『上流社会』
人型(山高帽から連想させるのは、被った非生産者、非労働者)が二つ半分程度重なるように描かれている。
人型にくり抜かれた中には、砂地・海・白雲の散在する青空があり、背後の人型の中は緑の葉で埋め尽くされている。
背景は渋い紫色である。
これらは何を意味するのだろう。
緑の葉は豊穣だろうか。海と空と緑なす土地の所有は生活を保障し、明るく放たれた自由もある。ただそれは、渋い紫(下層の血と汗)により確保されたごく狭い範囲の安定にすぎず、渋い紫(下層の血と汗)の反乱がないとは言えない。
上流社会を支える渋い紫(周りの下層社会)との拮抗。
上流社会の不安、流れる雲は常に暗雲を呼び込む風を孕んでおり、永遠の続行はないのではないか。上流社会は時代の中の一刹那かもしれない。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
そのとき風がどうと吹いてきて、草はいちめん波だち、別当は、急にていねいなおじぎをしました。
☆普く推しはかり、二つを把(つかみ)、別(わけて)問い、究(つきつめる)。
「わたしがわからないんですかね」と、男は言った。「イェレミーアスですよ、古くからの助手の」
「そうかね」と、Kは言って、背中のほうに隠していた柳の枝をまたすこし引っぱりだした。「だが、まるで人が変ったみたいだよ」
☆「わかりませんか」と、男は言った。
「イェレミーアスです、あなたの古くからの助手の」「そうかね」と、Kはいって後ろに隠していた柳の枝(拒絶の空気)を又少し前へと出した。「まるで違って見えるよ」