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伊東良徳の超乱読読書日記

はてなブログに引っ越しました→https://shomin-law.hatenablog.com/

ホントのコイズミさん YOUTH

2024-04-18 21:38:19 | エッセイ
 ポッドキャスト番組「ホントのコイズミさん」からユニークな本屋さん3軒の店主をゲストにした回、作家江國香織をゲストにした回を出版した本。
 本への愛と80年代への郷愁みたいなところが、私にはハマる本でした。
 通しテーマ「YOUTH」に合わせてゲストに子どもの頃/青春時代について質問しています。初めて読んだ本が「エルマーのぼうけん」(松浦弥太郎、36ページ)とか、小学生時代に思いをはせてしまいます。
 最初に紹介されている目黒川沿いにさりげなくたたずむ本屋さんCOW BOOKS(7ページ)。そう言われると行ってみたくなり、破産の債権者集会で中目黒のビジネスコートに行った帰りに寄ってみましたが、営業時間は12時からということで閉まってました (^^;)


 本自体とは別に、まぁ本を読んで思うところでもあるのですが、小泉今日子は、いつのまにこんなにカッコいい人(歌手とか俳優という枠ではなくて)になったのだろうという感慨を持ちます。歌手としての、若いときの小泉今日子は、私の一番強い印象は、民営化されたJR東日本が、自動改札を導入したとき、「もっともっと」とか「もっと便利に」みたいなことをアピールするCMに出ていたことで、あからさまな人員削減(改札の駅員の人減らし)と、副次的にはキセル防止のため、いずれにせよJR東日本側の利益だけで、利用客にはただ改札前での渋滞ができて不便・不快なだけなのに、尊大な大企業(こういう広告を作る代理店も含めて)が金に飽かせて行う無理なイメージ操作に使われ消費されるアイドルというもの(東京電力のために原発PRの漫画書かされている漫画家なんかと同列のイメージ)でした。若いときにこうだったから、ではなく、人は変わるし変われるということを、素直に感じ見つめていきたく思います。


小泉今日子編著 303BOOKS 2022年12月5日発行
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九十歳のラブレター

2024-02-04 22:56:00 | エッセイ
 90歳を前に同い年の妻が就寝中に死亡したのを受けて、失意の著者が人生の節々での妻との思い出を綴ったエッセイ。
 1930年生まれの著者(私とはちょうど30歳違い)の世代を反映して、転職・転勤を繰り返す著者に、教師を辞めて夫唱婦随でついて行く専業主婦となる妻の選択を、ひいてはそれをさせた自分の人生を正当化しているくだりと価値観には、世代の違いを感じますが、妻に感謝し讃える言葉を若い頃から衒いなく伝えていた様子、仲睦まじい様子は、微笑ましく羨ましくも感じます。
 妻を終始「あなた」と呼びながら、しかし妻に話しかけるのではなくやはり第三者に説明する文体は、妻のことを中心に語るのならば弔辞のように思えますが、内容は2人の想い出なので妻に語っているようでもあり、少し不思議なニュアンスのある読み物でした。


加藤秀俊 新潮文庫 2024年1月1日発行(単行本は2021年6月)
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女囚たち ブラジルの女性刑務所の真実

2023-10-16 23:26:07 | エッセイ
 ブラジルで30年以上にわたり刑務所に通って診察を続けた著者が、州立女性刑務所での7年間の勤務の過程で見聞きしたことを記した本。
 数ページごとのエピソードで、前半はテーマを立てて総論的な解説をしようとしているようですが、断片的な叙述になっています。後半ははっきりと出会った受刑者から聞いたエピソードの羅列となっています。そういう構成ですので、体系的な論述というよりは思いつくままに書かれたエッセイという読後感です。
 登場する受刑者たちの収監に至る事情を読んでいると、薬物の悲劇を痛感します。その流れで著者は違法薬物との戦いを正当化しようとしているのかと思っていたのですが、何と、著者は終章で、禁酒法が社会を腐敗させ密売や犯罪を助長させたとして、同じようにドラッグの使用と密売を違法にする法律が「我々を最悪の状況に導いている」と主張していて(282ページ)驚きました。
 著者の経験で、男性の囚人には女性(母、妻等)が列をなして面会に訪れる(ブラジルでは面会時に同衾さえ許されるそうです:40ページ)(もっとも、それは面会に行かないと報復・暴力が待っているからということであるようですが:42~43ページ、286ページ等)のに、女性の囚人は見捨てられ夫や愛人はほとんど面会に来ない、それはその女性がその男のために収監された場合でも同じ(42ページ等)というのが、悲しいですね。


原題:PRISIONEIRAS
ドラウジオ・ヴァレーラ 訳:伊藤秋仁
水声社 2023年8月10日発行(原書は2017年)
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孤独という道づれ

