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Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

翻訳 『赤ちゃんポストのオルタナティブ-内密出産-』

赤ちゃんポストと内密出産の記事が新たに出ていたので、訳してみます。

出典元はこちらです

2018年4月16日の記事なので、とても新しいです♪

今、ドイツで、赤ちゃんポストと内密出産はどう語られているのか!?

バイエルン州の現状レポです!


バイエルン 内密出産
BAYERN VERTRAULICHE GEBURTEN

赤ちゃんポストのオルタナティブ
Alternative zur Babyklappe

Stand: 16.04.2018 | Lesedauer: 3 Minuten

バイエルンでは、これまでに39人の女性が内密出産を決断している。
In Bayern haben sich bislang 39 Frauen für eine vertrauliche Geburt entschieden

四年前から、「内密出産」が行われている。これにより、子どもたちは16歳になった時に、自分たちの親の身元を知ることが可能となる。バイエルンでは、これまでに39人の女性がこの内密出産を利用している。この数は、他の連邦州よりも少ない。
Seit vier Jahren gibt es die „vertrauliche Geburt“, bei der Kinder mit 16 Jahren die Identität ihrer Eltern erfahren dürfen. In Bayern haben bislang 39 Frauen diese Möglichkeit genutzt – weniger als in anderen Bundesländern
.

バイエルンでは、これまでに少なくとも39人の子どもがいわゆる内密出産で出産している。バイエルン州社会福祉省が質問に答える形で報告されたものある。2017年だけでも、14回の内密出産が行われており、これは、昨年よりも3倍の数値であり、2015年のおよそ二倍の数値となっている。
In Bayern sind bisher mindestens 39 Kinder bei sogenannten vertraulichen Geburten zur Welt gekommen. Dies hat das bayerische Sozialministerium auf Anfrage mitgeteilt. Allein 2017 gab es 14 vertrauliche Geburten – drei mehr als im Vorjahr und fast doppelt so viele wie noch 2015.

出産の際にまずもって匿名のままでいられるこの内密出産は、ドイツで4年前に導入された。内密出産は、周囲の人に切り捨てられるかもという不安から、自身の妊娠を隠そうとする危険な状況下の女性たちのためのものである。非合法だが容認されている匿名出産と異なり、内密出産の場合、母親は、子どもが16歳になった時に、母親の身元を知ることができるという点に同意する。
Die Möglichkeit, bei der Entbindung als Mutter zunächst anonym zu bleiben, wurde in Deutschland vor vier Jahren eingeführt. Sie richtet sich an Frauen, die ihre Schwangerschaft aus einer Notlage heraus geheim halten wollen – etwa weil sie Angst haben, von ihrem Umfeld ausgegrenzt zu werden. Im Unterschied zur illegalen, aber geduldeten anonymen Geburt stimmt die Mutter bei einer vertraulichen Geburt zu, dass das Kind mit 16 Jahren die Identität der Mutter erfahren darf.

オーバーフランケンで、(バイエルン州の)ほとんどの内密出産が行われている
In Oberfranken gab es die meisten vertraulichen Geburten

同省の発表によると、昨年実施されたほとんどの内密出産が、オーバーフランケン(エリア)で行われている。オーバーフランケンでは、7人の子どもが内密出産で産まれた。オーバーバイエルンとオーバープファルツでは、それぞれ3人が産まれ、ミッテルフランケンでは一度だけ内密出産が行われた。
Die meisten vertraulichen Geburten gab es den Angaben des Ministeriums zufolge im vergangenen Jahr im Regierungsbezirk Oberfranken. Dort kamen sieben Kinder vertraulich zur Welt. In Oberbayern und in der Oberpfalz gab es je drei und in Mittelfranken eine vertrauliche Geburt.

バイエルン州地方助産師会のアストリット・ギーセン氏からすると、内密出産はよい手段である。「緊急下の女性たちはは、子を匿名で、そして医療機関で安全に出産することができ、同時にまた、子どもも後に、人間としてとても必要な(母の名前等の)「自分はどこから来たのか」を知ることができる」、とギーセン氏は言う。
Aus Sicht von Astrid Giesen von Bayerns Hebammen-Landesverband sind die vertraulichen Geburten ein guter Mittelweg. „Frauen in Not bekommen so die Möglichkeit, ihr Kind anonym und sicher in einem Krankenhaus zu bekommen – gleichzeitig kann das Kind später erfahren, wo es herkommt, was für Menschen sehr wichtig ist“, sagte Giesen.

