Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

らんちばさんへの再々反論ーラーメン店で夏に食べるべきものは何か?

宿敵らんちばさんとの冷やし中華論争!

少し時間が経ってしまいましたが、決してさぼっていたわけではありません。

そうではなく、「冷やし中華」について考え、食べ歩き、熟考を重ねてきました。

考えれば考えるほど、冷やし中華の「功罪」は大きいなぁと思います。

6月24日にらんちばさんのブログで「Dr.kei氏に反論いたします その2」が公開されました。

なかなか鋭い反論で、最初これを読んだ時に、「むむむむ…」と唸ってしまいました。

さすがは千葉を誇るインテリジェントなラーメンブロガーらんちばさんであります…

しかし、これで泣き寝入りするわけにはいきません。

この反論その2に応じるかたちで、僕もらんちばさんに「再々反論」させていただくことにします。

以下の文章を読む前に、このらんちばさんの反論その2を是非お読みください。

そして、一緒に「冷やし中華」について考えていきましょう♪


*なお、この議論は、「特定のお店」には何も関係ありません。きっかけは某店の(素晴らしい)冷やし麺ではありましたが、前々から、この「冷やし中華」をめぐる理解の違いやわだかまりは薄々とあったのです。なので、どこかのお店の話としてではなく、あくまでも「冷やし中華」「冷やしラーメン」をめぐる闘争・論争と捉えていただければ幸いです)

*また、らんちばさんが「千葉冷やし中華TOP10」を(ご自身で選出し)公開していることはとても価値のあることだと思います。その理由は、たいして選びもせず、自動機械のようにTOP10やTOP20を並べたサイトがネット上で散乱しているからです。少し検索すると、「●●で食べるべき●●BEST10」みたいな記事(しかもほとんど取材もロクにしていないような記事ともいえない無責任な記事)が次々に出てきます。そのサイトに、僕やらんちばさんの記事や画像が勝手に使われていたりもします。そういう意味で、らんちばさんご自身が選び抜いたTOP10はとても貴重なものだと思っています。

*らんちばさんが「千葉冷やし中華TOP10」を出しているので、僕は「千葉冷やしラーメン&つけ麺コレクション10」を出すことにしました。まだ暫定的なものなので、今年はこれをどんどん洗練させていこうと思います。ただし、今回は、単純な「冷やし中華VS冷やしラーメン」という二項対立を否定する方向で論を進めていきます。


さて…。

僕の前回の「らんちばさんへの再反論」では、「冷やし中華の定義の曖昧さ」について切り込んでみました。そして、冷やし中華という概念がとても曖昧なもので、その境界線さえどこに引けばよいのか分からない、ということを指摘しました。

らんちばさんも冷やし中華の伝統的な定義を認めつつ、「地域や作り手によるバリエーションが豊富で、具は旬の物ならなんでも登場し得る。らんちばは、この「バリエーション豊富」というところに重点を置いているのです。と言いますか、置きたいのです」、と仰っています。

らんちばさんは、冷やし中華の多様性・多義性に目を向け、地域や作り手によって様々だということ、それから具はなんでも登場し得るということを指摘しておられます。

ここで、彼は「冷やし中華」の「場所」について語っています。

これを受けて、僕はふと疑問に思いました。「冷やし中華って、そもそもラーメン屋さんで食べるものなのか?」、と。らんちばさんは、ラーメンブロガーとして「冷やし中華」を語っておられます。また、夏に食べるラーメンのオルタナティブ(別の選択肢)として冷やし中華を挙げておられます。

しかし、そもそも、冷やし中華って、ラーメン店で食べるものでしたっけ? 