2023-09-22 00:16:50 | エッセイ
 パリ暮らしが長い(近年は日本在住だとか)女優岸惠子のエッセイ集。
 最初の方は、小説「わりなき恋」とその次に書いた「愛のかたち」がどれほど苦労して書いたか、その割に思ったほど売れなかったという愚痴が書き連ねられています。その後、大怪我をした話や詐欺に遭いかけたとか泥棒の被害の話、装い(和服・洋服等)、言葉などの話題で経験や思いが語られています。
 概ねそういう話で終わるのかと思っていたところ、終盤に、昔の国際結婚と離婚、長期の外国暮らしと近年の帰国に絡んで、離婚や娘の戸籍記載とビザ・入管の扱い、母の葬儀と住民票などに関して法律の不合理を述べる文章が続きます。法律、特に戸籍や入国管理などに関するものは、市民の立場ではなく国・行政が管理しやすいこと、役所の都合が優先される度合いが強く、とりわけ著者のように外国暮らしが長いと日本の役所の姿勢・取扱の頑なさ・異常性が目に付くものと思います。ふだん忘れがちではありますが、そういったことは気にとめておきたいところです。


岸惠子 幻冬舎文庫 2022年5月15日発行(単行本は2019年5月)




 
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記憶喪失になったぼくが見た世界

2023-08-16 22:09:17 | エッセイ
 学生のときに交通事故で意識不明の重体となり記憶喪失になった著者が、見聞きし考えたこと、日々の経験等を書いた文章と、母親のコメントを編集した本。
 事故直後から順に時期を区切って6章に分けていますが、それぞれの文章がいつ書かれたものか、当時の著者の状況等の具体的な説明はなく、この本の成り立ちの説明もないので、想像で補って感覚的に読むことになります。
 記憶喪失という言葉から想像していたのと違うところも多く、著者の場合、ドラマのように過去の記憶が戻ることもなくて、記憶喪失後数年を経て記憶喪失後に得たものが多くなった後「今いちばん怖いのは、事故の前の記憶が戻ること。そうなった瞬間に、今いる自分が失くなってしまうのが、ぼくにはいちばん怖い」(248ページ)としているのに驚きました。人生はそれぞれで、他人が簡単に推し量り決めつけることはできないのだと再認識しました。


坪倉優介 朝日文庫 2019年8月30日発行(幻冬舎文庫で2003年6月発行)
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心をととのえるスヌーピー 悩みが消えていく禅の言葉

2023-05-21 19:21:17 | エッセイ
 PEANUTS(チャールズ・M・シュルツ作、谷川俊太郎訳)の漫画に禅語と解説をつけた本。
 PEANUTSを素材に禅宗の考え方を学ぶ(としても、体系的な解説ではなく、エッセイ風に)本というべきなのか、禅宗風のコメントをつけたPEANUTSを読む本というべきか、迷います。つけられている解説は、漫画とフィットしているものもあり、こじつけっぽく感じられるものもあります。
 PEANUTS自体がもともと哲学的な漫画なのですが、ピタリと合っていなくてもそれらしい説明に合わせて読むと、単独で読むよりも「深い」と考えさせられます。その意味で、PEANUTSをより楽しめる本と受け止めた方がいいかなと思います。
 私は、どちらかといえばライナス派だったのですが、今回これを読んでいるとペパーミント・パティとマーシーの関係が微笑ましく感じられました。マーシーが女性のペパーミント・パティを1970年頃すでに「SIR」と呼んでいる(125ページ)のも、それを「先輩」と訳しているのも、ちょっとうなりました。


枡野俊明監修 光文社 2021年9月30日発行
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ぼくは翻訳についてこう考えています 柴田元幸の意見100

2023-03-27 20:46:47 | エッセイ
 翻訳家である著者がさまざまな媒体に書いたりインタビューで話したことをかき集めて収録し著者のコメントをつけた本。
 著者の経験的なコメントが楽しく、「どこかの書店でトークをやったときに、『ダジャレは翻訳でどう再現しますか』と訊かれ、『まあたいていはルビで処理します』と答えようとした矢先に『ルビとかで処理するのって最低ですよね』と言い足されて返答に窮しました」(90ページ)とか、うんうんそういうヤツいると思いました。
 高校の時に培風館の英文解釈問題集を副読本として与えられて、「翻訳に開眼しました。あの問題集がなかったら、けっこう違う人生だったかも…」(136ページ)って。私は、高校でその問題集やらされて、英語はやっぱり自分には向いていないと確信したような覚えが。
 若い人たちへのメッセージで、「原書を読むことに挑戦しない手はない」「英文科の教師はみな、初めて通読した洋書がなんであったか、ほとんど初恋の人の名のように覚えているものである(僕の場合は、George Orwell, Nineteen Eighty-Four)。」(211ページ)って。私は、高校の副読本を除けば、Deep Throat 。長文読解になれるために、単語がわからなくても辞書を引かずに読んでいく訓練をするという名目で、洋書コーナーで一番目についたハードコアポルノの原書(画像はなかったですよ)を買いました。辞書を引いたとしても辞書に載ってないスラングだらけなので… (*^_^*) なんとか読み通しましたが、英語読解力はやはり身につかなかったなぁ


柴田元幸 株式会社アルク 2020年1月27日発行
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日本を味わう366日の旬のもの図鑑

