伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

LAWより証拠

2008-09-05 09:22:36 | 人文・社会科学系
 証拠がないので警察にも弁護士にも相手にしてもらえず泣き寝入りしている人のために証拠を集める「証拠調査士」を名乗る著者が自ら扱った事件を紹介した本。
 この本のコンセプトである裁判等は法律の勝負以前に証拠の勝負、証拠を用意しなければ勝てない(ことが多い)というのは私のサイトの「民事裁判の話」でも繰り返し説明している通りです。そして弁護士が自ら証拠集めをすることに大きな期待を抱かれても困ることもその通りです。また、依頼者が自分で証拠を集める努力もせず人にお任せでは困るとか、何も調べもせずに行政に相談に行って何も教えてくれなかったと文句をいうのは自分が悪い(89~90頁)とかの指摘も、納得してしまいます。
 ただ、肝心の、ではどうやって証拠を集めるかは、この本で書いてあるのは神経内科を受診して脅迫やいじめ等による精神疾患の診断書を書いてもらう、録音・録画する、振込については銀行にATMの監視カメラ映像と記録を出してもらうというくらいしか書かれていません。
 どちらかというと証拠集めよりも交渉・解決方法へのアドヴァイスの方が長けている感じですが、有力な弁護士の力を使ったり警察を動かす以外は、むしろ嫌がらせ的な交渉手段が書かれていて、大丈夫かなぁと少し危惧感を持ちます。近隣騒音のケースで自分がマンションの管理組合の理事長になってしまうというのは、面白いアイディアではありますが。
 法律についての記述には疑問点が残ります。第1章で刑事の調書が1ヵ月で確定と繰り返していますが、そういう仕組みはなくて、単に刑事事件としての確定でしょうから、それは1ヵ月という期間は関係ないと思います。弁護士法で本人と弁護士以外の関与は禁止されていると何度か書かれていますが、親族も関与できない(112頁)とかかなりミスリーディング。弁護士法が禁止しているのは「業として」行うことで、端的に言えばそれで報酬を取らなけりゃ問題ありません。
 弁護士に頼むと金がかかるということも度々強調されていますけど(根拠の怪しいかなり高額の数字入りで)、弁護士に相手にされない事件を多数解決してきたという著者は、依頼者から一体いくらもらうんでしょうか。弁護士のみならず、この本を読んだ人の大半が興味を持つことと思いますが、その点には触れられていません。それからカウンセラーについては民間資格などいい加減なものと断言しています(253頁)けど、著者の名乗る「証拠調査士」って民間資格でさえないと思いますが。


平塚俊樹 総合法令出版 2008年7月22日発行
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