とある中華店のベテランのご主人にこのことを聴いてみました。すると、、、


冷やし中華は、もともと中華料理店で夏に出されるメニューだったと思う。暑い夏に、売り上げが下がるので、厨房にあるありあわせのものでささっと作っているのが、冷やし中華だよ。

考えてみりゃ、冷やし中華って、中華料理屋で出てくるものだろ? ゴマダレって、あれ、棒棒鶏のタレの作り方から来てるんだよ。酸っぱい醤油ダレだって、中華料理をやっている職人ならささっとできるもんだよ。


と答えてくれました。

この証言はかなり重要なことを指摘しているように思います。

らんちばさんも反論記事の中で、「龍亭@仙台」と「揚子江菜館@神田神保町」を出していますが、どちらも「ラーメン店」ではなく、「中華料理店」であります。

考えてみれば、冷やし中華を食べる場所は、決まって「中華料理屋さん」「中華飯店」「中華食堂」ではなかったでしょうか? それこそ、最近になって(千葉では、特にらんちばさんの影響もあってか)実力派のラーメン屋さんでの「冷やし中華」の提供も出てきていますが、そもそもラーメンブロガーやラーメンフリークが「夏のラーメンのオルタナティブ」として「冷やし中華」を煽り、扇動してもよいのでしょうか?

無論、らんちばさんもご指摘されているように、都内でも「NEO冷やし中華」(G系冷やし中華etc)とも言えるような新たな冷やし中華も誕生しています。それは認めたいと思います。

しかし、ラーメンフリークやラーメンブロガーなど世の中に情報を発信する人が、「夏だ!冷やし中華を食べよう!」と呼びかけることをそのまま認めてよいのでしょうか? ラーメン店に(クオリティーの高い)冷やし中華を求めることは、正当なことなのでしょうか? 

最初から、僕が違和感をもっていたのは、この点にあると思いました。


そもそも、ラーメン屋さんで、冷やし中華を食べるものなのか?、と。

らんちばさんは、「中華屋さんのオムライスフリーク」でもあるので、「そんなことにこだわなくてもいいんじゃない?」ってお思いになるかもしれません。

ですが、それでも、彼とて、ラーメン店にオムライスを作ってくれ!と要求することはないと思います。なぜか。ラーメンとオムライスは全くの別物だからです。

しかし、これが「冷やし中華」となると、ラーメン店側として無視できなくなるわけです。中華麺を使った麺料理である以上、(重い腰をあげて)「うちでもやるか」という風になってしまいがちなんです。

でも、ちょっと待ってください。

ラーメン店で生まれ、暑い夏のために先人たちが生み出した夏の定番メニューがあるではないですか! 

そうです。つけ麺です!

(「え? つけ麺かよっ!」って言わないでくださいね…苦笑)

思い返すと、つけ麺って、そもそも、酸っぱくないですか? つけ麺の産みの親としても知られる故山岸さんは、暑い夏場に気持ちよくラーメンを食べてもらおうとと、酸味と辛味と甘みの効いた「もりそば」を生み出しました。

僕の愛する海空土(写真↓)のつけ麺には「りんご酢」と「すだち」が使われています。酸味と魚介の旨みと脂の甘みが心地よく口の中を刺激してくれます。まさに夏のためのラーメン=つけ麺であります。

麺はキンキンに冷たくて、スープはアツアツ。この不思議な組み合わせもまた、「暑い夏にラーメンを食べてもらおう」というラーメン店のお気持ちから生まれたものだったのではないでしょうか!?

場所(店舗の広さ)も限られ、使う食材も(大量に仕入れるため)制限しなければ「収益」がでないのがラーメン店です。中華料理屋さんのように豊富な食材を常に仕入れているわけではありません。「薄利多売」の商売であり、数を稼がなければ、儲けになりません。

そんな厳しく制限された状況で、「夏に美味しくラーメンを食べてもらうために」と生み出された「つけ麺」をすっ飛ばして、「夏だ!ラーメン屋で冷やし中華を食べよう!」と呼びかけるのは、あまりにも酷ではないでしょうか?

