(265頁)とされているのは考えさせられます。もちろん、作者はイギリス人ですから、この本でも原文はターキッシュ・ディライト(Turkish Delight)のはずです(原書は確認してませんけど)。ナルニア国ものがたりで、日本の子どもにはターキッシュ・ディライトなんてわかるまいと、似ても似つかぬ「プリン」に訳してしまった瀬田貞二訳の呪縛がここまで来るかね・・・。


原題:H.I.V.E.: Higher Institute of Villainous Education
マーク・ウォールデン 訳:三辺律子
ほるぷ出版 2008年6月20日発行 (原書は2006年)
コメント
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