Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

推薦本『ラーメン道場やぶり』 江口寿史×徳丸真人

今年読んだラーメン関連の中で最も良質の本をご紹介。

『ラーメン道場やぶり』
江口寿史×徳丸真人(2008)集英社

ラーメンの本ってものすごく出版されている。
出版業界ってすごくたいへんで、本が売れない時代に苦しんでいる。

にもかかわらず、ラーメンの本は常に出ているし、
またムカツクが新書なんかでは、ラーメンという言葉を
売る手段に使っている本もチラホラある。
*ラーメンの話なんてほとんど出てないのに
タイトルにラーメンを使っている本とか・・・

今回紹介する『ラーメン道場やぶり』は、思いっきりラーメンシーンに
踏み込んだ優れた一冊となっていると思う。

ラーメン本のほとんどが「ラーメン情報」、「新店舗紹介」ばかりである。
数年も経ったら読まなくなるような本か、
どこかで別の誰かが言っているような情報を集めた本も
決して少なくない(中古になると恐ろしく価格が低い!)

あるいは、経済や歴史や文化といった視点から
ラーメンを題材にした一般書として「ラーメン」を語るか。

しかし江口さんと徳丸さんが目指したのは、
「正しいお店、正しいラーメンとは何か」ということの意味づけであった。

色んな論者がいるが、ここまでホンモノのラーメンにこだわった本は
あんまりないように思える。(フリークの視点でないところがポイント)

しかもここで「正しい」と言われているラーメン屋さんの多くは、
たしかに「正しいお店」と思わざるを得ないお店ばかり。
見た目や珍しさやインパクトではない「魅力」・・・

彼らの批判の矛先は、これまでのラーメン本やラーメン評論家である。

これまで数多出版されたラーメンガイドブックや雑誌のラーメン特集で「イマイチ」や「ダメ」と記されていたものがあっただろうか。そう、ほとんどないと思う。例外なくおすすめ店を褒めているものばかりであり、そこに批評の精神はない。しかし、この本では平気でいろんな有名ラーメン店にダメだしをしている。・・・(p.2)

本書は俗にいうラーメン評論家やラーメン王といった近年のラーメン業界に少なからず影響を与える方たちをも批判している。・・・何度も言って申し訳ないが、ともかく今のラーメンを取り巻く環境に対してどうにも違和感を覚えるし、とても居心地が悪いのだ」(p.4)


この最後の「ラーメンを取り巻く環境への違和感」や「居心地の悪さ」は
なんとなく分かる気がするのだ。

なんかラーメン業界が芸能界化してるっていうか。
出てきては消えていき・・・みたいな。

食べ物商売なのに、スターがいたり、
タレントっぽいのが出てきたりとか。
(職人なのか、経営者なのか分からない人間とか・・・)
真面目にお店を地道に続けている人が
(なんとなく)否定されてしまうような環境とか。

本の内容についてはあまり触れないでおくが、
改めて「正しいラーメンとは?」と考えるのも悪くないと思う。

江口さんや徳丸さんが薦めるラーメン屋が正しいかどうかは
ともかくとして、
「自分の感覚」で素直に評価することの大切さは学べると思う。

僕も含め、やっぱり食べ手の方ももっと自由になるべきだと思う。
情報収集に追われて、本来の食べる楽しみを見失ってはならない。

なんでもそうだけど、
BOOMって、一般人から生まれてくるものだけど、
人気が上がるにつれて、マスコミに権力が集中して、
最後にはマスコミが一般人に「トレンド」を押し付けるようになる。
本来一般人から発信されていたものが、マスコミによって発信されるようになる。
(かつてのヴィジュアル系ブームもしかり)

何が正しくて、何が間違っているのかは、
やはり自分自身で決めるものだと思う。
趣味というのは本来そういうものだったはずだ。

この本はそういう本来の姿勢というか態度というか、
そういう精神を思い出させてくれる優れた一冊だと読んで思った♪

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ラーメン・グルメのコラム」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事