むしろ、夏に食べたくなる「つけ麺」を応援することこそ、ラーメンブロガー(あるいは情報発信者)には必要なことではないでしょうか? また、「夏のつけ麺」を盛り上げることで、もっと進化した「つけ麺」に出会える可能性だって広がっていきます。

その延長線上にあるのが、「冷やしラーメン」だと捉えることもできるかと思います。

中華料理文化(+技法)の中から(夏の非常食として)生まれてきた冷やし中華をラーメン屋さんに求めるのではなく、(中華料理と日本蕎麦が融合して生まれた)ラーメン文化の中から生まれてきた「つけ麺」や「冷やしラーメン」こそ、ラーメン屋さんに求めるべきではないでしょうか?

そう、冷やし中華は「中華料理文化」から生まれてきたものであり、つけ麺は「ラーメン文化」の中で生まれてきたものなのです! (*冷やしラーメンは、ラーメンと蕎麦の(夏向けの)融合系麺料理であり、ラーメン店でも蕎麦店でもOKかと思われます。また、現在では主に「ラーメン専門店」で冷やしラーメンが提供されており、ラーメン文化に属するものとして考えてよいと思います)


らんちばさんは、先の反論で、次のように書いておられます。

らんちばは、冷やし中華の歴史や定義を尊重しない訳ではないが、新たな概念形成が必要な時期にきている、と思っています。古い定義が現実と合わなくなってきているのならば、冷やし中華の捉え方を見直していく作業が必要だと思うのです。らんちばがフィールドワークをしながら、「千葉の冷やし中華TOP◯◯」を選んでいるのも、そう言うことなんです。実際に食べ歩いてみて、着実に新しい冷やし中華の波が来ている。そのことを実感しているからなのです。冷やし中華の新たな概念、定義を求めていくことが必要な時期に来ていると考えています

確かに、「新しい冷やし中華の波」はやって来ているのかもしれません。

けれど、ラーメン全体を考えると、それほど大きな波になっているとも思いません。(ラーメン評論家のように、次のブランドを予測したいとお思いなのでしょうか?)

むしろ、「冷やし中華」という枠組みの中で、「冷たい麺料理」をくくってしまうことで、その本質を見失うのではないか、と思うのです。

この論争のきっかけになった「冷やしちゅら麺」は、「沖縄料理文化」から生まれた冷たい麺料理です。冷やし中華の要素がないとはいいません。けれど、冷やしラーメンの要素もあり、また沖縄伝統の調理スタイルも踏襲しています。これを、「新しい冷やし中華だ!」と名づけることには、やはり問題があるのではないでしょうか?

言いたいことは、「文化的な文脈を無視して、類似する料理を(冷やし中華に)カテゴライズするのは極力控えるべきではないか?」ということです。

ある店主さんはこう言っていました。「中華料理屋の人間が、冷たい麺料理を作れば、それが冷やし中華ですよ」、と。冷やし中華は、中華料理店の文化に属するものであり、中華料理の一つ、しかも売り上げの落ちる夏場の切り札なのです。

同様に、ラーメン店の夏場の切り札はそれこそ「つけ麺」であって、スープづくりに尽力するラーメン店にとっては、つけ麺こそが(そして冷やしラーメンこそが)、最もうってつけの「切り札」なのではないでしょうか?

らんちばさんは、冷やし中華を「不遇の食べ物」と呼び、「地位を向上させたい」と仰っています。けれど、その冷やし中華のおかげで、今、一番不遇の扱いを受けているのが、「つけ麺」ではないでしょうか?

ラーメンよりは熱くない食べ物ですが、冷やし中華には「冷たさ」では敵いません。冷やし中華は、それがどんな味であろうと、夏場には一定数の売り上げがしっかり確保できるとも聞きます。取り立てて味に興味のない人であれば、何も考えずに、「あ、冷やし中華があるんだ。じゃ、冷やし中華でっ!」って言っています。

ラーメン屋さんも、新たな冷やし中華の波に安易に乗らないで、つけ麺や冷やしラーメンといった「ラーメン文化圏発」の麺料理をもっともっと探求してほしいと思います。冷やし中華は出所が違うんです。

思い出すのは、麺処まるわ店主の石井さんと二人で「新たな冷たいたんたん辛つけ麺を考えよう」と、勝浦をまわった時のことです。ラーメン文化の只中でラーメン作りを学んだ石井さんと、ラーメンを死ぬほど愛するフリークの僕。夏に食べたくなるつけ麺を二人で必死に考えたものです(とはいえ、作ったのは石井さんですけど…)。

これこそが、「ラーメン店で食べる夏の冷やし麺」ではないでしょうか?!

