湖の子守唄

琵琶湖・湖北での生活、四季おりおりの
風景の移り変わり、旅先でのふれ逢いなど、
つれづれなるままに、語りたい。

恋文

2010年09月02日 | 詩歌・歳時記
あなたに初めてお逢いした時、衝撃のあまり、息は詰まり身動きさえできず、
ただ呆然と見詰めるだけでした。あれから20年の歳月が流れましたが、
あなたを忘れたことはないのです。

高月、渡岸寺・国宝十一面観世音菩薩。



お体の割に、大きすぎる頭上の化仏たち、下方へ垂らした右手の異常な長さ。
アンバランスでありながら、絶妙な安定感で微笑されている、あなたを見つめて、
無神論者の私の両の掌が、ごく自然に合わされていました。



それからというもの、月に一度はあなたに逢いに行きましたね。
わずかにひねった細い腰の官能美、崇高な表情、うねるように流れる天衣、
すべてが美しく、見惚れてはため息つく、そんな日々を重ねました。

戦国時代、燃える本堂から救いだされ、地面深く避難されたとか。
今では立派な収納庫のなかに、緊張と安寧のオーラを湛えて直立されておられる。
触れる位置に在りながら、決してふれる事はできない、その気高さ。

あなたのみ背中を上からゆっくりと、見つめゆくうち、
聴こえてくる、潮騒の響き。宇宙の煌めき。
あなたが、この湖北の地におられると感じるだけで、ささやかな誇りと、
安心感に包まれます。

渡岸寺・十一面観音、永遠なれ。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめましてお伺いいたします。 (ひめゆり)
2010-09-03 05:46:57
心の園~~

心の里と言うべき生きた足跡を残すことは

芸術的~~文芸的な生き方ですね。

豊かさを求める為の、文芸は素敵な感性を

持って居られる証と思います。

楽しみに読ませて頂きますね。
恋文 (エリ)
2010-09-29 21:17:52
この様な美しい恋文を書かれた後には、私は、以下同文です、としか書けないです。告白するのに20年ばかり遅れを取りましたか?光年が単位ですからねェ~勝気なワタシ。笑

悔しいので、京都で学生時代に出会ったイケメンの話でもしますか。
あれは18才の頃、東寺の講堂を暇にまかせふらりと・・誰も居ない静まりかえった堂内の舞台を興味もないままに眺め進みました。右からボンヤリと国宝郡に少し食傷ぎみ・・さて帰ろうかと出口の方に。恋は突然に、ああ。
その方のお名前は帝釈天様。何という男前!!見た目優先の性格も現実の伴侶に反映しなかった反省はさて置きます。当時、この方にはかなりの思いを寄せました。挙句の果てには、この方の象の後ろに乗り旅をしたいと思う程でしたよ。失礼しました。

コメントを投稿