2023-02-07 21:00:55 | エッセイ
 1月1日から12月31日までの日々に、旬のあるいは行事・習わしとして飲食するものをあてがい、各1ページで写真と紹介・説明文をつけた本。
 日付には、その日の意味があるものもありますがて食文化を再認識して味わう本と位置づけるべきでしょう。
 冬瓜は実は夏の野菜(8月9日:225ページ)とか、八朔(8月1日の意味)は冬から春が旬で旧暦8月にはまだ小さくて青くて食べられない(2月21日:55ページ)なんて人を食ったような話ですし、そもそもカステラ(5月3日:127ページ)やコロッケ(5月6日:130ページ)に旬があるとも思えません。
 旬や食文化にも関係なさそうですが、ドドメ色というのが「土留め色」で桑の実の黒に近い紫なのですね(6月21日:176ページ)。謎の色だった(といって、調べてみる気にはならなかった)のですが、初めて知り、また写真で実感できました (*_*)


暦生活 淡交社 2023年1月3日発行
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死にゆくあなたへ 緩和ケア医が教える生き方・死に方・看取り方

2022-12-27 22:57:44 | エッセイ
 ブラジルのサンパウロ大学病院等で緩和ケア医として働く著者が、自分が緩和ケア医となった経緯や死生観、人生観等についてTED(ちょい悪のテディベアの映画ではない。念のため)で行った講演を取りまとめて出版した本。
 講演集なので、全体を貫くストーリーはありませんし、首尾一貫したものともいいがたいところがあります。講演集だということが最後の訳者解説にしか書かれていないので、前から順に素直に読んでいると、次第に何なんだこれは、と訝しく思えてきます。タイトルや最初の方の記述から、緩和ケア医としての臨床経験から緩和ケアのあり方や末期癌患者たちの現実の姿が書かれているのだろうと思ったのですが、後半は概ね、より抽象的・観念的な哲学が語られているように見えます。
 緩和ケア医として、「私の役目は、ただそこにいること」といい(81ページ)、患者について「少しでも死を意識すると、時間の感覚は大きく変わります」「死に直面したとたん、人は自分のことを即座に理解し、行動を起こせるようになります」(72~73ページ)とか、そこに「いる」ことの大切さ(86ページ)というのは、哲学的でありつつも臨床的にも見えます。しかしSNSで暴力や偏見を煽ってる人は「生ける死者」(82ページ)とかは、当否は別として、緩和ケア医としての経験に関係ない意見でしょう。
 著者によれば、よく生きるための最も簡単な秘訣は、感情を表す、もっと友人と過ごす、自分を幸せにする、自分のための選択をする、人生に意味をなすために働き、仕事を目的にしないことの5つを心がけることだそうです。心の欲するところに従えども矩を踰えずと行ければよいのでしょうけれども…


原題:A MORTE E UM DIA QUE VALE A PENA VIVER ( Death Is a Day Worth Living )
アナ・アランチス 訳:鈴木由紀子
飛鳥新社 2022年8月8日発行(原書は2016年)
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ワンダーランドに卒業はない

2022-12-08 21:59:01 | エッセイ
 著者が子どもの頃に読んだ本を読み返し、その中で大人になって読み返して書いてみようという気持ちを起こさせた18作について語ったエッセイ。
 取り上げられた本は、「クマのプーさん」&「プー横町にたった家」、「銀河鉄道の夜」、「点子ちゃんとアントン」、「宝島」、「ハックルベリ・フィンの冒険」&「トム・ソーヤーの冒険」、「秘密の花園」、「鏡の国のアリス」、「ライオンと魔女」、「だれも知らない小さな国」、「ピノッキオの冒険」、「あしながおじさん」&「続あしながおじさん」、「ピーター・パンとウェンディ」、「モモ」、「二年間の休暇」(十五少年漂流記)、「小さなバイキングビッケ」、「ふくろ小路一番地」、「トムは真夜中の庭で」、「ゲド戦記」。読書好きであってもその読書経験はやはり人それぞれで、私が読んだことがあるのは半分くらいで、それも子どもの頃に読んだとなると3~4冊くらいです。どれくらい、「そうそう」と子ども時代も含めた共感と郷愁に浸れるかはさまざまでしょう。1冊だけ選ぶなら「宝島」だ(53~54ページ)というのも、賛否両論百家争鳴でしょうし。
 著者が、最終章に「ゲド戦記」を選んだ(201ページ)ところで触れているように、子どもの頃にすでに「名作」としてあった作品群には、男の冒険で女は閉め出されている、有能な女性も職業人としての活躍が想定されず専業主婦になっていくことなど、今読む者には違和感を持たせるものが少なくありません(206~209ページ。ナルニア国物語について93~94ページ)。私も、かつて小学生だった娘に童話を読み聞かせていて疑問を持ち、サイトで「女の子が楽しく読める読書ガイド」というコーナーをつくっていて、「ゲド戦記」や「ナルニア国ものがたり」について同様のことを書いています。
 著者が提起する問題意識や感想に、自らの読書の記憶と照らし合わせて、いろいろな思いが湧いてきて、それでまた読書の意欲をそそられる、そういう点が楽しい本だと思います。


中島京子 世界思想社 2022年8月1日発行
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