最後に、らんちばさんから頂いた問いに答えたいと思います。

今回kei氏に問いたいのは、では冷やしラーメンとは、一体なんなんですか?と言うことです。冷やしラーメンという言葉はかなり広域に渡る上位概念のように思います。一方で山形の冷やしラーメンという、定義のしっかりしたものがあります。その点をどうお考えになって、あの素晴らしい一杯を冷やしラーメンだと呼ぶのか?もう少しDr.kei氏の捉えている冷やしラーメンというものの説明をお願いしたいです。

冷やしラーメンは、「つけ麺」に続く、ラーメン文化の中で育ってきた「新たな夏のオルタナティブ」だ、と申し上げたいと思います。

もともと山形エリアでは食べられていたものですが、「ラーメン業界全体」においては、この10年くらいで広まってきた新たな選択肢だと僕は思います。

故に、まだまだ発展途上の食べ物であり、今後、ラーメン店主さんたちが「夏場の切り札」として創意工夫できる新たなチャレンジメニューであると思います。

その伸びしろは、冷やし中華よりもはるかにあると僕は思います。

逆に、問いたいです。人気「ラーメン」ブロガーであるらんちばさんは、そこまで冷やし中華にこだわるのか?、と。ラーメン店で、ラーメンやつけ麺(あるいは冷やしラーメン)でなく、なぜ冷やし中華なのか?、と。(「冷やし中華が好きだから」以外にその理由はあるのでしょうか?、と)

ラーメン店主さんのお気持ちも是非お聴きしたいところです。ラーメン店主さんは、冷やし中華を作りたいと思うのでしょうか。冷やし中華は手間暇がかかります(そのわりに味の可能性はそれほどでもありません)。ラーメンでは普段使わない食材を多く使います。厨房のスペースも限られている中で、それほど情熱をかけて作りたいものなのでしょうか? 作るべきものなのでしょうか?

そうであれば、僕は何も言えません。が、ラーメンが好きでラーメン店を始めたはずです。ラーメンの道を極めんとしている店主さんは、冷やし中華に力を注ぐのと、つけ麺や冷やしラーメンに力を注ぐのとでは、どちらがよいと考えるのでしょうか? プライオリティー(優先順位)の問題として。

ラーメン店のラーメン職人であれば、やはり、ラーメン、つけ麺、冷やしつけ麺、冷やしラーメンを追求したいと思うのではないでしょうか?

と同時に、ラーメンフリークやラーメンブロガーなら、まずは、ラーメン、つけ麺、冷やしつけ麺、冷やしラーメンを追い求めるべきではないでしょうか? なぜかって。それは「ラーメンフリーク」であり「ラーメンブロガー」なのですから。

以上であります。

らんちばさんの更なる反論を待ちたいと思います💛

愛を込めて💛💛💛

コメント一覧

通りすがり
今回も読みやすくて肩が凝らなくて良いですね

でも、ざるラーメンが語られてないのが悲しいw
蕎麦屋のラーメンと言うポジ程度で終わっちゃいそうだけど・・・

読んでると思想や概念の押し付けられて食べるものでもなく自由な冷やし中華という名前の料理でいいんじゃないかな?となってきます
実際、よく知られている冷やし中華は店舗毎にスープも自前で作らず業務スープの跋扈する現状
基本は盛りつけ姿が主
味を差し置いて形だけの料理が一般的な冷やし中華の姿でしょう
文中の中華料理店主の話もそんな感じに語っていると思います

・世間一般的な冷やし中華と言う料理
・冷やし中華系(竹岡式ラーメンと竹岡系ラーメンの区分なようなもの、自由なインスパイア)

これを区分すれば話はわかりやすいんじゃ無いですかね
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