この内密出産の導入によって、バイエルンで、完全に匿名で出産する女性の数が減ったのかどうかについては、言うことができないようだ。「バイエルンでは、匿名出産、及び赤ちゃんポストに預けられた子どもについての統計調査は行われていない」と、バイエルン州社会福祉省のスポークスマンは言う。
Ob durch die Einführung der vertraulichen Geburt weniger Frauen in Bayern gänzlich anonym gebären, lässt sich nicht sagen. „Es erfolgt in Bayern keine statistische Erhebung von anonymen Geburten und Kindern, die in Babyklappen abgelegt werden“, so eine Sprecherin des bayerischen Sozialministeriums.

「女性たちが完全な匿名性の下での出産を選択できるということには、今もなお、正当な理由があります」と、ドーヌム・ヴィテ・アンベルクのヒルデ・フォルスト氏は強調する。「どこかの誰かがいつ日か自分の身元を見い出すというのは、多くの女性にとって、なかなか想像し難いものです」、とフォルストは言う。イスラム教の女性の場合だったり、またそれが性的暴行だったりする時、そうしたことが問題となるという。
Dass es immer noch gute Gründe gibt, aus denen sich Frauen für eine Geburt in vollständiger Anonymität entscheiden, betont Hilde Forst von der Schwangerschaftsberatungsstelle von Donum Vitae in Amberg: „Für manche Mütter ist es unvorstellbar, dass irgendjemand jemals ihre Identität herausfindet“, sagte Forst. Bei manchen muslimischen Frauen oder wenn es eine Vergewaltigung gab, sei dies etwa der Fall.

多くの女性たちが、出産直後にもう一度、別のことを決断している。
Manche Frauen entscheiden sich kurz vor der Geburt noch einmal anders

それゆえ、内密出産は、-当初、立法者たちが想定したようにー病院での匿名出産や赤ちゃんポストに取って代わること(代替すること)はできなかった。「私たちの相談所では、今も(匿名出産・内密出産の)双方が行われています。子を完全に匿名で産みたいという女性もいれば、内密出産を決断する女性もいます」と、フォルスト氏は言う。「私は、また、出産直前、出産直後にさらに考えを改めた女性の同伴支援も行いました」。
Daher könnten vertrauliche Geburten die anonymen Geburten in Kliniken sowie Babyklappen – wie eigentlich vom Gesetzgeber geplant – nicht ersetzen. „In unseren Beratungsstellen gibt es weiter beides: Frauen, die ihr Kind ganz anonym bekommen wollen, und Frauen, die sich für die vertrauliche Geburt entscheiden“, sagte Forst. „Ich habe auch schon Frauen begleitet, die sich kurz vor der Geburt oder auch nach der Geburt im Krankenhaus noch umentschieden haben.“

バイエルンでの内密出産の頻度は高まっているものの、その(内密の)出産の比率は、バイエルン州全体では、明らかに連邦国全体平均を下回っている。連邦家庭省が示す予想数値では、2014年から2016年にかけてバイエルン州で行われた内密出産の数は、(出産)全体のたった0.008%(0.08‰)に過ぎない。その数は、連邦国全体の(内密出産の)平均の半数程度である。その理由を見い出すのは容易ではない。連邦家庭省の報告では、州ごとの違いの原因についてはまだ分かっていない、とされている。
Trotz der Zunahme der vertraulichen Geburten in Bayern dürfte deren Anteil an den Geburten insgesamt im Freistaat weiterhin deutlich unter dem Durchschnitt der Bundesländer liegen. Eine Hochrechnung im Auftrag des Bundesfamilienministeriums hatte nämlich ergeben, dass der Anteil der vertraulichen Geburten im Zeitraum von 2014 bis 2016 im Freistaat bei 0,08 Promille lag – und damit nur etwa halb so groß war wie der Durchschnittswert der Bundesländer. Gründe dafür sind schwierig auszumachen: Im Bericht des Bundesfamilienministeriums heißt es, Ursachen für die regionalen Unterschiede ließen sich nicht erkennen.

