伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

カゼヲキル2 激走、カゼヲキル3 疾走

2008-09-23 22:37:58 | 小説
 元マラソン選手の作者が書いた無名の中学生がライバルや怪我と闘いながらマラソンで頂点を目指していく陸上小説。3巻で完結。
 1巻で全日本ジュニアの強化委員の目にとまって大抜擢され全日本ジュニアの合宿に招聘され国際大会にいきなり出場したがレース中に骨折して失意の日々を送り最後に再起を誓った中学生の山根美岬が、2巻、3巻では抜擢してくれた監督の指導の下で高校・実業団と進み、ライバル青井恭子への敵意と新たな仲間ジェーンや日本陸上界の星福川や合宿で知り合った先輩橋本らとの交遊を重ねながら、5000m、10000m、駅伝、ハーフマラソンで華々しい闘いをし、マラソンでロンドンオリンピックに臨むまでを描いています。
 2回の骨折以外は山根美岬の行く手を阻む者はありません。ライバル青井恭子は前半徹底的に悪者にされ、終盤は逆に悲劇のヒロイン的になり、作品中でかなり重要な位置づけなのに、青井恭子との対決の場面はあまりないのが、なんか肩すかしの感じ。そのあたり小説としてはもっといろいろあってもよさそうな感じがしますが、作者が陸上エリート街道まっしぐらだったので挫折した側のことは書きにくいかもとか、中学生から実業団、マラソンの頂点までをこの程度の分量で収めたらあちこち寄り道してられないよねとかの事情でしょう、読み物としてみると淡泊な感じがします。
 それにしても、1巻で骨折からの再起と夜間の海で背後からつける車という思わせぶりなラストで「続く」にしておいて、2巻はいきなりそのことを忘れたようにすでに復帰してさらに中学最後の全国大会で5位になってしまっていてその後から始まるというのはあんまり。私は、こういう読者無視のつくりってとても嫌いです。
 それから2巻からずっと登場する元マラソン選手のTV解説者「牧田明子」というのが、どう見ても作者自身なんですが、これが明るくて理解があって性格がよくてと美化されすぎてるのがちょっとしらけます。


増田明美 講談社
2巻 2008年4月21日発行
3巻 2008年7月30日発行

1巻は2007年9月23日の記事で紹介しています
コメント
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