***

PS

ヒルデ・フォルストさんは、この写真の後方真ん中の方です。

僕自身も、僕の教え子もお世話になっている方です。

また、拙書『名前のない母子をみつめて』の最後にも、彼女の文章が載っています。


【所感】

まだ、ドイツでも、赤ちゃんポスト・匿名出産・内密出産の議論は続いている。

バイエルン州は、僕の印象だとわりと裕福で昔ながらの家庭が多いイメージがあるので、バイエルンでの内密出産の少なさ(?)にはあまり驚かなかった。けれど、その豊かさや古さが、内密出産の少なさにつながっているのか、あるいはバイエルンでは内密出産の存在がまだまだ知られていないゆえの少なさなのかは分からない。

先週のシンポジウムでも、まだまだ「内密出産」の存在は全体に知られているわけではない、という話があった。

他方、日本では、「出産」以前に、「人工妊娠中絶」の数がまだまだ多く、その中で「産みたいけど堕ろすしかない」と、妊婦の気持ちや意思が尊重されないかたちでの中絶も決して少なくないはず。

根本的には、まだ日本では、匿名出産・内密出産の議論の前提さえ整っていない

戦後の国の政策から、「望まない妊娠をしたら、堕ろせばいい」という空気というか、先入観が、日本人全体に広がって、すっかり定着している。キリスト教の国ではない日本では、胎児を(親とは異なる)一つの人格として認めることがとても難しい。自分の(若い)娘が望まない妊娠をした時、妊婦となった娘の気持ちや意思をちゃんと聞いたうえで、どうするかを決めることのできる親はどれほどいることか。また、女性が産婦人科等を訪れた際に、ちゃんと妊婦の思いや気持ちを受け止め、その人の意志をちゃんと尊重できる医師や看護師はどれだけいるだろうか。多くの人が、妊婦の心の奥底にある思いや気持ちに寄り添うことなく、中絶を薦めている現状がこの国にはまだまだある。

これだけ、少子化が深刻な問題になっているのに、妊婦に寄り添おうという動きはまだまだ弱い。

バイエルンでは、少なくとも39人の赤ちゃんが内密出産で産まれている。上の記事では、ドイツ全土では少ないとされているが、39つの新たな命が(中絶されることなく)産まれたことは、とても喜ばしいことだと思う。

実親の下に戻る場合もあれば、養子縁組の手続きを通じて養父母の下に託される場合もあれば、場合によっては施設で生活することもあるだろう。いずれにしても、39人の赤ちゃんがこの世に生まれたのである。これは、単純に素晴らしいことだと思う。

最後にぼやきたい…。

この国は、いたるところで、恋愛をあおり、消費をあおり、性的な刺激を過剰に与えている。もちろん、この国には「ラブホテル」がいたるところに、過剰なほどにあって、性的な快楽を楽しむ<場>は山ほどある。

なのに、妊娠したら、それも望まない妊娠をしたら、「自己責任」にされ、とたんに女性だけが「悪者」になる。同情されることも少ない。まわりからは「中絶すればいい」という無責任で安易な助言をこれでもかというほどに受ける。親にまで、そう言われるほどだ。

年間18万件以上…。

いったい何人の胎児が、後の赤ちゃんが殺されているのだろう。それに対する嘆きの声はほとんど聞こえてこない。

海外では、もともと「人工妊娠中絶」のハードルが高くて、それゆえに「ウーマンリブ運動」の中で、「プロチョイス」が叫ばれ、妊娠中絶が可能となった歴史的な背景がある。

他方、日本では、戦後の国家政策として、人工妊娠中絶が大奨励されてきた歴史がある。その数、年間100万を超えていた。だから、ウーマンリブ運動あるなしにかかわらず、日本では、中絶は身近にあり、すぐにでき、そしてそれが当たり前のことだった。海外とは逆に、日本では、「プロチョイス」を叫ぶことなく、中絶がチョイスでき、逆に「プロライフ」はないがしろにされてきた。

否、ライフ=生命=いのちは、いつでもないがしろにされてきたのだ。

それでも、「こうのとりのゆりかご」設置以後、徐々に、社会の理解も深まってきたとも思う(まだまだだけど)。

多分、匿名出産も、内密出産も、日本人にはピンとこない話だと思う。(特に男たちには)

でも、こういう話さえできないとなれば、差し迫る「少子化」を食い止めることはできないだろう。

少子化を止められないとなれば、この国はホンキで沈没すると思う。(ないしは他国に吸収される)

妊婦、母親、そして胎児、赤ちゃんを大事にできない国で、誰が赤ちゃんを産もうとするだろうか。

また、、、

数字的には多くはないけれど、日々、いつでも「児童遺棄」「児童殺害」は起こっている。

先日も、大阪で31歳の女性が赤ちゃんを産み落して、放置して死なせたという事件が起こった。

 詳しくはこちら

200年以上前にゲーテが嘆いた嬰児殺しと母への罰の問題は今もなお何も変わっていない。

特にこの国では…

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